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魔導書製造者  作者: 樹
それぞれの戦い
147/258

昇華

 小さいキリキリマイを相手しているものの全く数が減らない。むしろ増えている気がする。結界をはってなんとか防いでいるがものままじゃ確実に死ぬ。

 ていうか霧で見えない!!なにこれすごい霧!!解析のスキルで何とか位置は分かるけど対処しきれないよ!なんでこんなに行く先々で危険な目にあうのかな!?いや多分そうなるように仕組まれてるんだろうけども!


「ルーさん!戦ってください!」


 私が悲鳴に近い声を上げるがルーさんは動かない。震えてしまっていて剣すら持てないでいる。

 見捨てる?絶対にいや!


「どうしようフェルちゃん!このままじゃやられちゃうよ!」

「何としてもルーさんに動いてもらわなくてはいけませんが…仕方がありませんね」


 そう言ってフェルちゃんはルーさんの方へ敵を防ぎつつ下がり、ルーさんを掴んで敵の攻撃が当たる場所に引きずり出した。

 ルーさんは突然のことに驚きつつも反射的に剣を抜き攻撃を防ぐ。


「ちょ!?フェルちゃん!?」

「戦えるじゃないですか」


 フェルちゃんは無造作に手を離した。ルーさんは死の恐怖も重なったのか呼吸が荒いが、フェルちゃんを睨んでいる。しかしフェルちゃんは無表情のまま、いやむしろ少し怒ったように言った。


「あなたがどのような扱いを受け、どのような恐怖を味わったのかは知りませんし興味もありません。しかしこれ以上あなたを守りながら戦うのは不可能です。わたしはあなたよりもミツキさんの命のほうが大切なので見捨てさせていただきますよ」

「お前に…何が分かる…!」

「分からないと申しましたし興味もないと申しました。今のあなたに価値はなく、守るに値しない物です」

「あたしは…!物じゃない!」

「なら戦ってください。ああいう輩を倒すのが到来機関の役目でしょう」


 そう言ってフェルちゃんはルーさんから目をそらし私の隣に並んだ。後ろではルーさんが文句を言いながら立ち上がる。

 よかった立ち上がってくれた。


「…フェルちゃん、ありがとう。これでようやく希望が見えた」

「何か考えが?」

「うん。目的通りに、迎えに行く」


 さっき、崖に行ったときに燈義くんの居場所は何となく分かっていた。だとしたら希望はある。

 どんな時だって助けてくれる。燈義くんは私のヒーローなのだから。


「抜けるよ!」

「はい」

「あぁ!」


 結界を無くし、私たちは一気に駆け抜けた。なるべく敵のいない方向を全力で駆け、途中で襲ってくる攻撃の痛みにも耐えて何とか崖のふちまでついた。


「あら?投身自殺でもするのかしら。だったらそれを置いて行ってほしいんだけど」

「自殺なんてしないよ。負けるのはあなただから」


 そう言って私は崖から飛び降り、フェルちゃんもルーさんの手を掴んで崖から飛び降りた。目の前には、地面。

 でも知ってる。この下に空洞があって、そしてその下に燈義くんがいることを。


 だから、この地面を破壊する。


「ルーさん!フェルちゃん!」

「はい!」

「やってやる…!」


 私たちは三人で地面に攻撃をして、地面は壊れた。そしてそこにそのまま、叫び声をあげて落ちて行った。



 アペピが不思議そうな目で上から落ちてきた三人を見ている。


「これは、あの時の少女たちか」

「まぁな。と言うかルーと合流できたんだ」


 落ちてきた三人をとっさに気絶させてしまったらしいアペピは美月たちの顔を見て「懐かしいな」と言っている。

 攻撃だと思って迎撃しなかったことを褒めればいいのか、気絶させたことを責めればいいのか…まぁいいや。


「おい起きろ。美月」


 美月の頬を叩いてみてもうめくだけで起きそうにない。

 と言うか何で天井破壊して落ちてきたんだこいつら。


「少年、来るぞ」

「敵か?」

「分からん。しかし…日の光と言うものも不快なものだな。少年、悪いが入らせてもらうぞ」


 そう言ってアペピは僕の中に、正確には天蛇の書の中に入ってきた。天蛇の書はアペピの一部なので、アペピは自らを魔法化して血肉を分けた魔導書の中に入ったらしい。

 こうして天蛇の書は一魔導書からスキルへと変化した。もう何でもありだな神様。


『聞えるか、少年』

「聞こえてるよ……複数の魔獣を確認。…妙に統率がとれているな」

『しかし何の姿も見えぬぞ少年』

「これがこっちの世界でのストーカーか…」


 ルーのストーカー事件、まだ解決してなかったのか。

 そんなことを思っていると地面からゴーレムが生えてきた。あぁ、あの新種か。


「それで、これはどういうスキルなんだ?」

『皆目見当もつかぬ。しかし少年、敵はいるぞ』

「見ればわかる…やるか」


 倒れている三人をかばうように僕は前に立ち、この場を支配しているらしいアンチマジックという世界の概念を壊す。


『所詮は概念。神の力には敵わぬ』

「いままで魔法が使えなくて悩んでいたのがバカらしくなるな」


 見事に魔法が使えるようになり、僕は真正面から敵と向き合う。そしてため息をついて天蛇の書を開いた。


「どんなスキルか知らないし分からないが…倒せばいいんだろ倒せば」


 面倒くさいなぁ。

 魔法を発動させ、魔獣を跡形もなく消し飛ばす。そして上空に三人を連れて崖から脱出した。

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