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魔導書製造者  作者: 樹
再会から戦争へ
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急襲

 僕が帰ってきてすぐに議会の全員からバッシングをくらい、そして二時間弱説教されたところでようやく本題をきりだせた。


「フェンリル、僕たちだけで倒してくるから」

「ふざけんなよてめぇ」


 ディスベルに思いっきり睨まれた。

 まぁそう簡単に許してもらえるとは思ってない。というかここが最大の難関だ。


「いきなり死んだと思ったら戻ってきて挙句の果てにあの化け物を自分たちだけで狩ってくるだと?いい加減にしねぇと手足縛って閉じ込めるぞクソガキ」


 ディスベルだけでなく他の代表からも非難の視線が寄せられる。しかし僕は自分の意見を曲げるつもりはない。

 これはきっと、僕たちにしかできないことだ。


「救済でも勝てないほどの力を持っていて俊敏だから大軍を投入しても食い荒らされるのがオチ。少数精鋭で行ったとしても最上級魔法でないと傷もつけられない。そんな敵に挑めるのは僕たちだけだ」

「だからって死ににいかせられるわけないだろ前にも言ったがお前らの命はあり得ないほど重い。そう簡単に捨てさせるわけないだろ」

「捨てないならいいだろ?」

「お前なぁ…!」


 いい加減にしろとディスベルが怒鳴りかけたところで全員がその異常に気が付いた。そして空の上を確認する。


「悪いな…もう準備は整ってるんだ」

「トーギを押さえろ!」


 フォンが焦った声を出す。しかし僕はもうそこにはいない。

 転移魔法で戦艦『時計改』に転移した。そして時計は最速の戦艦。獣人族のように空でも飛べない限り追いつけないだろう。


「いいの?」

「いいんだよ」


 戦争を経験しているからこそあいつらはこの作戦を許しはしないだろう。だったら勝手にやらせてもらうだけだ。

 だってこれは僕たちの戦争なんだから。


「さすがの傍若無人ね浅守」

「そうでもしないと勝てないんだよ岡浦」


 こうして僕たちを乗せた船は発進した。



 二時間後、ヒュガス近郊に着いた。しかしフェンリルどころか魔物も魔獣もいない。静かな場所だ。


「本当にここでいいんだよね」

「一応反応はあったらしいが…美月、見えるか」

「見えない…ここにはもういないのかな」

「いやそんなはすは」

「ごめんない!!」


 美月が声を張り上げた。すぐさま船全体が揺れる。そして牙が甲板を食い破る前に僕たちは脱出していた。

 あ、あぶね…


「ありがとよ美月…お前ら、準備はいいか!?」

「できています」

「とっくにできてるわよ!」

「よし…じゃぁフェルに岡浦、頼んだぞ!」

「はい」

「分かったわよ!勇也、頑張ってよね!」

「あぁ!」


 僕たちはそれぞれ言葉を交わしフェンリルに向かう。


 岡浦とフェルはフェンリルを引きつけるために岩の間を駆け回り攻撃する。フェンリルに魔法攻撃はない。牙と爪、そしてあのバカみたいな巨体よる攻撃だけだ。だから岩をうまく利用すればそれほどダメージを負うことなく闘えるだろう。

 だが、それでは何百年かかろうがフェンリルは倒せない。


「谷川…どうだ」

「大丈夫…というかそっちの方が大丈夫?」

「僕は大丈夫だ…美月が心配だな」

「確かにね」


 美月の情報操作でフェルと岡浦の居場所を隠し続けている。僕のサポートで谷川が参戦できない以上あいつに頼るかしない。

 あいつなら無理してでもやり通すだろうが…だからこそ心配なんだ。


 目の前ではフェンリルが力任せに大地を破壊している。敵の姿が見えないのがそうとうイライラするらしくかなり暴れている。

 危ないな…こっちにまで岩が飛んできそうだ。


「もう少しなんだ…耐えてくれよ…!」


 勝負は一回きり。それを逃したらおそらく後はない。この作戦は失敗して僕たちは死ぬだろう。

 だから、万全の準備を整えておいた。


「悪いな…負けるわけにいかないんだよ。光海」


 遥か上空にいる光海にむかって呟く。

 そして僕たちに向かって光の矢が降り注いだ。


 矢は地面に突き刺さり、僕たちはケガ一つなくその場に立っていた。


「悪いなタマモ。病み上がりに」

「いいわよ。退屈してたところだし」


 タマモが僕の隣に並ぶ。こいつを連れてきて正解だった。フェンリルはおそらく敵の主力の一つ。何としても殺させないだろうし、なんとしてでも僕たちを殺しに来るだろう。だから保険をかけておいた。

 そしてその保険はうまく機能したようだ。


「でもいいの?気づかれたわよ」

「大丈夫だ…もう終わった」


 僕はいままで貯めていた魔力を一気に放出する。


 ウィンドコントロール。僕が集めた風がその場に集結する。それは嵐のようにあつまり、その場に停止した。

 荒い息を整えつつフェンリルの反応を待つ。

 谷川がいなかったら危なかった…こいつの回復能力は本当に便利だな。


「喰え、フェンリル。待ち望んだごちそうだぞ」


 僕の言葉に反応したのか、フェンリルは巨大な風の塊にかみついた。そしてそれを飲み込むため大きな口をあける。


「勇也ぁぁぁぁ!!」

「はぁああぁぁぁぁぁああああ!!!!」


 怒号が上空から聞こえ巨大な光の剣を持った勇也がフェンリルの口に斬りかかる。横にした剣で口をとらえ、そのまま口を切り裂いた。

 そして着地し、フェンリルはその場に倒れる。


「よし…うまくいった…」


 僕は安堵のため息を漏らした。


「これはどういうことなの?」

「あぁ…神様ってのは魔力の塊なんだ。だからその神に匹敵する魔力を集めた。そしてフェンリルが喰ったとされるオーディンは風の神だからな。風属性の魔法をそのためた魔力で発動しそれを喰わせることで神話の条件を満たしたんだ」


 そしてオーディンを喰ったフェンリルは顎を引き裂かれて死んだ。まぁ今回は切り裂かれたんだが。

 うまくいってよかった。


「とりあえずこれで作戦は成功…!」


 そう呟いて魔導書を閉じたところで、僕は背後から強烈な痛みに襲われた。


「成程…これは予想外だ」

「な…」


 振り返るとあの影が僕の方に手を向けている。その腕から発射されたらしい魔法は綺麗に僕の体を削った。

 そして僕は地面に倒れる。


「生命…流動…!」


 ギリギリ保った意識でスキルを発動し僕は生きるという選択を選ぶ。そしてなんとか命をつなぎその影を見る。


「お初にお目にかかる」


 影は、影をとりその素顔をさらした。


 その顔はまるで好青年だが、まとっている雰囲気は『悪』そのもの。


「わたしはロキ。君たちの敵で、君たちを殺すものだ」


 そしてロキは僕たちに向かって魔法を放った。

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