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魔導書製造者  作者: 樹
再会から戦争へ
199/258

二狼

 ルグルスの戦闘は敵の数が減りこちらが優勢になりつつあるものの、上での戦闘が激化しているようだ。と上空を見上げる。だんだんアンチキングダムの力が弱くなっている。体力を完全回復させているとはいえスキルを二つ使うのは無茶なようだ。


「あいつは顔色変えずにできそうなんだがな…」


 二つのスキルを使うという事例がないから分からないがやはり体力はかなり使うだろう。


「ま、でもこっちも大詰めだな」


 先ほど上がってきた報告を聞きオレたちは総攻撃体勢に入っていた。


「本当に来ると思う?」

「あぁ、来るだろうよ」


 あいつは空を飛べないからな。


「フェンリル接近、か。あとどれくらいで着くと思う?」

「遅くで十五分ね。それで、大丈夫なの?」

「一応策はあるが…早いなぁ…!」


 思わず苛立った声を出してしまった。

 当然フェンリルが来ることは予測していたし策も用意した。だがフェンリルを殺すほどの準備となるとさすがに時間がかかる。しかも小妖精の中でのえりすぐりの奴を選び、魔法が不可欠だからエルフも制作に参加してもらたかったが魔法がうまい奴はほとんど防衛戦にかりだしたから準備が滞った。

 当たれば確実に殺せる。だが、これが失敗すると後がない。


「フェンリル!目視確認!」


 魔族の一人そう叫んだ。オレも魔法を使ってみてみると、すごいスピードで近づいてきている。

 なんであの図体で神出鬼没なんだよ。フェンリルが近づいていることだってエルフがいなかったら分からなかったぞ。


「総員戦闘準備!死んでも装置を守れ!」


 フェルイが部下のエルフたちに命令する。


「さーて…」


 オレは魔法をやめ肉眼でフェンリルが走っている方向を見る。もう土煙が目視できる。

 死ぬわけにいかないんだ。だから殺させてもらおう。


「行くぞお前ら!」


 オレは叫び、フェンリルのほうを見た。


「亜音速砲はまだ撃つな!まずは発光魔法か音響魔法で怯ませろ!物理攻撃は通じないし魔法も最上級レベルじゃないと通じないぞ!」

「フェンリル!来ました!アンチキングダムと闘っていますが相手になりません!」

「準備はどの程度進んでいる!?」

「あと十三分で完成するそうです!」

「間に合わないぞ…!アンチキングダムで何分持つ!?」

「もう持ちません!来ます!」


 フェンリルの遠吠えが聞こえた。アンチキングダムの軍勢は消え、フェンリルがこちらに迫ってくる。

 しかし、通すわけにはいかない!


「バーストライト!」

「爆音!」


 魔法が使える奴らはフェンリルを怯ませるため様々な魔法を使う。しかし、最初は怯んだフェンリルもすぐに回復し、だんだん攻撃も効かなくなってきた。

 くっ!こうなったら特攻でもかけて…いやいたずらに兵を失いわけには…!!


「何…この地震?」

「地震?そんなものうを!?」


 フェルイの言った通り地震がすぐに起きた。動物か!?いや、そもそもこの地震は!?


「なんだ、あれ…」


 オレは地震の最中に地面に現れた巨大な穴をみてオレは驚愕する。そこからできてきたのは、フェンリルと同じくらい巨大な狼だった。胸には乾いた血が付いている。

 あれは…?いつかトーギが言っていた冥府の神の番犬!?名前は確か…


「ガルム…」


 そう言えばアンチキングダムはヘルのスキルだったな…なるほど、だからガルムを召喚したのか。


「あいつらに近づくな!巻き込まれるぞ!」


 そう言った直後に二体の巨狼が激突した。激しい足音と泣き声、そして降り注ぐ血。ガルムの牙はフェンリルの肌を貫通し胴体から出血しているがフェンリルの爪がガルムの足を切り裂いた。ガルムはフェンリルから牙を離したもののすぐさまフェンリルにかみつく。フェンリルもガルムにかみつき二体は激しくもみ合う。


「……あ、準備…」


 あまりの光景に放心していたがこれはチャンスだ何してんだオレ!?


「準備を急げ!ガルムが勝つとは限らないぞ!」


 オレの叱咤で兵士たちはハッとしてすぐさま準備に取り掛かった。フェルイもすぐさまエルフに手伝うように指示をしてまた二人してガルムとフェンリルの戦いを見る。

 激しい。両方から何十人分もの血が降り注ぎ大地を染める。


「まずいな…!」


 ガルムが若干押され始めている。どうやらフェンリルはロキから何かしらの改造を受けているらしくだんだんとガルムのほうが怯み始めた。


「おい!準備はまだか!?」

「もう少しです…!あと二分…!」

「早くしろ…!」

「ディスベル!ガルムが!」


 フェルイに言われてガルムのほうを見るともうガルムは押し倒され首筋を噛まれていいた。そして浅い呼吸を繰り返すだけとなり動かなくなる…


「クソッタレ…!」


 残り一分くらいだろうが、でも間に合わない…!この距離じゃすぐに詰められて…!


「亜音速砲をまだ撃つわけには…!」

「負けてたかるかぁぁぁぁぁ!!」


 フェルイが叫んだかと思うとどこからか球体を出した。それをもってフェンリルに特攻する。


「戻れ!!」


 しかしフェルイはその声を聞くことなく突撃する。しかしフェンリルはそんなフェルイを踏みつぶそうと足を上げた。そして振り下ろす。

 フェルイの上に巨大な足が落ちた。そして、フェルイを潰す。


「死んでんじゃねぇよ…!」


 そう叫ぶと、フェンリルの足が持ち上がった。そしてそこにはフェルイがいて、光をまとっていた。

 あれは、光魔法…いや、太陽の加護か!


「シャイニングロウ!!!」


 そして太陽の光はフェンリルを飲にこんだ。そしてフェンリルが怯む。


「準備!完了しました!」

「発動しろ!」


 そのまま膝をつくフェルイは笑っている気がした。そして回復したフェンリルはフェルイを殺そうと口を開けるて迫るが噛まれる寸前で止まった。

 発動、成功か…!

 そしてフェンリルは初めて悲痛な声を上げた。

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