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魔導書製造者  作者: 樹
希望の世界
206/258

終幕

エピローグも投稿しています。

 剣と剣がぶつかり合う音を聞きつつ僕と創造主も魔法をぶつけ合う。周りはもうクレーターだらけで無事なのは僕たちの周り十メートルくらいだ。


「さすが、だな。悪神まで味方につけた時には驚いたがまさかそこまで使いこなすとは」

「お前こそさすがだ……なんでこんだけやって全然効いてないんだよ」

「単に実力の差だな」

「身もふたもないな…だが、こっちには仲間がいるんだ」


 フェルが創造主の右側からスキルで攻撃する。しかし創造主はそれをものともせず魔法でかき消した。その衝撃でフェルは少し吹っ飛んだが空中で一回転して体勢をなおして着地する。

 フェルが本気で撃ったスキルって最大級魔法くらいの威力があるよな…それをかき消すって一体どういう魔法使ってんだよおかしいだろ。


「分かってたが、一筋縄じゃいかないな」

「逆に一筋縄でいかれたら拍子抜けだろう?」

「燈義くん真正面から来るよ!」


 美月の忠告通り真正面から攻撃が来た。僕はそれを弾くとラストインフェルノを撃つ。創造主はさすがに焦ったのか同じラストインフェルノで相殺した。しかしそれによって発生した土煙で視界がおおわれる。創造主は追撃を警戒して動いたようだ。


「右四十五度距離二十メートル!」

「了解しました」


 こちらには美月がいるいくら前が見えなかろうが場所が分かる。だがそれを創造主が忘れるはずがない。だからフェルに攻撃をさせた。

 フェルのスキルで土煙が霧散した。そして露わになった創造主は僕を見て驚愕を浮かべる。


 僕はラストインフェルノを発動していたから。


「こんな短時間で最上級魔法が撃てるはずが…!」

「当たり前だ。出来ないさそんなこと」


 そんなに器用じゃない。ただ一撃目を出したときに二つ出していてルーズマジックでそれを撃たないままキープしていただけのことだ。フェルに気を取られてこっちに全く防御をしていなかったからかなりのダメージをくらったはずだが…


「甘い…!」


 僕の腹に鋭い痛みが走った。見てみるとウィンドスピアが刺さっている。


「僕が言えたことじゃないが油断大敵だ。今ので死んだとでも思ったか…?」

「何で動けんだよおかしいだろ…」

「魔力で体を動かしているだけだ……クソ、本気で痛い…!」


 創造主は痛みで顔をしかめるもののしっかりとそこに立っていた。

 痛みはすぐ和らぐが出血がヤバいな…そう長く戦っていられないのは分かってたがさらに時間を短くしないと意識が…あいつを倒した後にもやることが残ってるっていうのに…!


「…燈義くん、まだ立てる?」

「当たり前だ…だがあいつを倒せるかどうかは…」

「大丈夫。私が教えるから」

「教えるってお前…」


 美月の自信に満ちた声に疑問を持ち美月を見ると真剣に僕を見ていた。初めてじゃないかこいつのこんな顔。いつもは心配して泣いてたりするのに。

 いや、それもかなり前の話か。


「分かった。任せたぞ」

「うん。フェルちゃんもいいね?」

「異論はありません。最善を尽くします」


 美月は創造主をみる。


「ウィンドストライクが三本くるよ!真正面と左右それぞれ斜め上五十度から!」


 フェルがすぐさま展開されたばかりのウィンドストライクを消した。

 こいつは…!


「成程…ラプラスの魔、か」


 その場にある情報を最大限読み取りそこから得られた知識を基に考え抜いた予測はは未来予知のように正確だ。

 美月は、今まさにそれをやっているのだ。この場の情報を統合し考え抜いて創造主が次に出す手を予測している。


「私はずっと見てきたんだ…燈義くんの行動ならだいたい分かる…!」

「…前の世界でもその領域まで達せられれば良かったんだがな…」


 創造主は悲しそうに呟いた。


「燈義くん。フェルちゃん。一撃で決着をつけるよ」

「あぁ、分かった」

「了解です」


 美月の指示を受けフェルが突っ込んだ。


「右斜め三十二度と真下から攻撃!」

「ちっ!」


 魔法の中止はできないことはないが意識を集中しなければいけないのでこの戦いでは命取りだ。

 美月の言う通り地面が盛り上がって針のようになったがフェルはその前に地面を破壊して出現した針の上に乗ってもう一つの攻撃を躱した。


「望破帝:究獄…!」


 創造主の上から最大限の破壊の力が降り注ぐ。それを受け止めるのを見て僕は突っ込んだ。

 しかし創造主はこちらをちらりと見て笑った。そして片手をこちらに向けてウィンドストライクを飛ばした。

 それは創造主の狙った通りに当たった。


 僕の姿をした美月に。


「な…!」


 美月には初心の書を渡してある。あまりに使わなかったので注意していなかったのかもしれないが、確かに魔法が使えるのだ。

 そして僕は、創造主の背後から攻撃を浴びせる。


「百連掌…!」


 僕が一年前に勇也に浴びせた魔法を食らわせる。フェルの攻撃に対する防御を緩めることも、また一度向いた意識を美月から僕に帰ることもできない創造主は百連掌をくらい吹っ飛んだ。


「……やるなぁ…おい…」

「まぁ、な。この後のことを考えるとこの魔法が一番なんだ」

「あぁ、深海の書な……」


 存在回帰、それが深海の書のスキル。簡単に言えば生まれ変わらせるのだ。


「あの穴を通って日本で生まれ変われってか……考えたもんだな」

「まぁな…行くぞ」

「…その前にこれを…」


 創造主が渡したのは一本の苗木だった。


「ユドグラシルの苗木だ…お前ひとり分の願いくらいは叶えられるだろ」

「…分かった。使わせてもらう」


 僕は苗木を受け取り、深海の書を発動した。


「案内はこいつに任せるぞ」

「案内……?」


 創造主が疑問の声を上げる。案内の意味が分からないのだろう。

 しかしすぐに目を見開き驚愕をあらわにする。


「燈義くん…」

「美月……そうか、お前も…」


 美月の中に入っていた改変前の美月だ。美月は僕たちのほうを見てにっこりと笑った。


「ありがとう。お幸せに」

「あぁ、お前らもな」


 僕は手を振り、美月は涙を流し、フェルは満足そうに笑って二人を見送った。

 そして創造主と土屋美月は世界から消えた。

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