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魔導書製造者  作者: 樹
再会から戦争へ
174/258

決着

 外から大量の魔獣と魔物がが攻めてきた。そして中には一騎当千の破壊の勇者。もし勇也が倒されれば僕たちの負け。とはいえ大人数で増援に向かわせても無駄死にするだけだ。

 と言うわけで谷川とフォンを向かわせたが大丈夫だろうか。フォンには谷川の支援だけをしろと言っておいたが。


 いや…今はあいつらの心配より自分の心配か…


「トーギさん、大丈夫ですか」

「傷口は塞がったしHPも回復した」

「ですが、まだ体力は回復していないでしょう?」

「邪魔か?」

「はい。大人しく引っ込んでいてください」

「…了解」


 フェルに言われて僕は大人しく指揮をしていることにした。とはいえ指揮に関してはプロがいるからほぼ問題ない。作戦もなしに突っ込んでくる敵を倒すのはそう難しいことではない。誘い込んでで広範囲魔法を何人かで撃てば倒せるだろう。

 だから今の僕にはやることがない。美月は敵部隊の状況把握で忙しいだろうし…仕方がない。僕は魔導具の調整をしてくるか。


 絶え間ない戦闘音を聞きつつ僕は早足で工房へ向かう。そこには必死の形相で魔導具の調整をしている作業員がいた。

 …ここでも邪魔になりそうだな。仕方ない。街中に入ってきた敵でも倒すか。

 敵もさすがに数多いし、空を飛べる獣人族もかなり減ってしまった。だから空から侵入されやすい。


 まぁほとんどの敵は美月の的確な指示で街中に入った瞬間に撃ち落としているのだが。

 魔法使いって体力ないと本当にやることないな。


「だったら作ってあげましょうか?」

「別にいい」


 殺気を感じて敵の姿も確認せずに魔法をぶち込んだ。

 あれ?今の敵話してなかったか?


「あー…破壊の勇者の軍門に下ってたやつらか」


 気づけば、囲まれている。この混乱に乗じて中に侵入してきたってことか。ここには人間以外の種族が大量にいるわけだし、今は破壊の勇者のせいで管理体制も甘くなっている。

 とはいえ近くには工房がある。ここでつぶさないとだめだ。


「それじゃ、回復の度合いを確認するか」


 僕は魔導書を開いた。



 どれだけ時間が過ぎただろう。俺は傷だらけで立っていた。息は荒くなり目の前が朦朧としている。しかしそれは破壊の勇者も同じようだが、今だ笑みを崩さない。あの勝ちを確信した笑みを崩さない。

 援護にきているであろう悠子にはこの状況で手を出さないように言っておいたけど…これは辛いなぁ……


「勇也ぁ…勇也ぁ…」


 息も絶え絶えに俺の名前を呼んでいる破壊の勇者を見ていると、もしかしたら俺もこんな状態になっていたのではないかと思い恐怖する。戦闘に魅入っていたあのころに燈義が俺を倒してくれなかったら…きっと俺は死んでいただろう。それもロクな死に方をしなかったと思う。


 だから、今度は俺だ。


「闇核解放…エクスカリバー解放…!デュランダル解放…!」


 今まで負担を考えて交互に解放して戦っていたのだが負担なんて考えていられない状況だ。大道魔法で反発はないだろうから闇核とエクスカリバーを同時に使える。二つ同時解放は一年前の魔王と闘ったとき、三つ解放は初めてだ。


「ぐうっ!」


 解放しただけなのにこの負担…!こんなに動けないんじゃ殺される…!


「あはっ」


 破壊の勇者が笑い、突っ込んでくる。そして槍が俺の右腕を貫こうとしたところで全力で左に跳んだ。


 そして工房の壁に激突した。


「跳びすぎた…」


 力の調節ができない…予想以上だった…


「でもまぁ…これならいけるか…!」


 俺は立ち上がりそしてエクスカリバーを前で構えて思いっきり地面を蹴った。

 そして一瞬後には破壊の勇者の槍と激突した。激しい火花が散り地面も少し陥没する。

 これだけの速度をだしても大丈夫な自分の体にも驚くけど…これを防御した破壊の勇者にも驚きだ…


「どれだけ強いんだよ…!」


 俺は距離をとることなくさらに全力で押す。破壊の勇者がだんだんと後退し始めた。

 これなら…!


 しかしそう簡単にはいかないようで、破壊の勇者は足を振り上げると思いっきり俺の足を踏んだ。ボキっと嫌な音がするが気にしてはいられない。

 ここで離れたら確実に死ぬ。


「悪いけど…!負けるわけにはいかないんだよね……!」

「うぐ…あたし、だってぇ……!」


 俺と破壊の勇者の力がさらに増す。

 今かなぁ…フェルちゃんのようなことはできないけど、でもそれに似たことはできる。


「よっと…!」


 わざと離れて破壊の勇者のバランスを崩す。しかしすぐに体勢を立て直した破壊の勇者がチャンスと俺に向かって槍を向ける。

 俺はその槍を握った。


「破壊の大道魔法は生き物に対して使えない…でしょ?」


 唯一俺を殺せる武器を封じられて破壊の勇者は悔しそうに俺を睨んだ。俺はエクスカリバーを振り上げる。


「少しの間お休み…美鈴……起きたらちゃんと謝るから…!」


 そう言って俺は美鈴の頭をエクスカリバーの柄で殴った。限界が来ていた美月はそのまま気絶した。俺もその場に倒れる。

 し、死ぬかと思った…もう動けない……


 しかしそんな俺を取り囲むように破壊の勇者の手下が現れる……

 バトンタッチだよ…悠子…


「お疲れ様」


 フォンさんのそんな声が聞こえ、悠子の回復魔法が俺を癒す。俺は心置きなく意識を失った。



 破壊の勇者の手下を倒して回る最中に、ソレはいた。

 ソレは姿を持たず、ただそこにあるだけだった。そう、まるで創造主と初めて会った時の影のような物体…


「お前は……」


 そう呟いくと声に反応したのか影がこちらを向いた気がした。そして視線が合った後影は消えた。

 あれか…勇也が言っていたのは。確かにあれはヤバそう……って、待てよ。あれがいるってことは…


 そして僕の予感は当たった。数日前のように大量の矢が上空から降ってきた。


 光海恵梨香…あいつもいるのか…


 勇也がダウンし俺も完全とはほど遠い。しかも何人いるかも分からない破壊の勇者の手下…戦局はかなり危ない方向に進んでいる。

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