表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔導書製造者  作者: 樹
それぞれの戦い
155/258

砕身

 僕とフォーラスは船の上で戦っている。とはいえ僕の剣は既に破壊され、魔法を駆使しつつタイミングを待つ防戦一方となっているのだが。


「早く投降してくれませんか?」

「お前が投降しろよ」

「そういうプログラムはありませんので」

「プログラム、ね」


 僕が嘲笑うとフォーラスは銃口を向けて引き金を引いた。飛んできた銃弾を防ぐものの防ぎきれず少し後退する。

 その隙をフォーラスは見逃がさなかった。


「では、動けなくしましょうか」


 そう言ってフォーラスは僕の腹を殴った。威力は大したことはない。しかし、フォーラスの拳から電流が流れ僕の体に感電した。

 スタンガンかよ!?


「しばらくは動けないはずです」

「はっ…誰が動けないって…?」


 嘲笑い、立ち上がった僕をみてフォーラスの表情が少し驚きに変わる。とはいえすぐに無表情に戻った。


「魔力で自分の体を操っているのですか。無茶なことを」

「そうでもないさ」


 できるだけ涼しげに答えるとフォーラスは未だ無表情のまま銃口を僕の右足に向けた。


「足がなくなれば立つこともできません」

「そうだな」


 適当に返事を返すと、フォーラスは引き金を引いた。


 しかし銃弾は僕に当たらず、僕が銃弾は僕が転移させた石に当たった。


 スレイク王国で創造主から受け取った、あの光る石だ。


「なん――」


 フォーラスの驚きの声は光にかき消された。思わずフォーラスは目をふさぐ。その隙に僕は後ろに下がった。

 よかった。予想通りで。


「何なんですか、これは!?」

「お前のスキル、利用させてもらった」

「スキルを利用!?過動を!?」


 初めてフォーラスの焦った声を聞いた。過動と言うのは魔導具を使えなくするのではなく魔導具の力を最大限まで引き出すスキルだ。限界を超えた結果魔導具が使えなくなるだけで、うまく調節すれば小さな銃すらもショットガン並みの威力になるらしい。

 そしてその力で強化された魔導具でなければ石は壊せなかった。


 砕けた石から出てきた赤い液体は僕の目の前に浮いている。僕はソレを手ですくい、飲み込んだ。


「これは…!」


 思わず笑みがこぼれる。

 ま、貰えるものは貰っておくか。この力があっても戦争を生きぬけるとは思えないけれど。


「さてと、一応言っておくが投降してくれフォーラス。お前のスキルは重要なんだ」

「力が増したからと言って、勝ったつもりですか?」

「まさか。力が増しただけで勝てるとは思ってない」


 フォーラスは銃口を僕の方に向ける。

 しかし、その銃は跡形もなく消滅した。


「これはあの時の!?」

「あぁ、そうだ」


 僕の手に持っている魔導書、ようやくその力を発揮するに至った。


「古代魔法ですか!」

「あぁ、そうだ」


 広域殲滅魔法、グラウンドデリート。


 僕たちの乗っていた船が消滅した。


『これは…少年、どんどん人間離れしていく』

「なんだ起きていたのか悪神。全く話さないから寝てるのかと思ったぞ」

『戦闘中は無口なのだ。それより、これはさすがにやり過ぎだろう』

「まさか。こう程度でくたばらないよ。あいつは」


 そうだろう?と僕が問いかけるとそれに答えるように銃弾が僕の頬をかすめた。


「古代魔法の知識ならあいつにもあるだろうしな。対策くらいしてくる」

『そのようだ』


 そう言ったきりアペピは黙ってしまった。ジェットエンジンで浮いているフォーラスは銃を捨て、剣を抜いた。両手に持った剣も魔導具のようだ。


「殺します」

「上等」


 額に青筋を浮かべたフォーラスが高速で突っ込んできた。

 高速移動魔法ライトニングステップ。剛力魔法ヒートブレイク。


 ガッ!と僕の拳とフォーラスの剣がぶつかり合う。そして空中で何度かぶつかった後他の船の落ちた。


「あぁぁ!」

「はぁぁ!」


 甲板を削りつつ殴り合う。僕の拳が斬れ血が飛ぶ。それはフォーラスも同じで剣は削られ手から血がにじむ。

 とはいえ接近戦においてはフォーラスが有利か!しかもスキルロードを使う隙すらない!


「複数でかかれば勝てたでしょうに」


 崩れ始めた僕をみてフォーラスは勝ちを確信する。

 あぁ、そうだな。複数で闘うから勝つんだよ。


『完了した』


 アペピの声が聞こえた。僕は全力でその場を離れる。


 そして、追ってこようとしたフォーラスの目の前が爆発した。

 …僕を巻き込んで。


「死ぬかと思った!」


 煙の中から転がるように出てきた僕は呼吸をするために息を吸い込む。荒い息を整えつつ爆心地を見る。


「死んだ…分けないよな。僕が生きてるんだし」


 HPはギリギリ残った。

 風を操って煙を霧散させ、爆心地を見る。そこには黒こげになりつつもなんとか立ち上がろうとするフォーラスがいた。所々から機械が見えている。


「ま、さか、こ、のよう、なわざを、つ、かうとは」

「動けそうにはないな…」

「あな、たもだい、ぶ、つらそう、です、が」

「辛い…だから早く終わらせる」


 ノイズが入っている声をだすフォーラスの頭をガシリと掴む。

 そしてラーのスキルを発動させた。


 『生命流動』。命を創りかえるスキル。


「な、に、を…」

「投降するって選択肢を足しただけだ…後はお前の好きにしろ。どのみちこの戦争はお前らの負け…だ」

「ま、け…」

「あぁ…見ろよ…」


 座り込んだ僕の目の前、転がっているフォーラスの目の前にはヘルヴェチカがあり、その砲撃に耐えつつ空中に浮いている船がある。


「ま、さか…」

「あぁ…救済だ」


 巨大な船、救済は確かにそこにあった。


  

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ