表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔導書製造者  作者: 樹
再会から戦争へ
189/258

回収

 まず勇也の夢の中に入った。そこは血と火薬のみで構成された戦場だった。向かってくる魔獣を殺し僕は中心で戦っている勇也の元に向かう。

 一心不乱に敵を殺す勇也を見て顔をしかめる。目の前には岡浦が使っていた槍や谷川の杖が落ちている。

 永遠に続く戦場か…悪夢以外の何物でもないな。


「っと…」


 凪川が最後の敵を倒した後すぐに又ループが起きた。そして岡浦と谷川が凪川に向かって何かを叫んでいる。その背後には巨大な魔獣が。このままでは死んでしまうだろう。

 僕は魔導書を取り出し巨大な魔獣を撃ち抜いた。魔獣は倒れ岡浦と谷川はユウヤの元に駆け寄る。


「ふぅ…」


 ここが戦場で、絶対に戦い続けなければいけない場所でよかった。魔法が扱えるのならこの夢も変えられるから。


 そして夢の世界は壊れ、現実へと引き戻される。



 勇也が目覚めた。勇也は僕たちの顔を見て安堵のため息をつく。そして起き上がって周囲の状況を確認しため息をつく。


「ごめん…迷惑をかけた」

「いや僕も同じだったから…あと四人か…」


 美月がそろそろ限界だ…正直これ以上はきついだろう。しばらく休んで…


「って、休んでいる暇もないようだよ…」


 勇也が周りを睨む。気が付けば尖兵に囲まれていた。

 おいおい…冗談だろ…気が付かなかったぞ…


「燈義…どう?」

「これだけの数はさすがに相手できねぇよ…」


 ここはルグルスの領土外だからこいつらにアペピの縛りは通じない。そして最大級魔法は今使える状態じゃない。

 やばい…勇也も戦える状態じゃないし、四人を担いで逃げるのは無理だ。


「クソッタレ…」


 僕はつぶやき魔導書を取り出した。そして固まっている四人に向かって転送魔法をかけようとしたところで…爆撃された。


「うおっ!?」


 驚きの声を上げる。それと同時に土煙に交じってでてきたハヤノとキクウに襟首を掴まれ空にあがる。そして戦艦の中に放り込まれた。

 尖兵は戦艦――救済を攻撃するものの救済に傷一つつけられない。


「発射」


 キトルが一言いうと、尖兵たちに向かって衝撃波が発射された。その衝撃波は地面に当たり地面を隆起させて尖兵たちを襲う。


「救済のスキルでね、衝撃波を操作して地形を変えたんだけど…なにせこのスキルは広範囲すぎるし空中にも衝撃波が広がるから味方が近くにいたら使えないんだ」

「キトル…」

「僕は説教と言うものが得意じゃなくてね。そちらに任せるよ」


 キトルの指さす先には不機嫌そうな…というか明らかに怒っているディスベルがいた。ディスベルは僕の前までくると一発、僕の頭を殴った。


「言いたいことは分かるな…」

「…あぁ…」

「しばらく戦うな…とは言えないことが口惜しいが、それでも制限はさせてもらう」

「ディスベルさん…でも尖兵は数も多いし、それにフェンリルも…!」

「信用しろっつってんだクソガキ。いい加減にしねぇよマジで拘束すんぞ」


 口が悪くなってる…と思うが言えない。美月はもう寝ており僕たちも肩を貸してもらわないといけないくらい疲労しておりすぐに眠りについた。



 ユウヤたちを医務室に運んだあと、尖兵がおってくることもなかったので水晶を使って臨時会議を開いた。


「つーわけで今回の内容はあいつら抜きでの戦争攻略だ。戦争も最終局面みたいだし、あいつらに肝心なところで倒れられるとこまるからな」

『随分と砕けた話し方になったね』

「ストレスでイライラしてんだよ…で、どうするべきだと思う?」

「尖兵はルグルス内にいれば防げるけどフェンリルは防ぎようがない。かといって対抗策もない…詰んだね」

「……いや、対抗策はある」

『え?』


 オレの言葉に全員が驚く。だがこの対抗策、全然根拠がない。というか本当に成功するかどうか分からない。


「対抗策って?」

「人間だ」

「…人間?」

「そう。人間」


 オレの言葉にまたしても全員が驚き、今度は絶句した。


「いやいやディスベルさん。人間を卑下するつもりはないけれどあれだよ?全く戦争に参加せずにのうのうと生きてるやつらだよ?それのどこに対抗策があるっていうのさ」

「そこだよ」

『どこだ』

「のうのうと生きてるってことだ」


 人間たちの近くではヤマタノオロチとの戦いがあり、そして世界中に出現している尖兵もいる。


「でもなぜか人間は被害を受けてない」

「あ…確かに。人間だけ世界規模の戦争に巻き込まれてない」

『出軍したという話も聞かない…』


 人間だけがこの戦争に関係していない。人間は魔族より劣り、エルフより魔法が下手で、電脳種ほどの知性もなく、獣人族ほどの筋力もない。なのにこの戦争だなにも被害を受けていない。

 これは明らかに異常だろう。


「それに人間が召喚したんだよね…トーギくんたちって」

『考えれば考えるほど異常ね…どうするの?』

「一旦戻ってこいつらが回復するのを待つ。人間とだけ戦うのならオレ達だけで十分だろうが、何が起こるかわからない。こいつらも連れていくべきだろう」


 こうして次の方針を決め、オレ達はルグルスに戻った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ