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魔導書製造者  作者: 樹
それぞれの戦い
145/258

採集

 道なき道を進み、私とフェルちゃんはため息をつく。


 こっちで正解なんだよね!?進行方向間違ってないよね!?なんか不安になってきたんだけど!!


「ここまでエンカウントなし。素晴らしですね」

「でも進んでるのかわかんないよ…」

「進んでいますよ。もうすぐ部隊の通信が途絶えた場所のはずです」

「まぁ、確かに少し先に崖はあるけど…」


 そこに落ちたのだろうか。でもただ落ちただけなら魔法でどうにでもなるはずなのに。あの崖の下には何があるの。


「あ、人!」


 人の形をしてよろよろと歩いている何かを見つけて走り出そうとした私をフェルちゃんが止める。


「警戒しなくてはいけません。モンスターという可能性があります」


 そうだった。ここは魔獣の巣窟だった。

 私たちはこっそりと近づく。どう見ても人間だけど警戒するに越したことはない。そして―


「ルーさん!?」

「ですね」


 ボロボロになったルーさんがそこにいた。無理やり崖から上がってきたのか手が血だらけだ。


「大丈夫ですか!?」


 私たちが駆け寄るとルーさんは安心したように大きくため息をついた。


「ミ、ミツキ…よかった。誰かいてくれて…」

「今回復します!」


 急いで回復魔法をかける。とはいえ初級魔法。回復魔法をかけ続けないと完全回復ができない。でもこのままじゃ魔獣に囲まれるかもしれない。


「転送魔法は…三人も抱えられないよ!」


 疲れすぎた。MPという概念が存在してくれればよかったのに。体力回復も個人の資質だしなぁ…


「もう大丈夫だ…」

「でもまだ三分の一が回復できていません!」

「大丈夫だ。ここらの魔獣ならば三分の二もHPがあれば十分に生き残れる。むしろここから離れなくちゃ…!」

「どうしたんですか?」


 ルーさんの様子がおかしい。ルーさんは立ち上がり歩き出す。

 まぁ私のスキルがあればエンカウントせずに戻ることができるけど…でも燈義くんもこの下にいるんだよね…どうしたら…


「…大丈夫だよ。一人で帰れる」

「…いえ、送り届けます」

「それは」

「大丈夫です。また来れるし、燈義くんも大丈夫だから」


 そう思いたいだけかもしれないけど、でも目の前でこれだけ傷ついている人を放っておくのはダメなことだよね。


「それでは行きましょうか」

「…感謝する」


 そう言ってルーさんは笑った。…って、これは…!


「ルーさん走って!」

「へ!?」

「早く!来てる!」


 私はルーさんの手を握ったまま茂みに入る。そのまま到来のほうに向けて走り出した。

 来てる!二体も来てる!!


「そんな…もう…!!」

「何か思い当たることが?」

「それよりこの魔獣…追ってきてる!」


 相手は小さいのと大きいの。大きいほうはともなく小さいほうは速い。このまま茂みの中を走っているのは危険だよねやっぱり!


「もうすぐ休憩地点があります!そこで迎え撃ちます!」

「了解しました」

「……」


 フェルちゃんは返事をしてくれたがルーさんの返事がない。振り返ってみるとルーさんが青い顔をしている。

 本当に何があったの!?


「あった!」


 休憩地点であった開けた場所に着き敵を待つ。しばらくして木々がなぎ倒されるとともに大きなモンスター、グロウグロウが出てきた。


「って!グロウグロウはこんな場所にいないしこんなに大きくないよね!?」

「小さいほうは…キリキリマイ?」

「速い…!」


 小さくて速いキリキリマイが襲ってきた。でも目で追えない速さじゃない。それに私のスキルがあれば!


「右斜め前方から十一時方向!距離十メートル」

「はい」


 フェルちゃんは冷静に私の言った場所に望破帝を使って陥没させた。ブチュッという音がして潰れた。

 き、気持ち悪い…!


「え…?」


 なに、これ…?まさかこんなことがあり得るの!?おかしくない!?


「どうしたんですか?」

「いる」

「え?」

「グロウグロウの中にまだ沢山いる!」


 私の言葉通りにわらわらと小さいキリキリマイが大量に出てきた。

 これは…十体以上いるんだけど…!?さすがに対処できないよ!


「ルーさん戦って!このままじゃ…!」

「む、無理だ!」

「え!?」

「いるんだ!あいつが!モンスターコレクターが!」


 モンスターコレクター!?誰それ!?


「ふふふ…気づいたのね」


 不意に上空から声がした。上を見てみると緑色の派手なドレスを着てじゃらじゃらと宝石やアクセサリーとつけた魔族らしき女性が見下ろしている。

 この人が、モンスターコレクター?この人が仕掛けてきたの!?


「敵ですか」


 そう言ってフェルちゃんは望破帝を使い女性を潰そうとするが女性の上空に鷲のような魔獣ディが現れて代わりに潰れた。


「無駄よ。私を傷つけることはできないわ」

「誰ですか…!一体何の用ですか!」

「返してもらいに来たのよ。私のコレクションを」


 そう言って女性はルーさんを指さした。


「帰ってらっしゃい。今ならむち打ちで勘弁してあげる」

「ひ…!」


 ルーさんが涙を浮かべて後ずさる。いつも強気なルーさんが怖がっていることに驚きだが、それ以上に女性の言葉に驚いた。


「ルーさんは魔獣じゃありません!」

「確かに魔獣ではないわね。でもハーフ。しかも人間と獣人族のハーフよ?そこらの魔獣よりも貴重だわ」

「だからってこんな…!」


 女性は反論する私を睨む。


「黙りなさい人間。わたくしはフトールズ=バルト。魔王様の側近であるフトールズ=フーメイの娘ですわよ?」

「だからってルーさんを者扱いしていい理由にはならないよ!」


 もう怒った!絶対この人倒してやる!

 私とフェルちゃんは女性を睨み、戦闘を開始した。

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