落下
事態を打開するために美月と合流する。その間にも矢は降り注ぎ街に甚大な被害を与えていた。
ルグルスの再興には時間がかかりそうだな…
「美月!」
「燈義くんこれって!」
「間違いなく光海だ。美月、力を貸してくれ」
「どうするの?」
「僕が突っ込むからお前は援護をしてくれ」
「そんな!射撃訓練だってあんまりしてないよ!?」
「情報操作と解析があればなんとかなる。行くぞ」
「ちょ!?あぁもう分かったよ!」
僕は空にあがり光海に近づく。飛んでくる矢は後ろからの支援攻撃でなんとか撃墜している。
そういえばあれホーミング機能付いてたんだよな…さすが魔法。
「さてと、そろそろ見えてもいいころだが…」
『燈義くん』
「どうした美月」
『恵梨香さん隠れてる。場所を伝えるから』
「了解」
そしてすぐさま居場所の連絡が来た。場所は―――右隣。
「落ちろ!」
突如として現れた矢を相殺し僕は距離を取る。
『左に移動してる!』
美月の報告を受けて取りあえず右一面にグラウンドデリートをぶつける。しかしその効果は途中で中断された。
重力とかの攻撃でも吸収できるのかすごいな。だが、これも予想の範囲内だ。
「物理で攻撃なら効くだろ」
僕は剣を抜きそして斬りかかった。正直剣技は久しぶりだが問題はないだろう。一発も当たらず剣を光海に突き刺す。美月の協力があればそう難しいことじゃない。
「っと、あぶね」
すぐ右を矢が通りすぎる。とはいえ来ると分かっていればどうとでも…
『全方位から来るよ!』
マジか…本気だなあいつ。
だが、その程度か。全方位攻撃なら僕にだってできる。
「グラウンドフォール」
ドン!と矢が落ちた。さすがに折られたら終わりか…でも次からは対処してくるだろうし、長期戦になれば負けるな。早めに終わらせないと。
と言うか下も随分とうるさくなったな…大丈夫か。
『燈義くん!』
「どうした!?」
『敵がそこまで来てる…そっちに集中できないよ!一旦降りて――』
「……自分のことに集中しろ」
『燈義くん!?』
「僕は僕で何とかする」
僕は通信を切ってどこにいるのかも分からない光海と向き合う。
さっきから熱探査もしているが全く引っかからないな…でも範囲攻撃は魔法しかないし…マンガみたいに衝撃を飛ばすなんてマネ魔力なしでできるはずもない。
「でもこれじゃ負けるよな確実に」
とにかく適当に飛び回っても確実に当てられる。ヘッドショットされたらおしまいだし…ここで防御してそれから…
などと考えていると防壁に矢が当たり防壁が崩れ去った。
威力が強い…これはまずいな…
「止まってもいられないのかよ…!」
悪態をついて飛び回る。しかし矢は追ってくるし体力もガンガン削られる。このままじゃ負け…いや、今までもこんな事態ばっかりだったな。冷静になれ。
「許容量を超える吸収をさせることは期待できそうにないし…スキル使って不発だったら体力なくなって死ぬ…この条件下であぶりだす方法は…」
……あぁ、思いついた。
「いけるか…」
いや、成功する。成功させて見せる。
「ウィンドスピア…」
僕は全方位にウィンドスピアを発射させた。そしてやはり吸収される。しかし、それでいい。本命はこっちだから。
そして、ドーーーーン!!と上空に音が響いた。鼓膜を押さえていたが平衡感覚が滅茶苦茶になる。
音だけだがグレネード…できてよかった…!
「うぅううぅう……」
左の方で光海が耳を押さえてうずくまっていた。だがすぐに回復してしまうだろう。そうなる前に僕は距離を詰める。
そして光海の右腕をがっちりつかんだ。
「さんざんやってくれたな…もう逃がさないぞ…!」
僕は思いっきり光海の腹を殴った。光海は体をのけ反らせ僕を睨む。だが僕は追撃をやめない。
ここで確実に気絶させないと何をされるか分かったものじゃない!
「終わりだ!」
三発目で光海は気絶し、僕にもたれかかった。
よし、これで…
ブスリ。
「…は?」
僕の腹に熱が走る。恐る恐る見てみると光海の矢が突き刺さっていた。
「な…確かに気絶を…」
驚いて光海を見ると光海はゆっくりと右手を振り上げた。
僕はとっさに光海を離した。そして光海は目を閉じたままどこかに消えてしまった。
操られて…いや、今は考えるより下に降りて治療を…
『置き土産だ』
突如、そんな声が聞こえて僕が上空を見上げると三本の矢が迫っていた。それは僕に向かって発射され…
しかし僕は誰かに突き飛ばされた。そしてその誰かは三本の矢をくらい…
「み…つき…?」
にっこりと笑った美月はそのまま下に落ちて行った。
「ッ!」
僕は混乱した頭を殴って強制的に冷静になりすぐさま落ちていく美月に追いついて抱きかかえた。そして地面に着くまでに傷の具合を確かめる。
急所には刺さってない…毒が塗られているが即死せいじゃない!まず止血の準備をしてから矢を抜き、溢れてくる血液を止めつつ解毒魔法を使う。
その時銃が目に入った。銃は修復不可能なくらい壊れていた。
上は任せろと言ったろうが!
「死んだら怒るからな!」
地面が迫り、そして見事着地した。立ち上がると騒ぎを聞きつけた敵がこちらを見ている。
こいつらは…本当に……!
「おい…邪魔だ!」
完全にぶち切れた僕はケガのことも気にせずに敵を殺した。