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魔導書製造者  作者: 樹
それぞれの戦い
128/258

共同

 敵となったギアトさんを前にして俺は一瞬怒りに囚われたもののすぐに冷静になりギアトさんの攻撃を防ぐ。ギアトさんの攻撃は他の攻撃とは違いかなり重く、おそらくレベルの差を技術で補っているのだろう。


「…ふぅ」


 俺は一つ息をついてエクスカリバーをしっかりと構える。

 ダメだ。こんなギアトさんはべリアちゃんに見せられないし、俺自身も見たくない。それに本人も望まないに違いない。


「行きます」


 ギアトさんに小さく宣言し、俺は思いっきり大地を蹴る。そしてエクスカリバーがギアトさんの体を貫いた。いくら技術がすごくても俺だって必死で修行して強くなっている。ギアトさんは成すすべなく消えた…


「…ですよね」


 光となったギアトさんを見て俺はため息をつく。

 やっぱりすごいなぁ。あの人は。

 俺はエクスカリバーを構えなおして、もう一度地面を蹴った。そして目の前の敵が風圧で吹き飛ぶ。


「はぁ!?」


 近くにいたリュートさんが驚きの声を上げる。

 ありがとうございます。ギアトさん。


「おま!?なんだそれ!?」

「ギアトさんのスキル、過速ですよ」

「はぁ!?他人のスキルを使えるのか!?」

「違いますよ。ギアトさんが譲ってくれたんです」


 光となって消えたギアトさんの魂は俺のエクスカリバーと同調して俺にスキルが宿った。

 浅守が魔法を集めるのなら俺はスキルを、仲間の希望を集めるんだ。


「リュートさん!援護をよろしくお願いします!」

「無論だ!」


 俺は再び大地を蹴る。



 戦場、オレは戦局を見極めつつもう一つの作戦を進行させていく。

 正直、今でもこのプランを否定することばかり考えている。死ぬ覚悟は決めているものの死なせる覚悟はない。


『ディスベルさん』

「べリアか」


 通信用の水晶からべリアの声が聞こえる。べリアにはジューダスの捜索をしてもらっている。べリアはデュランダルの守護者なのでデュランダルが解放されている今、彼女の感覚も研ぎ澄まされている。捜索にはもってこいだ。


「何かあったのか?」

『変なもの、見つけたんだけど』

「変なもの?」

『うん。映像送るね』


 送られてきた映像を見てオレは考える。映像に映っているのはいくつかの資料。しかも魔王についての資料だ。

 なんだ?アスルートを魔王にするつもりがなかったのになぜこんなことをした?これに何の意味がある?


『あ…』

「どうした?」


 べリアが何か見つけたみたいだ。そしてその資料をオレに見せる。


「ッ!?」


 オレはそれを見て息を詰まらせた。

 あの野郎、何してやがる!?


「ジューダスを早く見つけろ!」

『分かってるわよ!』


 ついつい乱暴な口調になってしまい、べリアも焦ったように通信を切る。

 最悪だ!なんでこんなことに気が付かなかった!?


「フォール!」

「はいはーい。呼ばれて飛び出てフォールくんだよー」


 フォールの名前を呼ぶとやる気の無さそうなフォールがふわふわと空から降りてきた。

 イラつく!が、今は気にしてる場合じゃない!


「おいフォール!闇核ってのはこの世界のものか!?」

「…どういう意味かな?」

「だから!この世界の物かと聞いてるんだ!」


 オレが怒鳴ると、フォールはあっさり否定した。


「違うよ。この世界の物じゃない。前の世界の物だ」

「じゃぁ、闇核は世界のイレギュラーなんだな!?」

「まぁそう言えるね。どうかしたの?」

「これを見ろ!」


 送られてきた資料をフォールに見せる。フォールは目を輝かせて「凄いね!」と息を荒くした。


「まさかこんな方法があるなんて!いやスキルのおかげだとしてもこれは凄い!」

「感動してないで答えろ!ここに書かれていることはできることなのか!?」

「できる。かなりの歳月と犠牲を払えば可能だよ」


 フォールの言葉に確信する。

 そうか。だからジューダスは魔王を!!


「相談しろよクソッタレ!」


 おかげでこっちのプランが成功しそうじゃないか!せっかく否定しかけてたのにここまでされたら実行させるしかなくなるじゃねぇか!


 というかユウコ、全部知ってやがったな!?


「あークソ!さすがは俺の嫁だと褒めてやりたいが素直に感謝できねぇ!」

「まぁ落ち着きなよ。うまくいけば犠牲は少なくて済むんだからさ」

「うまくいかなけりゃ死ぬだろうが!」

「ま、そん時はそん時だよ」


 そう言ってフォールはまた空に消えた。

 何がそん時はそん時だ!そんな言葉で片づけられるほど甘い事態じゃないだろ!


「あ゛ー!!」


 イラつきがピークに達し、オレは奇声を上げる。

 上等だやってやるよクソッタレ!



 何かディスベルさんがイライラしているらしい。とリュートさんから聞こえた。旗色が悪いのだろうか。

 いや、そんなことを考えるな。今は目の前のことに集中するんだ。


「はぁ!」


 敵は全く後退する気配を見せない。日はもう傾きはじめ、兵士たちにも疲労の色が濃い。

 俺もさすがに疲れた…でも下がるわけには!


「って、あれ?」


 気合を入れて敵に向き直るとさっきまで退く気配すら見せなかった敵が我先にと退いていく。

 何が起きた?


「夜は冥府とのつながりが強くなる。連中は引き戻されないように逃げたんだ」

「そうですか……疲れたー!」


 そう言って俺は地面に寝転がる。今まで吐けなかった言葉を小さな声で吐く。

 あぁ、疲れた。眠い。


 勝っているのか負けているのか、そんなことも分からない泥沼のような戦の一日目はこうして終わった。

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