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魔導書製造者  作者: 樹
希望の世界
204/258

休暇

 ロキを倒した日の夜。生き残った兵士たちは僕たちを含めて全員動けなかった。限界を超えた戦いに僕たちはぶっ倒れ、保護されてからもベッドの上から動けなかった。

 生き残ったのは全体の三割ほどで、戦場は血に濡れた武具と防具であふれかえり血で泥沼のようになった場所もあればもう血が渇いて地面にこべりついてしまった場所もある。


 勿論生き残った兵士たちは喜んだ。ケガが癒えたら祭りのようにバカ騒ぎをするのだろう。正直、楽しみである。


「あー…全身が痛い…」

「よく五体満足だったよな俺達…」

「四肢がもげてもおかしくなかったからな…」

「いえ、むしろ死んでもおかしくなかったかと…」


 全員がそれぞれ戦いの感想をベッドの上でいう。全く動かない体は当然だが不便で、食事をするのも一苦労だった。


「でも、これで安心してあいつらに望めるな」

「あぁ…そうだね」

「あの話、本当なのよね」

「本当だよ」

「勇也がいうなら信じるわ」


 あの後岡浦と光海に改変まえのこと、百年前の戦争の真実を教えた。最初は信じようとしなかったものの勇也の説得により二人ともとりあえずは信じてくれたようだ。


 そう。この後にはあいつらとの、創造主と勇者との戦いが待っている。


「まぁ、今は休もう」

「そうだな…」


 この状態で挑んでも一秒もたたずに負けてしまいそうだ。

 僕たちはおとなしく治療に専念した。



 二日後、なんとか体が動かせるようになり僕はリハビリもかねてルグルスの様子と世界終末時計の様子を見に行くことにした。まずは僕たちと勇也たちの二手に分かれてルグルスの様子を見て回った。

 ルグルスはアペピの時と同じくらい街が壊れていて、復興するのはかなり大変だろうと容易に想像できた。もう治すために動いている兵士や街に戻ってきた大工などがちらほらいる。しかし大半の兵士たちはまだ動けないようだ。


「大変だったね…」

「まぁな。でもホーメウスとかスレイクとかが難民受け入れしてるし、当面は食料と簡易住宅のほうが問題だな」

「それと人間と他種族の間にある意識改革も必要です。人間は他種族に対して警戒しすぎていますから」

「ぼこぼこにしたからな」


 何かとスレイクは他種族間の陰謀の舞台になっている。

 まぁ僕たちもその陰謀に巻き込まれてスレイクを舞台に一等地を焼いたりしたんだけど。後は戦争でぼこぼこにしたり勝手に王位を継いだり反乱分子を粛清したり。


「…スレイクって基本僕たちにやられてるよな」

「そういえばそうだね…」

「仕方がないことかと」


 フェルが淡泊にそういった。こいつ人間に恨みでもあるのか。


「さて、そろそろ合流して世界終末時計を見に行くか」

「そうだね」



 勇也たちと合流し世界終末時計の様子を見に行くためにスレイクに向かった。監視役のルーとともに。


「終末時計…どうなってるかな」

「五十九分くらいもどってるんじゃない?」

「壊れてるかもな」


 そんな会話をしながら世界終末時計を確認する。


 壊れていた。


 秒針も短針も長針もなく、ただの壊れた時計だった。


「世界の終りは回避されたってことでいいのかな」

「いいんじゃないか?役割を終えたんだろ」

「そうか…」


 勇也は時計を拾って砂を払った。


「どうするんだそれ」

「王様のお墓に備えようかと。戦勝報告としてね」

「じゃ、墓に向かうか」


 王の墓は城の内部の王族限定の墓地にある。綺麗な廊下を抜けると黄金に輝く墓の中にぽつんと花も供えられていない墓があった。

 あの王の墓だ。金でできているものの他の墓よりは小さく、あの王がどれだけ孤独で戦ってきたのかを物語っている。


「…勝ちましたよ」


 勇也が終末時計を墓の前において手を合わせた。僕たちも続いて手を合わせる。

 気のせいか、王の笑い声が聞こえた気がした。


 王宮に戻ると大臣たちが渋々ながらもお辞儀をした。勇也は王の座っていた椅子に座り大臣たちを見る。


「…俺が、この国の王だ」


 独り言のように、勇也は宣言した。



 王宮から燈義たちが出て行った。椅子の座り心地はとてもよく、ここで寝られそうだった。


「勇也が王様ですか…立場上ではタマモさんたちと同じですね」

「政治とかできる?ディスベルに聞こうか?」

「というか勇也、後宮とか作ったら怒るわよ。本気で」


 それぞれ俺に声をかけてくれる。

 王。全く実感はないけれどなってしまった。百年前の勇者によれば王様は賢王とよばれるほど素晴らしい王だったらしい。

 その王が愚王を演じるのがどれだけ辛いのか想像できない。

 まぁ、まずは不満だらけの城内から変えていかないと…ディスベルさんに助言してもらおう。


「それで、これからどうする?」

「取りあえず上に潜んでるやつら倒して情報吐かせる?」

「そうだね。まだ残ってる反乱分子から潰していこうか。あと法律を変えたりとか貴族の扱いの調整とか…色々やることがあるなぁ」

「勇也…いつの間にか敵の容赦なくなってます…」

「ま、あんな戦いを経験したらそうよね」


 恵梨香さんが俺を見て驚き、美鈴がため息をついていた。



 そして、一週間後。運命の日がやってきた。


「全員、準備はできたか」


 僕の質問に全員が頷いた。体は完全回復し、体調も万全。これなら文句なしに全力を出せる。


「よく来たな勇者。とか言う必要ないな。久しぶりだなお前ら。たくましくなってなによりだよ」

「これなら俺たちといい勝負できそうだ」


 目の前の創造主と勇者は笑った。


 最終決戦の舞台は、スレイク王国の近くにある草原だ。周りに何もなく戦闘に適している。


「それじゃぁ始めるぞ」

「あぁ、始めよう」


 創造主と僕が戦闘の開始を宣言し、世界最後の戦闘が始まった。

というわけで最終決戦です。あと二話か三話で終わるつもりです。最後までお付き合いください。

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