推論
床下に入った次の日の昼、公民館に集まり第二回対策会議が開かれた。
「証拠は見つかった?」
「あぁ。当事者たちの日記を見つけたよ」
フォンに五冊の日記を渡す。フォンは日記を開き目を通す。
「悪神の出現は五年前に分かっていた。しかしそれは隠蔽された。他の種族が攻め込んだことも魔獣が攻め込んだという事実もないので隠蔽したのはエルフの犯行ということになります」
「そう考えるのが妥当だな」
トーレイの言葉に周りのエルフも日記を見て唸る。これ以上ない物的証拠になにも言えないようだ。
「調査してもいいが、ゆっくりやっていては時間がないな」
「追憶水晶は使えないのか?」
「物体が小さすぎる。追憶水晶はある程度の大きさがないと効果を発動させないのだ」
「じゃぁあの部屋ならできるか?」
「あの部屋というのは分からないが、日光は当たっているか?」
「当たってない」
「なら無理だ。追憶水晶は太陽神様の道具の一つ。日光が当たっていない限り使えない」
万能ではないんだな。あの時は月明かりが太陽の光を反射しているから使えただけか。
「なんにせよこの日記に書いてある管理室というものを見つけなければいけないな。だが日食は二週間後…ゆっくりしてはいられない…」
「でも手がかりが何もない」
最大の問題はそこだ。クーデターを起こすというのも推論でしかない。今分かっている事実は五年前に悪神問題が隠蔽されたということだけだ。
「しかし、この暗号は何なのだろうな」
「それを解読するのが一番の早道だろうがな」
「分かっているさ。とりあえずは情報が集まったんだ。王都に持っていって詳しく調べるとするか」
「…そうだな」
王都か。隠蔽した奴が居るとすればそこだがわざわざ飛び込むのもどうかと思うなんてこと言ってられない。日記の内容は全部覚えたから問題ない。虎穴に入らなければ虎児を得られないのだ。
「では王都で再審議ということでいいな?」
反対する者は誰もいなかった。
会議が終わりネイスの家に戻った。
会議で王都に行くメンバーまで決まった。この集落からは会議の参加者とトーレイの推薦もあり例外で僕と土屋が行くことになった。トーレイはもう少しこの集落で情報収集していくそうだ。ネイスの傍にいたいだけだろうが確かにトーレイが真実を知っていることを犯人にでも知られたらネイスも危ないので妥当な判断だ。
「王都に行くぞ」
「やっぱり急だね…いいの?人間の私たちが行っても」
「フォンの決定だ。誰も文句言わないさ」
「そういえば結局王女様に会えなかったんだよね。挨拶しておかないと」
「なんでもいいけど準備しておけよ」
土屋に伝えて自分の部屋に入る。準備と言ってもネイスと話すくらいのものだろう。
「王都…また肩身が狭くなりそうだ。この集落とも違うだろうし」
プライドの高い奴らがいそうだなぁ。教会っていうのも気になるし。
「ま、なるようになるか」
さて、どうやって爆弾を手に入れようか。
次回から王都です。勇者四人のほうも書きました。どうぞよろしくです。