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魔導書製造者  作者: 樹
エルフの戦争
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野望

 ギルデ=ハイルスは集落最強を自負している。だからこそトーレイの存在が気に入らなかった。剣の腕が立ち、顔もよく、ネイスとかいうガキを両親の代わりに育てるという献身さに集落の奴らは感心していたものだ。

 だからギルデはトーレイを失脚を望んでいた。そんな時、思いもしなかった幸運が迷い込んできた。

 使うのはあの人間二人。もしあの人間たちが不始末を起こせばそいつらを保護することを決定したトーレイは失脚、もしかしたら投獄できるかもしれない。


「くくっ…」


 笑いが止まらない。ギルデは王女がいるログハウスの裏にいた。

 例えば人間が王女を暗殺したのならどうだろう?


「恨みはありませんが…俺たちのために死んでくださいよぉ…」


 ログハウスの入口は一つしかなく魔法でおさえてある。兵士と人間は森に向かわせ、兵士への根回しも済んでいる。後は火をつけて焼き死ぬのを待つだけだ。


「さぁ、死ね…!」


 ログハウスに火をつけた。火はどんどんログハウスを飲み込んでいく。さて、後はここから離れて―


「バーカ」


 ゴッと背中に衝撃。ギルデは吹っ飛び何が起きたかわからないというように起き上がり背後を見る。


「消火を急げ!」


 そこには消火の指示を出す王女と、


「思った通りだ」


 冷たい目でギルデを見下ろす男とその後ろで睨んでいる女がいる。


「な、なんで…」

「答える義理はない」


 男、浅守燈義は魔導書で魔法を発動させギルデはさらに吹っ飛んだ。



 ギルデに言われて僕たちは森の中にいる。暗雲が立ち込めていたそうだ。


「でも、暗雲なんてあるのかな」

「ないだろ」


 そんなものがあったら他の兵士も気づいているものだ。だが見たのはギルデとかいうおっさんだけ。ならおそらく嘘だ。


「じゃ、なんでギルデさんは嘘をついたの?」

「裏切りだ」

「裏切りってむぐっ」

「声がでかい」


 土屋の口を押えて先に歩いている五人の兵士を見る。兵士の顔は緊張で堅く、気づいてはいないようだ。まぁ緊張だけで堅くなっているとは限らないが。


「仕掛けてみるか」


 前にいる兵士の一人に近づき呟く。


「フォンは別ルートから森に入ったらしいな」

「!?そうなのか!?」

「あぁ、早く連れ戻さなくちゃな」


 王女様が勝手な行動したのなら一刻も早く連れ戻さなければいけない。


「一旦集落に戻らなければいけないな」

「そっそうだが…」

「どうした?戻らないのか?」


 五人の兵士はお互いに顔を見合わせる。何かあるのは本当みたいだな。


「土屋、移動するぞ」

「うん!」


 魔導書を広げ移動魔法を発動する。驚く兵士の表情が見えた。



 中継地の入り口に戻りフォンのいるログハウスを訪ねる。どうやらまだ何も起きていないらしい。


「フォン、いるか?」

『いる。どうだった?』

「面倒なことになった出てきてくれ」


 フォンはすぐに出てきた。事情を話しログハウスから少し離れたところで見ているとギルデがログハウスの扉に魔法をかけ火をつけるのが見えた。


「さぁ、死ね…!」


 よし、爆弾ゲット。それじゃ登場しようか。


「バーカ」


 ウィンドコントロールを発動させる。発射された風の弾は見事ギルデに当たりギルデは吹っ飛んだ。


「消火を急げ!」


 フォンが集まってきた兵士に指示を出す。僕はギルデに風の弾をぶつけて近づく。


「無様だな。最強」

「ぐっ…!人間風情が!」

「その人間風情にやられているお前はなんなんだろうな」


 ウィンドコントロールでギルデを縛る。さて、裁きはフォンに任せて―

 僕が後ろを向いたとき、ゾクリと、殺気を感じた。振り返ると地面から生えた剣がギルデを貫いていた。ギルデは喉を貫かれ叫びをあげることなく消えた。


「誰だ!」


 ギルデが転がっていた場所から少し離れた場所に黒いローブがいた。しかしそいつはすぐに消えてしまう。


「土屋!」

「…へっ?」


 土屋はギルデが死んだことに驚いて呆然としている。


「しっかりしろ!」

「うっ、うん…」


 まだ少し朦朧としたままだ。仕方がない!


「しっかりしろよ!」


 パン!と土屋の頬を平手打ちする。土屋は頬を右手で頬を抑えて僕を見る。


「解析だ!ボーっとしてたら死ぬぞ!」

「あっ…うっうん!」


 土屋が解析を始める。しかしいつの間に現れた!?全く気が付かなかったぞ!


「燈義くん!なんかおっきいのが来るよ!」

「おっきいの?」


 土屋が指さす方向は柵があり、森がある。そして森から木々をなぎ倒す音が聞こえた。

 来る。でかいのが来る!


「オォォォォォ!」

「デカッ!?」


 ゴブリンを五倍ぐらい、つまり僕の背丈よりもずっと大きなゴブリンが柵を破壊して侵入してきた。


「オーガだと!?なぜこんな場所に!?」


 フォンが驚きの声を上げる。


「なんでいるかはどうでもいい!転送は!?」

「まだ無理だ!」


 つまり、やるしかないわけだ。


「土屋」

「うん…」

「やるぞ!」

「…うん!」


 オーガは僕を見据えて拳を振り上げた。

 

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