義娘
神殿で一通り人体の説明をさせられ、戻ってきたときには日が完全に落ちていた。
「お、かえ、り」
「あぁ………」
僕と土屋はトーレイの家で泊まることになった。何でもトーレイはこの集落で一番腕がたつ戦士なんだとか。警戒しすぎだ。
僕は自分の部屋に入り、敷かれている布団の上に寝転がった。
今日は沢山のことがありすぎた。異世界召喚に巻き込まれ、森に出されたと思ったらエルフに拾われてチート能力が判明して…
「ステータス……」
トーギ=アサカミ
男 17歳 Lv 18
HP 450/600
〈スキル〉
魔導書館
レベルが上がっている。HPは十二時丁度に全回復するらしい。
モンスターの攻撃を受けた時、痛みは確かにあった。だがそこまで痛くはなかった。無視していいレベルの痛覚。召喚されたときに補正でもかけられたのだろうか。
「……何かを傷つけるという行為まで軽くなってしまいそうだ」
このレベルは今日倒したモンスターの血肉だ。無論この世界の住人はそんなこと考えてない。むしろ危ないのは異世界から来た僕らだ。
もしかしたら勇者四人は調子に乗ってモンスターを殺して回っているかもしれない。そうなったらもうダメだ。人殺しと同じだ。
「殺傷行為を甘く見て、いつか殺人鬼に成り果てる……」
理解しなくてはいけない。僕はモンスターを殺した。そして必要以上に殺してはいけないということを…
思考の中に沈んでいると、部屋がノックされた。土屋か?
「どうぞ」
「失礼する」
意外なことに入ってきたのはトーレイだった。トーレイは僕の前に座った。
「何の用だ?」
「ネイスのことでな」
ネイス?あいつがどうかしたのか?
「ネイスは森で両親を亡くしていてな。旧知の仲であったわたしが引き取ったのだが、元々人見知りでわたしと両親ぐらいにしか話さなかった子でな。両親の死がショックでしばらく誰とも話さなかったために言葉がうまくでなくなってしまったんだ」
「そういえばうまく喋れてなかったな」
「あぁ。それに、ネイスは今でも両親の仇を取るつもりなんだ」
「だから森に?」
「あぁ」
それで返り討ちにあっちゃ世話ないな。
「で、敵討ちを手伝えと?」
「いや、諦めさせてくれ」
「何?」
諦めさせてくれ?
「そんなに強いのか?」
「勝てないのだ。絶対に。頼む!」
トーレイは僕に向かって頭を下げる。エルフであるトーレイが人間に頭を下げるのは相当のことだ。
「手伝ってはやる」
「本当か!?」
「だが見返りももらうぞ」
「金か!?」
「なめんな」
金なんざモンスター倒せばとれるだろ。保護されている以上そんなものは二の次だ。
「本だ。この世界の知識がほしい」
「知識?」
「なにせ異世界に来て一日目で急に森に飛ばされたからな。経済や種族間の対立、魔族についてや魔法について知りたい」
「分かった。わたしでできる限りの本を集めよう」
「よし。交渉成立だ」
条件が飲めるんなら断る理由はない。
詳しいことは明日話す。とトーレイは立ち上がった。
「そういえば、湯あみはしないのか?」
「湯あみなんてできるのか?」
「大衆浴場ならあるぞ。ミツキとネイスも行っている」
ネイスって女だったのか。短髪で男っぽいから気づかなかった。
まぁ風呂にはいれるなら行ってみるか。
「って、着替えはどうすんだよ」
「?洗って乾かせばまた着れるだろ?」
そうれもそうか。魔法って便利だな。
浴場については今は書く予定がありません。
すいません。