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魔導書製造者  作者: 樹
再会から戦争へ
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転生

 何もない空間に僕はいた。

 なんだ成功か。ひやひやした。


「まさかこんな方法でここに乗り込んでくるとはな…驚いたよ少年」

「お前の思い通りにさせてたまるか。体を残していったら乗っ取られそうだったからな」

「それを狙っていたのだがね…やはりそううまくはいかないか」

「当たり前だ」


 目の前にいる小さな蛇、アペピと会話する。さすが腐っても悪神。ふざけた罠を用意してくれる。


「さて少年、体が消えた今君は魂だけの状態でここにいるわけだが…戻るときはどうするつもりなのかね?」

「そこらへんもちゃんとしてるよ。戻ったら殴られそうだけどな」

「ぬかりはないか…いや本当に残念だ。神は神の戦いしかできないから地上で戦いたかった」

「やめてくれ」


 敵味方関係なく皆殺しにしそうだ。この戦争自体を破たんさせてどうする。

 で、だ。わざわざ死んでまでここまで来たんだ。力をくれなくちゃ困る。


「無論力はくれてやろう。しかし少年、神の力を吸収するということは神そのものを吸収することと同義だ。創造主が造った我々の本質は魔力の塊。少年にその魔力を受け入れるだけの器があるのかね?」

「ある」

「ほう?ではどのような」

「魔導書だ」


 僕はまだ使っていない新品の魔導書を十冊ほど出した。


「ふむ…確かに魔導書ならばある程度の力は受け入れられるだろう……だが少年。甘く見てもらっては困る」


 そう言ってアペピは急に飛び上がり僕の左手にかみついた。そしてそこから黒い蛇が現れ始め僕の体を侵食していく。

 な!?なんだこれ!?


「我は悪神。その根幹は悪のみ。少年の魂を喰らうことはできずとも魂を悪に侵食することはできる」

「ッ!?おい…!冗談だろ!?」

「冗談だと思うのなら思い知るがいい。少年、人智を超えた世界の悪。その一片の力を受け入れてみせよ」

「ッ……!め、メモリ……」


 僕は最後の力を振り絞ってメモリーに呼びかける。そして僕は暗転した。



 携帯電話から耳を離しメモリーという女性に言われた通りの場所に移動する。


「天野岩戸…ここでいいんだよね」

「あぁ、そのはずだ」


 美鈴とフェルちゃんとも合流し全壊している天野岩戸へと到着した。

 携帯に反応は…ないか…


「本当に浅守の奴、消えたの?」

「……うん…」

「ふーん。そっか」

「そっかって…」

「でも勇也、あいつがそう簡単にくたばると思う?」

「思ってないよ」


 だから悲観してはいけない。燈義がこの状況で死ぬことはまずあり得ない。確かに創造主ですらこの戦いの行方は分からないだろう。しかしこの世界は俺たちのために改変された世界だ。俺たちが瞬殺されてしまうような設定の敵は作っていないはず。

 だから、燈義の行動にもなにか意味があるはずだ。


 そんなことを考えて何とか不安を押し殺していると携帯が鳴った。全員が俺の持っている携帯に視線を注ぐ。俺は少し緊張しつつ電話に出た。


『遅くなってすみません。もう到着なさっているのですね』

「あぁ…それで、どうすればいい?」

『やっていただくことは簡単です。今からそちらに闇を出しますのでそれを撃退していただければ』

「闇?それって一体…」

『闇とは、簡単に言えば浅守燈義が受け入れられなかった悪神の一部です』

「悪神!?それってアペピのことだよね!?一体どういう状況でそんなことに!?」

『今の状況だからですよ。分かるでしょう?』


 た、確かに神々の尖兵との戦いは不利な状況になりつつある。というか三日もすれば形成は逆転するだろう。

 でも、だからってそんな…


『あなたもしたではありませんか。悪意との融合』

「あれは大道魔術があってこそ成しえたことで…!」

『それなら大丈夫ですよ』

「は?」

『彼は世界の矛盾なので。その矛盾をただすために力が必要なのです。だから彼が受け入れられなくとも世界が受け入れさせます』

「む、矛盾?なにそれ!?」

『ではお聞きしますが』


 メモリーは冷静に、当たり前のことを聞くように俺たちに質問した。


『何の障害も持たない者が絶対記憶能力を持ち、さらに闇魔法も光魔法も使いこなす魔導書を創りだせる。そんな二つのスキルを持って生まれた人間が通常だとでも?』


 その質問に俺たちは答えられなかった。



 昔の記憶。のような気がする。アペピに飲み込まれてどれだけたったか分からないが僕が目を覚ますと誰かの記憶を見ていた。

 その記憶の主は人間で、魔法を駆使し剣を振るい、敵を倒していた。目の前には…あれ?僕がいる。


『何だこれ…』


 禍々しい城に僕と勇也とフェルは入って行った。そして記憶の主はその三人を見送り魔族と闘っている。


『これは…百年前か』


 話に聞いているあの戦争。これがそうなのか…いや、今重要なのはそんなことじゃない。

 どうして僕がここにいるのに、前の召喚された僕は城に入って行ったんだ?


『こいつは…誰だ?』


 そんな疑問が浮かんでも誰も答えてくれない。僕は仕方なくその後を見守ることにした。

 そして、戦いは終わる。魔王の城から光が放たれ世界の確変が始まった。

 こいつは…満身創痍でも最後まで生き残ったのか。


『あぁ…?』


 そこで僕はあり得ない光景を目にする。崩壊していく世界の中で、僕の体が光と化して消えていく。確かにそれは変なことではない。生まれなおすのだから消えるのは当然だろう。


 だが、光と魂が別々になっているとはどういうことだ!?


 光と化した体の中から僕の魂と思われる光が出てきて体から離れ、天空へ向かっていく。

 これは…一体…!?


 思考が追いつかない。そんな状況に陥っているとだんだんと記憶の主の体が消え始めた。しかし主は何が起きているのか分からず必死でもがく。

 そして強く願った。


「消えたくない!」


 そして、その願いはかなった。


『そういう事かよ』


 転生の願い。それは世界を創りなおすほどの膨大なエネルギーの中で偶然叶ってしまったのだろう。そして転生するには体がいる。

 体はある。さっき消えた僕の、いや浅守燈義の体が。


 そしてあの穴もその時できた。浅守燈義に転生した『僕』は穴に吸い込まれ、そして地球の浅守静乃と浅守博文の子供として生まれた。

 絶対記録と言うスキルをもって。

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