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魔導書製造者  作者: 樹
再会から戦争へ
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騎士

 俺がエアステップで恵梨香さんの近くまで来た時にはもう街の半分が壊れていた。もう何人が死んでしまったんだろう。

 一体どうやって結界内に入ってきたのだろう…いや、そんなことより早くこれを止めないと…!


「恵梨香さん!」


 ようやく恵梨香さんの姿が目に入った。恵梨香さんは俺を確認するや否やすぐにこちらに弓を向けた。


「恵梨香さん!もうやめてください!」

「逃げて!」


 恵梨香さんが叫んだ直後に矢が発射されたが俺はそれを撃ち落とす。しかし次々と矢は発射され何本かは撃ち漏らし俺の体に当たった。

 熱い!?冷たい!?属性付与してるのか!でもこの程度なら足を止めるまでではない!


「あ…ダメ!」


 恵梨香さんが叫び数十本の矢を一気に発射した。何とか撃ち落とそうと試みるものの矢は途中で消えた。

 は!?どこに!?という混乱はすぐに脇腹に走った痛みによってかき消される。

 脇腹には燃えている矢が刺さっていた。


「まさか…!」


 驚いて周りを見るとさっき発射された数十本の矢が俺を囲むように浮いていた。

 …そうか…矢を転移させて…!


「ただでは…落ちませんよ!」


 一斉に飛んでくる矢をすべて撃ち落とすだけの技量はない。それに撃ち落とせたとしても残りの矢が突き刺されば俺は確実に絶命するだろう。

 しかし、ここにいるのは俺だけじゃない。


「燈義!」


 俺が叫ぶと、俺の体が光る半透明の鎧のようなものでおおわれた。そして一斉に飛んでくる矢を受けて壊れつつも守ってくれた。

 しかし、これ以上空中にとどまることは難しい…だったら!

 俺はエアステップから外れて落下する。


 そして黒々を抜き、恵梨香さんを縛った。黒々に両手を縛られて矢を発射できない恵梨香さんはかろうじて空中にとどまり俺のそれにぶら下がる形になっている。


「恵梨香さん…!こんな体勢ですみません…」

「勇也…わたし…」

「大丈夫です…美鈴から何らかの洗脳とかを…」

「違う!違うんです!」


 恵梨香さんは俺に向かって叫んだ。


「わたしは!」


『そこまで』


 突如として現れた黒い人影によって恵梨香さんの声は阻まれた。

 なん…だ!このヤマタノオロチに似た感覚は!?


『作戦は終了。戻れ』

「あ――」


 人影は黒々を手刀で断ち切り、俺は落ちた。そして恵梨香さんはそこから消える。

 俺は人影を見て直観する。


 あれが…俺たちの敵だ…!


「恵梨香さん…」


 そして俺は地面に激突するまえにハヤノさんに受け止められ朦朧とする意識の中野戦病院のような場所に運ばれた。



 勇也がおち、戦力がガタ落ちしたところで魔物が攻めてきた。だがこの程度ならまだ対処できる。

 唯一引っかかるのはなぜ今攻めてきたのかということだ。


『少年』

「アペピ…どうした?」

『ここから我と同じ魔力を感じたのでな。来てみたが…なるほど素晴らしくくだらないことになっているな』

「どういうことだ?」

『あれを見ろ』


 アペピが言う先には倒された魔獣がいた。当たり前のように魂は光となって天に昇って…あれ?


「おい…早くないか?」

『さすが少年。気づいたか』


 アペピは僕の言葉を肯定した。

 早いのだ。光になってから消えるまでのスピードが。普通は天まで昇って消えるのに死んですぐに消えている。


「何が起きてるんだ…」

『高速転生。ループしている』

「ループ?」

『簡単に言えば、今回の戦闘のデータを持ち越した状態で生まれ変わっている。少年の世界の言葉でいえば、強くてコンテニュー』

「なんで僕の世界の言葉を知ってるんだよ…いや、そんな場合じゃないな…!」


 殺せば殺すほど強くなるってそれはさすがに卑怯だろ!


「全体後退!亜音速砲!」

『いいのか少年。あれは切り札の一つなのだろう?』

「切り札の一つでしかないから使うんだ。まだこっちの手の内をさらすわけにはいかないんだよ!」


 亜音速砲が発射され魔物は撃墜される。亜音速砲の存在はもう十分知られているだろうからまだいい。だがこれ以上手の内を晒すわけにはいかない。まだまだ戦うべき相手が大量すぎるほどにいるのだから。

 しかし、時間逆行もどきの次はループか…速いとこ終わらせないと詰むな。


「魔物さえ絶滅させられればな…」

『絶滅させることはできないが存在を弱めることはできるぞ』

「どうやって!?」

『ヤマタノオロチを倒せばいい』

「…それができれば苦労はしてないんだよ…!」

『いや、案外すぐにできるかもしれぬぞ?』

「どういう意味だ…?」

『死してなお国に貢献する素晴らしき騎士道の話だ』


 それだけ言ってアペピは消えた。

 死してなお、か。いやいくらこの世界でも死んだら終わりだろ。


「いや…待てよ…」


 完全に死んではいない奴らが…あぁ!いる!


「いやまてだとしてもどうやって…」


 あいつ自身にヤマタノオロチを倒せるほどの傷を与えることはできないはずだ…だとしたらどうする。どうすればヤマタノオロチを倒せる…!?


「…考えるより、行動だ…!」


 もう魔物はいない。勇也が起きたらすぐに作戦を立てよう。


 ヤマタノオロチを、倒す。

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