対策
集落の中にある二番目にでかい建物。公民館であるその場所で悪神問題対策会議~王女参加ver~が始まった。参加者はフォンとトーレイと僕。そして集落の実力者たち。
「さて悪神についてだが、分かっていることは少ない。過去の文献をあさっても防御に徹して王都のほぼ全てを破壊され去っていたというものばかり」
「つまり防御に徹しても損害は避けられないと?」
「魔法技術が進歩しているといはいえ神に届く域ではない。最悪王都を放棄するという手もある」
「王都を放棄ですか!?そんなこと!」
「しないほうがいいな」
僕の発言に目線が集まる。中には敵意のある目線を向けてくる輩もいるが気にしてはいけない。ここは強気でいかなければ。
「王都を放棄すれば嘲笑われて反乱起こされるだけだ。そうしたら打ち首のお手軽冥府行きツアー強制参加だぞ?」
「王女様に向かって失礼だぞ!」
一人の男が机をたたきつつ立ち上がる。
「うっせぇよネガティブバカ。情報を合わせないことにはどうすることもできねぇからこの会議を開いたんだろ。未来を決めるのはまだ早い」
「…確かにその通りだ。悲観的になるのはよそう」
「王女様がそうおっしゃるのなら……」
渋々ながらも男は座る。だがいまだに僕を睨んでいる。
「しかし情報を合わせるといっても情報が少なすぎる。トーギは何か知っているのか?」
「知っているがその前に質問だ。王都は太陽神によって守られてるって聞いたが太陽神自体が守っているわけではないんだろ?」
「太陽神様から与えられた装置で結界を作っている。王都の近くには天碌山という強力なモンスターが棲んでいる山があるのでな。モンスターの襲撃を阻止してもらっているのだ」
装置か……結界を発動させられる装置があるのか。だとしたらクーデターを起こすのはそこらへんだろう。
「その装置ってのはフォンが動かしているのか?」
「王女様を呼び捨てにするな」!」
「よい。私が許した」
「しかし!」
「許したといったのだ」
エルフの男はイラつきながら座り僕をにらむ目線が強くなった。
「質問に答えよう。装置は教会が行使しているのでな。口を出すことはできても動かすことはできない」
つまり中世ヨーロッパの体制みたいになっているのか。立憲は王族がやって護国は教会がやってるのか。だとすれば王都を放棄するのも防御に徹して王都を破壊するのも悪手となる。
「フォン、教会は悪神について情報公開しているのか?」
「しているとも。教会の情報がなければ名前すら分からなかった」
でも名前しか分かってないんだよな。
「悪神の出現予測はできるのか?」
「不可能だ」
言い切った。不可能なのか……まぁ神の行動を予測できるはずないか。
「今回の悪神問題が持ち上がったのはいつだ?」
「一年前だ。あの暗雲が立ち込め始めたのを別の集落のエルフが報告してくれたことから始まった」
成程。結構最近だったてわけだ。
「教会……結界……アペピ……反乱……」
「何か分かるか?」
「今考えて――あっ」
「どうした!?」
みんなが一斉に強い視線を向ける。僕は思いついたことを話した。エルフは僕に怒声を浴びせるもフォンの「ありうるか……」の一言で静まり返った。
「次回までに証拠の提出を頼むぞ」
「任せろ」
僕の話の信憑性を出すために次回の会議で証拠を提示することになった。証拠か……トーレイにも動いてもらわなくちゃな。
トーレイに許可をとるように言って会議場を出た。すぐにネイスの家の土屋の家に向かう。これは土屋の解析の力が必要不可欠だ。
「土屋、いるか?」
『いるよー』
「一人か?」
『うんー。ネイスちゃん寝ちゃった』
それは都合がいい。
「手伝ってほしいことがある。今から行くぞ」
「私の意見は考慮しないんだね……」
部屋から出てきた土屋は何か諦めた顔をしている。考慮しないわけではない。考慮した結果使うことにしただけだ。
「行くぞ土屋。ネイスのために」
「はぁ……ネイスちゃんのためなら仕方ないか」
よし釣れた。土屋がいれば大体の問題は解決したも同然だ。
今夜は長くなりそうだ。