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魔導書製造者  作者: 樹
再会から戦争へ
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重症

 岡浦の一撃は見事僕の防御を破壊した。ヤバいと思って逃げようにも避けるのが手いっぱいで逃げ切れない。というのが現状。


「やりにくい…!」


 魔法を使う暇もない。使えば使うで速攻で破壊されてしまうのだがそれでも何とかしてこの場を離脱したい。こいつは、僕では無理だ。


「とはいえ、一発は入れておきたいよな…!」


 何とか隙を見つけ攻撃してみるも、破壊の力で消滅し槍がすぐさま襲ってくる。

 接近戦で不利とかそんなんじゃないぞこれ!一年でどうやったらここまで強くなれるんだよ!こっちはオーバーパワー使ってやっとだぞ!?


「あんた、邪魔」

「お前のほうが邪魔だ」


 と、何とか反論してみるが岡浦は特に怒ることなく淡々と僕を攻撃する。

 怖いな!


「まだかよ勇也ぁ!」

「あんたが名前で呼ぶな!!」


 急に岡浦がキレた。そして槍の攻撃が一段と激しくなる。

 これでキレるのか迂闊な発言できないぞ!


「勇也はぁ!あたしだけのぉ!」

「独占欲強すぎるだろ!」


 嫌われるぞ、とは口が裂けても言えない。これ以上火に油を注いだらこっちが焼死する。

 その前に殺されそうだが!


 …一か八か、やってみるか…


「今だ勇也ぁ!」

「ッ!」


 予想通り岡浦は反応し後ろを振り向いた。そして僕は全力で後ろに下がり距離を取る。

 距離は五百メートルってところか…さすがにここまでくれば防御する暇も―――


「死ね」


 そんな声が聞こえ、ぶすりと僕の腹に槍が突き刺さる。

 そしておびただしい血が、地面に落ちた。


 ば、ありえな…!?


「なんで、もう…!」

「教えると思う?」


 そう言って岡浦は僕から槍を引き抜き僕は地面に倒れる。

 これは…ヤバい…!HPもそうだが体が動かない…このままじゃ殺され…!


「さようなら」


 そう言って岡浦は僕を仰向けにして心臓を貫くために槍を振り上げ、僕はその光景をジッと見て、


 そして、笑みをこぼした。


「やっぱり…そうだよなぁ…勇者ぁ……」


 口から血を吐きつつ笑う。その気配に気づいた岡浦が横に跳んだ。そして僕の目の前に、勇者が降り立った。


「美鈴…!」

「勇也!」


 勇也の姿を見た瞬間に岡浦は笑顔になった。構えを解いて笑いかける。

 やばいだろあれ…完全にぶっ壊れて…!


「おい勇也…」

「燈義!喋ったらだめだすぐに悠子が来るから!」


 悠子。という言葉を聞いた瞬間岡浦の殺意が膨張した。


「悠子…そっかー、あの子も殺さなくちゃね」


 笑顔で、まるで日常会話でもするかのように殺害宣言をした。

 こいつなら、やる。と僕もおそらく勇也も思った。なぜならあいつの目は完全に光を失っているから。

 人間どうやったらあそこまで虚ろな目ができるんだよ…静乃を殺した時の僕よりひどいぞ…!


「目の前に集中しろ…僕は自力で歩ける…」

「でも!」

「いいから戦え…!死ぬぞ!」

「…分かった」


 僕は傷口を何とか塞いで立ち上がりよろよろとその場を離れる。その時何か勇也が話していたが聞こえなかった。



 燈義を見送った後、甘いと思いながらも美鈴と話ができないかと話しかけてみたが、笑顔で受け流された。その時の会話は全て「勇也だけでいい」と「殺す」、後は無言だった。

 説得不可能…そうだと思ったけどね。


「悪いけど美鈴、その行為を認めるわけにはいかないんだ」

「どうして…」

「それは、俺が勇者だから」


 この世界を、守らなくちゃいけないから。


「勇也らしいセリフだね…」


 そう言って美鈴は槍を構えた。


「大丈夫だよ…四肢がなくなっても介護してあげるから困らないよ」

「…行くよ」


 美鈴…いや、破壊の勇者に宣戦布告をし俺は斬りかかった。



 歩いている途中で谷川に発見され診療所で治療を受ける。かなりギリギリの状態だった。


「美鈴ちゃん…勇也と闘ってるんかな」

「そりゃ戦ってるだろ…つーかさすがにアレはない…」

「なんであんなに変わって…」

「恋愛ひとつで国が亡ぶことだってあるんだ。力があるものがあれだけ歪んだ思想を持てばおかしくないが…さてと…」

「ちょ!?まだ起きたらいかんよ!?」

「HPも回復したし傷も塞がった…それよりも岡浦がここにいるってことはあいつは最終決戦のつもりなんだろうな」

「それはそうやろうけど…まさか…!」

「あぁ…残った全兵力を投入してきてもおかしくない」


 そしてその予感は当たることとなる。まだヤマタノオロチとの戦いの疲れが癒え切っていない状況での攻撃は確かにつらいが…それでも戦わなくてはいけない。


「破壊の勇者の軍勢はここで叩き潰す…!」


 僕は魔導書を手に診療所を後にした。



 周りはもう穴だらけ。家々は壊れ地面は抉れ、増援に来た味方も敵も誰ももいない。あるのは血の付いた武器と防具と、血だまりだけ。


「はぁ…はぁ…」


 俺は息を切らしていた。正直最初の数手で決めようと思っていたのだが元々運動神経がいいうえにありえない強さを発揮する破壊の勇者はまだ息を少し切らしている程度だ。

 おかしいだろ…


「はぁ…!」


 勢いを乗せた攻撃も途中の地面を消滅されたりして中断せざる負えなくなる。


「勇也ぁ…もうすぐだからねぇ…ヤマタノオロチがいなくても、あたしがいれば世界なんて滅ぼせるから」


 虚ろな笑いを受かべる破壊の勇者を前に僕は剣を構えなおした。

 しかし、一向に打開策は見えていないのだった。

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