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魔導書製造者  作者: 樹
再会から戦争へ
177/258

改造

 占領下にあったヒュガスは全く様変わりしていない。鉱山からでる煙も、街から出る騒音も、各所で金属を溶かしていることにより発生する熱気も変わらない。


 しかし、望遠鏡でのぞいていると所々に痩せこけた小妖精が見える。


「どんだけ酷使したんだよ…」


 小妖精は武器などの金属類や燃料を売って生きる種族だ。そのためヒュガスには熱気であふれていて、食料も少ない。だから小妖精は水だけで数日は生きられるというかなり丈夫な体を持っていたはずだが…


「それをどうやったらこれだけ…」


 もはや労働と呼べるものではない。働いたら死に、働かなくても殺されるというふざけた状態になっている。

 一刻も早く解放してやらなくては…!


「あと三十分でヒュガスの上空だ…全員戦闘準備。反撃してくる奴はとりあえず打ちのめせ。そして確認して敵だったら、殺せ」


 指示をだし、そしてオレも甲板に出る。

 さて、戦争をしようか。


「目的のポイントに着きました」

「分かった……降下開始」


 上からの奇襲。救済の新機能である迷彩きのうを使った作戦だ。救済の動力源を魔力回路で他の艦とつなげ一斉に魔法を供給する仕組みらしい。

 まぁだから救済が落ちればつながっている他の艦も甚大な被害を受けることが難点だと言っていたが…それを考えてもこの仕組みは高く評価できる。これを造ったキトルは間違いなく天才だ。


「どうだ」

『奴ら突然のことで驚いてます。まぁ破壊の勇者が負けるはずがないと高をくくっていたみたいなのでこの奇襲に対応しきれていません』

「それでいい。いいか、敵は一人も残すな」

『了解―――ッ!?なんだこれは…!』

「どうした!?」

『なん…う、うわああああぁああがっ!』


 突如ぐしゃりと何かが潰れる音がして通信が途絶えた。

 なんだ…何が起きた…!


「通信の消滅地点は!?」

「地下牢です!」

「地下の奴らを外に出せ!装備を変えてから―――」

「地下に潜っている全員と繋がりません!」

「おいおい…冗談だろ!?」


 地下で何があったっていうんだよ!


「一から三班は装備を変更して地下に潜れ!」


 今までは奇襲をスムーズに進めるために軽装備だったが地下で何かが起きている以上重装備にせざる負えない。


「敵兵を捕まえて吐かせろ!」

「もう終わってるよ」


 そう言って入ってきたのはキトルだった。白衣を着ていて所々が血でぬれている。


「地下にはいわゆる人体実験施設があるらしいよ。捕まえてきた敵兵は詳しいことを知らなかったみたいだけど、何かの融合実験をしていたらしい」

「融合実験…まさか…」

「そう。生物兵器さ」


 キトルの言った生物兵器と言うのは細菌の類ではなく、まさにその名の通りなのだろう。魔物や魔獣と何かを融合させより強い兵をつくり兵器とする。それが地下施設の狙い…だとすれば敵は生物兵器か。


「生物兵器は総称して『キメラ』とよばれているらしいよ。数は未定だけど、取りあえず一体につき五人で戦った方がいいんじゃないかな」

「キメラ、ね。面倒なことになってきたなぁおい」


 ヒュガスの武器は世界に轟く名品が多い。それで武装したキメラか…面倒なことこの上ないが、泣き言も言っていられないか。


「地上に出れば救済の爆撃ができるが」

「その前に飛んでくるキメラを何とかしないといけないかもね」

「飛ぶのか?」

「そういう種もいるんじゃない?」


 いそうだな。確かに。

 オレはため息をつきそして戦場に目を移す。下では轟音が響き建物が倒れていた。

 長い戦いになりそうだ。


「ねぇディスベルさん」

「なんだ」

「キメラの弱点、あなたはどう考えます?」

「考えるも何も実物みなけりゃ分からんだろ」

「そうでしょうか。上がってきた情報だけでもういくつか弱点の予想はついているのでは?」

「…不確かな情報で兵を死なせるわけにいくか」

「確かに」


 情報が足りない。予想ならいくらでもできるがそれを真実とするためにも情報をかき集めなくてはいけない。


「四班五班聞こえるな」

『はい。聞こえております』

「今から指定するポイントを爆破しろ。そして速やかにその場を離脱しろ」


 そしてあの兵士からの通信が途切れた場所を指定し、その二分後に爆発が実行された。

 その下にあったのは、鉄でつくられた廊下とそこに群がる気味の悪い生物。


「キトル」

「了解。焼き払うよ」


 救済からの爆撃でその下にいる生物を爆撃する。そうしてできた空間にはいを送り込む。


「ヤバいと感じたら速攻で離脱しろ。魔法が使えない可能性も考慮に入れて必ず電脳種とともに行動しろ」


 電脳種には飛べる奴もいる。たとえ転移魔法が使えなかろうが実弾兵器と飛行能力があれば問題ないだろう。

 とはいえ、なんだこの胸騒ぎは。嫌な予感がする…


「ねぇ、ディスベルさん」

「なんだ」

「キメラってさ、スキルがあるんだよね」

「そりゃ生物ならスキルはあるだろ」

「そうだよね……囲まれた」


 ガタッとオレは席を立ち周りの映像を見る。そこには顔のない人間らしきものが数百体、艦隊を囲むように空に浮いていた。

 嘘だろ…まさかそんな!


「迎撃態勢に入れ!」

「もう何匹か侵入しています!」

「救済のシステムにも侵入されています」

「マジかよ…!クソッタレ!」


 全員の絶望が濃くなっていく中キトルだけは妙に冷静だった。

 なんだこいつ…どこにそんな自信が…


「全く…救済もなめられたものだね」


 そう呟いてキトルはスキルを発動さえた。


「起きなよ救済」


 キトルがそう言った瞬間、救済が鼓動を開始した。まるで心臓が脈打つように。


「なんだこれは…」

「電脳種ってさ、魔力核で動く機械なんだよね。いわば機械の体と魔力核、そして僕のスキルさえあれば電脳種として成立する」

「…まさか」

「それは救済だって、例外じゃないんだよ」


 そしてキトルの言葉通り、救済は意思をもって攻撃し始めた。

 さすがにこれは予想外過ぎる…

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