書名
オーガの拳を避け後ろに下がる。
「ファイヤボール!」
炎を飛ばして攻撃するもまるで効いていない。オーガは再び拳を振り下ろす。拳は燃えているログハウスに当たりログハウスを壊した。
「オーガの動きは遅い!遠距離から魔法で攻撃しろ!」
「でも効いてねぇぞ!」
「だがいつかは倒せる!」
フォンの指示に従い兵士は離れたところから魔法を撃つ。オーガは兵士のほうへ走り出した。兵士はバラバラになって逃げる。
「土屋!僕の後ろにいろ!」
「うっうん!」
土屋を僕の後ろに隠し暴れるオーガのほうを見る。オーガは兵士を追いかけまわし攻撃を加えている。
「どうする…僕のレベルじゃ普通に戦ってもかないそうにない…」
兵士を無駄遣いするだけだ。だが弱点が分からない以上一撃で倒すことは…
「…やるしかないか」
できるかどうかは分からない。だが魔法に原理があるというのならできてもおかしくはない。
「やってやる!」
ウィンドコントロールを使って風の弾を作り発射せず止める。そしてもう一つ圧縮魔法クラッシュを使って風の弾を圧縮した。圧縮された風の弾は大きな針のように両端が尖る。
「全員こっちに走ってこい!」
「全員トーギのいる場所まで走れ!」
兵士が全員こちらに向かって走ってくる。オーガも兵士を目で追ってこちらを向いた。
「ウィンドスピア!」
ウィンドスピアはオーガの額に当たりオーガは大きくのけ反り倒れた。消えてはいないものの瀕死ではあるだろう。
「できた…」
二つの魔法を同時に行使することは可能だった。後は魔導書を当てれば終わりだろう。
「待って!まだ動くよ!」
「何…?」
土屋の声に反応してオーガを見るとオーガは立ち上がった。
冗談だろ?まだ動けるのかよ。
『ヴォオオオオオオオオオオオ!!』
「なっ!?」
「きゃぁぁ!!」
オーガが大声を叫ぶ。いやこれは大声なんてものじゃない。声の威力で周りの木々が強烈な風を受けたようにのけ反り、倒れているものもある。
「魔法使うのかよ!」
「使うさ!ゴブリンだって使ったろ!」
そうだった。目には見えていなかったもののゴブリンはオーバーパワーを使っていたんだ。
「まぁいい!次で決めてやる!」
オーバーパワーで身体強化して大音声の中で踏みとどまりウィンドコントロールとクラッシュを―
「なっ!?」
突然足の力が抜け後ろに倒れかける。
「限界か…」
無茶しすぎた。だが魔法は消えてないしまだ使える。倒れるならあのうるさいやつを倒した後だ。
だが足に力が入らず魔法発動に集中できない。どうする…?
「燈義くん!踏ん張って!」
後ろで土屋が僕を支えてくれた。
よし、今ならいける!
「うるさいよ!」
ウィンドスピアを手で握って投げた。オーバーパワーで強化された力が威力にプラスされさらに強くなったウィンドスピアがオーガののどに刺さった。オーガは喉を抑えて苦しみ前のめりに倒れる。
「終わりだクソ野郎」
今度こそ瀕死のオーガに魔導書をぶつけた。オーガは光となって消え残ったのは戦いの後と五百ルークのみ。
「終わった…」
「死ぬかと思ったよ~」
右におなじだ。今回は初めて会った蛇の時より不味かった。
『魔導書の頁が一杯になりました。書名を決めてください』
突然頭の中に機械的な女の人の声が流れた。
魔導書が一杯に…あぁ、そうか。オーガを記載するのにかなり頁を使ったらしい。
「それじゃ、命名するか」
僕の一番最初の魔導書で初期魔法しか入っていない初歩の初歩。
「初心の書、だ」
ピロンッと頭の中で響き、魔導書に書名が記入された。
ここに『初心の書』が完成した。
初めての書名です。