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魔導書製造者  作者: 樹
それぞれの戦い
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天蛇

 目の前の敵を倒しきり、三人を連れて上にあがる。上にもしっかりと砂のゴーレムがいた。面倒だな。こいつら。


『時に少年、この敵は我の知識にもないが、どういった種族なのだ?』

「新種だとよ。でも弱点だらけだから大した脅威じゃない」


 電脳種はリマスターであるキトルに創られたわけだが、最初期のころは死人がでまくったらしい。精密機械みたいな体だから水に弱いし、簡単に壊れる。だから死人が出なくなるまでに五十年くらいかかったらしい。残り五十年で神に頼らずここまでの技術を磨き上げた電脳種は奇跡と言っても過言じゃない。


 むしろ、種の存続自体この世界では奇跡だ。悪神なんて天災レベルの存在がいる世界なのだから。


「しかし、新種を創りだすなんてリマスターみたいなスキルが他にもあるなんてな」

『リマスターと同種のスキルとは限らん』

「リマスターと同種以外にあるのか?」

『彼女のスキルは違うかもしれない』


 彼女…?あぁ、そうか。こいつは熱探査ができるから見えるのか。しかし、女なんだな。このふざけた事態を起こしているの。


「どこにいるんだ?僕の熱探査じゃ見えないんだけど」

『殺気で分かる』

「殺気って…あからさまに向けられた殺気ならともかくこの殺気だらけの状態でよく分かるな」

『伊達に悪神をやっていたわけではない。常に殺気を浴びた生活だったからな』


 そんな生活面倒でしょうがないな。

 ……いや、研究所にいるときは殺気とは違うが悪意は向けられていたな。


「どこにいるんだ?その女は」

『あそこだ』


 そう言ってアペピは勝手にウィンドスピアを飛ばした。僕から三百メートルほど離れた場所にいる誰かに当たってその誰かは姿を現した。


「っ!?なぜバレた!?」

「見つけたぞ」


 そう言って僕はその女との距離を詰めセットウィンドを使った腕で思いっきり殴った。女はくるくると回転しながら吹き飛んで、木に当たって少し血を吐いた。

 この女、魔族か。


「貴様ぁ…!このわたくしを誰だと思って―「知るかそんなもん」


 僕は間髪入れず追撃をして女に話す暇を与えない。女は何とか防御しているもののバリアが破られるのも時間の問題だろう。


「な、めるなぁ!!」


 女は渾身の力を振り絞って砂のゴーレムを召喚し、攻撃してきた。僕は冷静にその数と戦闘パターンを見分け、ゴーレムの魔力核を喰った。


「は…?」


 女から間の抜けた声が聞こえる。それはそうだろう。僕から黒い蛇が出たかと思うと砂のゴーレムに噛みつき、そして兵器であるはずのゴーレムがいきなり崩れ去ったのだから。


「捕食成功」

「な、なによ、それ…」

「スキルロード。ただスキルを抜き取るだけのスキルだ」


 これがスキルへと昇華した天蛇の書のスキルだ。スキルは知性ある生物の証明のようなもので、スキルを抜き取られた砂のゴーレムは知性ある生物から外され、そして存在を保てなくなった。つまり、存在意義がなくなった。

 抜き取ったスキルを使うことはできないし。レベルが下の相手にしか通じない。さすがに禁則事項が多いスキルではあるが、新しく誕生した生物のスキルなど簡単に抜き取れる。


「さてと…色々と聞きたいことはある。答えろ」

「な、なによ」

「まず一つ、お前のスキルはなんだ?新種を創りだすスキルなのか?」

「ち、違うわよ!私のスキルはコレクター!スキルを模倣するスキルよ!」


 スキルの模倣、か。そう言えばこいつは到来に乗っていたんだよな。つまりこのスキルはリマスターの模倣。

 キトルのせいかよ。


「面倒だな…こっちと向こうが繋がったままなのも困るし…殺すか」

「ま、待ちなさいよ!わたくしは魔界の貴族の―」

「あぁ安心しろ。この世界での殺し合いは日常茶飯事だ」


 今まさにお前がやろうとしていただろう?と言うと女は涙を流して命乞いをしてきた。

 汚いな。殺しに来るのなら殺される覚悟ぐらいして来いよ。


「たく…面倒なやつだな…」

「隙ありよ!」


 そう言って女は僕の体に触れ、スキルを発動した。これは…スキルロードか。


「貴様も崩れ去りなさい…!」


 勝ち誇ったように女が笑う。


「なぁ、もういいか?」


 しかし、僕の冷淡な声を聞いて女の顔はみるみる恐怖に歪む。

 あぁ面倒だ。こいつ僕よりレベルがしたのなのかよ。


 スキルに頼って、そしてこの結果か。無様なものだな。


「さてと、祈りは済ませたか?」

「ひ……あ……」

「それじゃ、死ね」


 そう言った瞬間、僕の背後から剣が飛んできて女の腹部に突き刺さった。女は木に縫い付けられ血を吐いた。


「どいてくれ、トーギ」

「ルーか。お前がこいつを殺すのか?」

「あぁ、殺す。あたしが殺すべきなんだ」


 そう言ってルーはしっかりと女と向き合い、女の前に立った。


「十年前はこの逆だったな」

「しゅ、主人にこんな…ことを……」

「あたしはもうお前の物じゃない…!私は、ルー=ヒュー!到来の同志だ!」


 女に刺さっている剣を抜き、今度は女の胸を刺し貫いた。女は断末魔を上げて。粒子となって消えた。

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