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魔導書製造者  作者: 樹
エルフの戦争
14/258

説得

メリークリスマスです。

 ネイスの家に戻り、自分の部屋に寝転がる。

 本当に不味いことになった。確かにアレには勝てない。あんなのに立ち向かうのは勇者の役目だろう。


「勇者でも無理だろうな……」


 戦えば死ぬ。それを直感した。直観させられた。


「あの、入っていい?」

「土屋か。いいぞ」


 土屋が入ってきた。そしてネイスも入ってくる。


「どうした?」

「うん。昼のアレについてネイスちゃんが」

「お、しえ、て」

「……何を」

「ア、レの、こと」

「僕もなんだか知らねぇよ。そもそも異世界から来た奴が知ってるわけ―――」

「う、そ」


 遮られて断言された。あの呟きを聞かれたのだろうが教えるわけにはいかない。希望を持たせたら戦いに行くだろう。


「ネイス、アレは無理だ。諦めろ」

「む、り」

「諦めろ」

「い、や!」

「感情論でどうにかなる相手じゃないぞ」

「で、もやる!!」


 ダメだ。やる気満々だ。土屋にも説得してもらうように頼んで――


『わ・た・し・む・り』


 口パクでそういっていた。


「チッ」


 丸投げしやがった。使えない奴め。

 でも僕にはダメとしか言えないぞ。


「ダメだ」

「け、ち!」

「うっせ」


 バカが増えた。でもこればかりは譲れないし、そもそも国単位で解決することだろ。


「お前からもなんか言えよトーレイ」


 扉の陰に隠れているトーレイに声をかける。トーレイはため息をつきつつ僕の部屋に入ってきた。


「バラすか?普通」

「手伝う、とは言った。だが説得自体はお前がやってくれ」

「……仕方がない。ネイス」

「……な、に?」

「諦めなさい」


 トーレイとネイスは互いに視線をぶつけ、ネイスのほうが視線を逸らした。


「ネイス、お前も分かっているだろう」

「……で、も!」

「ネイス!」

「………ッ!」


 ネイスは走って出て行ってしまった。


「追いかけろ土屋。あのままじゃ森に行きかねない」

「えっ!?」

「早くしろ」

「うっうん!」


 僕が追いかけても逆効果だろう。それにここにいることに意味がある。土屋も部屋を出て行った。残ったのは微妙な感じになったトーレイとめんどくさそうな僕。


「……愚痴っていいか?」

「独り言は自由だ。何も反応してやらないがな」


 トーレイは俯き、ぽつぽつと呟きだした。


「ネイスの両親は親友なんだ………死んだと聞いたときは耳を疑った……ネイスの父親はわたしより強いんだ………ネイスを引き取ったときはきちんと育てようと……父親の代わりになろうとしたのに!」


 ……おい、なんかヒートアップしてないか?大丈夫かこいつ。


「わたしだって頑張ったんだ!わたしも泣きたいんだ!というかネイスよりもわたしのほうが長く付き合ってんだよ!」

「おい……キャラ崩壊してんぞ……」

「あー!もー!」


 トーレイが壊れた! 


「怒る!」


 トーレイは髪の毛をぐしゃぐしゃとかき乱し、部屋から走って出て行った。


「……はは」


 思わず笑いがこみあげてしまう。人の心に触れて、笑ってしまった。


「見に行ってみるか……」


 若干楽しみに思いながら部屋を出る。さて、どっちが説得されるのやら。



 集落の入り口付近でエルフが騒いでいた。


「あそこか」


 その人だかりというかエルフだかりに近づいてみると、案の定エルフの男性に抑えつけられているネイスがいた。


「土屋」

「あっ!燈義くん!」


 エルフだかりの中に土屋を見つけ声をかけると僕の前に駆け寄って来る。


「森には入ってないようだな」

「うん。みんなが抑えてくれたから」


 どうやらトーレイは来ていないようだ。何してるんだあいつは。


「さて、どうしたものか……」


 我が儘いう子供を叱るのは親の役目だろうに。トーレイは何している――


「ネイス!」


 背後からトーレイの大声が聞こえた。全員が一斉にそちらを見る。トーレイは剣を二本もってそこに立っていた。


「どいてくれるかな?」


 トーレイの言葉にネイスを抑えていたエルフはネイスを離した。トーレイはネイスの前まで歩き、ネイスの前に剣を一本落とした。


「決闘だ。悪神を倒したいならわたしを超えて見せろ」

「「「えぇぇぇぇぇ!?」」」


 その場にいる全員が、僕を除いた全員が驚きの声を上げた。ネイスは剣を拾ってトーレイをまっすぐ見る。


「の、ぞむ、と、ころ!」


 ここに親子対決が決まった。

親子対決です。燃えますね。自分、燃え散りそうです。


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