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魔導書製造者  作者: 樹
再会から戦争へ
160/258

一日

 翌朝、太陽が昇り始めたその時から戦争は始まった。


 まず、地面からゾンビのようなものがあふれだした。


 そして空中から黒い翼が生えた何かが剣や槍をもって降りてきた。


 そして、神々が世界に姿を現した。


「凄い…」


 美月が驚きの声をもらす。しかし事態はそれだけでは済まない。


 ラーとアペピは王都に向かわせ守護している。ルグルスにも天照大神や伊弉諾尊などそうそうたる神々が姿を現していた。

 しかし、神々は神々としか戦わない。神話の軍隊とは戦うことができても破壊の勇者の軍と戦わせることはできない。だから神話の運命を悪化させないように破壊の勇者と闘うのは必然だ。


 神々は人を意図的に殺せない。だが人は神々意図的にを殺せる。


「見えた」


 望遠鏡のようなもので遠くを見ていたフォーラスの報告が上がる。のぞいてみると確かに軍が迫っていた。

 第一波ってところか数は…三千くらい。


「幻覚魔法じゃないよ」


 美月が僕に報告する。美月のスキルに幻術は効かない。

 

「同じ戦力で戦っていてはやられる。五千人はいかせるべきでは」


 フェルが僕に進言する。しかし僕は首を振った。


「いや、ここにはラーの結界がある。フォーラス」

「準備完了です」


 相手がこちらのことをどれだけ理解しているのか分からない。だからのその第一波なのだろう。だから近づけさせるわけにはいかない。


「過動発動済。亜音速砲チャージ」

「エルフは亜音速砲の基盤を固めろ。管理室」

『弾道計算完了。目標までの距離約三十キロメートル』

「第一亜音速砲発射準備完了」

「第二から第六亜音速砲までチャージ完了」

『目標との距離二十八キロメートル』

「全員耳を塞げ。ショックに備えろ」


 全員が結界をはり全員がそこから離れ管理室から亜音速砲の発射スイッチが押されるのを待つ。

 残り距離二十五キロ。


『第一から第三亜音速砲、発射』


 音は、しなかった。しかし亜音速を超えたことによるソニックウェーブが周りを吹き飛ばす。結界をはっていてもいくつかは威力を殺しきれず何人かが吹き飛んだ。

 まぁ死んでいないからいいだろう。


『着弾確認』

「結果は?」

「全滅です」

「フォーラス。第二波の確認。亜音速砲の冷却急げ」


 そんな感じで一日目は後方からの砲撃を行う形で過ぎていく………はずだった。


「ッ!?上空から敵の反応!!」

「敵はまだ後方にいるはずでは!?」

「これは……神々の尖兵!?」

「はぁ!?あいつらはこっちを攻撃しないんじゃなかったのか!?」

「そんなこと知るか!結界を壊されたら終わりだぞ!」


 兵士たちが慌て始める。特に直接戦闘に参加するとこが少ないエルフの慌てようがすごい。しかし、そんな中まず動いたのは獣人族だった。獣人族はその卓越した身体能力を使って城の屋根の上へあがり銃口を向けて発射した。

 上空から迫っていた悪魔のような軍隊の何匹かは死んだがしかし数が多い。目視三百体くらいか。


「よかった。予想の範囲内で」


 僕は落ち着いた声で呟き勇也に合図を送った。



 合図を受けた俺は準備に入る。


「悠子、行くよ」

「うん」

「べリアちゃんは?」

「準備完了。いけるよ」


 俺はエクスカリバーを抜く。悠子もアスクレピオスを地面に突き立てた。べリアちゃんが用意した魔力伝達回路が悠子の魔力で起動する。俺はそれに向かってエクスカリバーを突き立ていた。

 途端に地面に光が走り悠子が敷いた魔力の道に沿ってそれることなく目的の場所に向かう。


「拡散型魔力収縮砲『クロスホーリー』!発射!」


 燈義から教えてもらった原理を基に多数の魔鏡を組み合わせて作ったクロスホーリーは俺の光魔法を上空に向けて発射した。拡散しながら敵を貫いていく光が全て消えたころには上空にはもう何もいなかった。


「ディスベルさん!タマモさん!」

『お疲れ』

『こっちの出番ね』


 ディスベルさんとタマモさんを呼ぶとすぐに返事が返ってきた。そして大量の魔族と獣人族が街中のいたるところから現れる。


『さてと、全員準備はいいな。できてないやつは死ぬぞ』

『大型魔法陣展開確認。みんな、一瞬の勝負よ』


 魔族は全員魔力魂を持ち、鳥型の獣人族がそれを支えている。すぐにエルフの転移魔法陣が彼らを転移した。転移先は、第二波の上空。


『ユウヤ!』

「はい!」


 獣人族に支えられた魔族が魔力魂を落とし、あのセンが使ったジューダスさん考案のスキル保存弾の改造版魔法保存弾で転送魔法を封じ込めた魔導具を壊し転移した瞬間にクロスホーリーが降り注いだ。


 全員が転移してすぐに魔力魂が爆発し、光が破壊の勇者の軍に降り注いだ。かなり大きなきのこ雲が上がりいくつもの光の柱が天空へ向けて上がる。


「はぁ…はぁ…」


 さすがに二回目は疲れるなぁ…でも大道魔術も闇核もまだ使うべきじゃないだろうし…光魔法で防ぎきれるかな。


「どう?燈義」

『おかしい』

「何が?」

『脆過ぎるし兵を無駄死にさせ過ぎてる。一回目はともかく二回目がこんな簡単に成功するなんて…』

「引っかかる?」

『まぁな。死んでも生き返るくらいは予想してたんだがそれでも…』

「でも敵は確認できないんでしょ?」

『確かにできな……って、なんだ!?』

「うわ!?」


 燈義が驚きの声を上げると同時に俺も驚きの声を上げた。俺だけじゃなくて周りも驚きの声を上げている。

 これは…風景が揺らいで…!?


「なにこれ!?」

『分からな……まさか!?』


 燈義がまたしても驚きの声を上げた。そして俺は絶句した。


 戻っている。風景が、破壊された土地が、俺の魔力に至るまですべてが戻っている。


『アースエフェクト!』


 燈義がスキルを発動させるのを聞いた。それと同時に風景の揺れが収まった。

 これはまずい…本当にまずい!


「燈義!」

『時間を戻された!一回目の手はもう通用しないぞ!』

「どうするの!?」

『慌てるな。一回目の手が通用しないのなら対策をしてくる!僕たちはそれに対抗すればいい!全員持ち場にもどれ!管制室!』


 こうして永遠とも呼べる一日が始まり、何か対策を考えないと永遠に続いてしまう現実を目の当たりにして俺は拳を握りしめた。

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