画策
昨日投稿できなかったことを、お詫びします。
悠子が捕まり城の中が何かと騒がしくなっていく中俺はジューダスさんを探すために魔界を駆け回っていた。広大な魔界とはいえ隠れる場所が多いというわけではない。むしろ人の目があり、アスルートさんとディスベルさんが協力してジューダスさんを探しているという状況に領民の方々も協力してくれているようだ。
だから探すべき場所は絞られる。そう。例えば魔獣が大量発生する森の中などに。
「ここがフルエンドの森か…」
太陽が出ているというのに日が差していないには結界がはられており奥のほうからは魔獣の鳴き声が絶えず聞こえてくる。
平均レベルは50らしいから死ぬことはないだろうけど…遭難しないようにしなきゃ。
俺は一つ頷いて森の中に入った。
地下牢で取り調べもなくボーとしている悠子は閉じ込められている囚人の声を聞いて顔をしかめていた。
「やっほ~」
「…ようこそ。何のお構いもできませんけど」
「あれ?驚かないね」
「予想できてましたから」
目の前に突然現れたフォールは悠子の前に座った。
「懐かしいなぁ」
「先輩って呼んでげましょうか?」
「え?マジで!?呼んでくれる!?」
嬉しそうにしているフォールを見て少し笑いつつ悠子はフォールを見る。
つかみどころのない人やけど…これでも百年前の魔王様なんよね。だったら世界に振り回されてる今は仲間でいいんやろうか。
「それで先輩、何の用ですか?」
「ほら、ユウヤはまだ弱いから相手にならないじゃん?だから君に会いに来た」
「先輩を満足させられるとは思いませんけど」
「そんなことないさ。だって君、面白いことをしようとしてる」
そう言ってフォールはとても嬉しそうににやりと笑った。
「君、なーにたくらんでるの?」
「…お願いを聞いてくれるんなら教えますよ」
「ボクにできる範囲内なら」
フォールの即答に安心し、悠子は全てを話した。
そして話を聞き終わったフォールからは笑顔はなく、頬が引きつっていた。
「…君、狂ってるよ」
フォールをもってしても狂っているという悠子の話に、悠子自身も思わず苦笑した。
森の中で魔獣を倒し、エクスカリバーとデュランダルに付着した血をふきつつ俺は周りを見回す。
こんなところにいたらすぐに死んじゃうと思ったけど…ハデスの契約者ならそうでもないかな。
「っと」
地面の下から殺気を感じ、デュランダルを地面に突き刺す。するりと地面に突き刺さったデュランダルは地面の下に潜むモグラのような魔獣、ジルサの頭に突き刺さりジルサは絶命した。
「きりがない…」
俺ははつぶやき道なき道をすすむ。食人植物や土の塊が意志を持ち襲ってきたりしたものの順調に進めているはずだ。
「当たり前だけど…広いな」
手あたり次第探そうにも広すぎる。いくら人員を割いて手分けして探していてもかなりの時間がかかる。
…あれ?そんなことディスベルさんが気が付かないわけないよね…
「何考えてる…?」
ディスベルさんじゃないから何を考えているのか分かるはずはない。でも何か嫌な予感がする。何か俺の根本的なことにかかわってくるような、ひどく嫌な予感がする。
地下牢の最下層。かつて最悪の罪人として閉じ込められていた部屋にフォールはいた。
懐かしさとか思い入れとかはないけど…まさかこんなことで使うことになるなんて。まぁここが条件的に一番いいんだけど。
「さてと、もう出てきてくれてもいいんじゃない?」
「…なんでオレを呼んだ?」
「君が必要不可欠だから」
部屋に入ってきたのはディスベルだった。警護もつけず一人で来ている。
こんな計画に加わってくれるとは思わないけど…まぁ魔王の血筋ならわからないかもしれないけど。
「それで、ここで何をするつもりだ」
「ちゃんと説明するから黙って」
ずしん、と言葉が質量をもったようにディスベルにのしかかる。ディスベルは少しため息をつきながら言った。
「黙れるか」
言葉を発した途端に重圧はなくなった。そしてフォールがすこし体勢を崩す。
「へぇ、跳ね返すんだ」
「跳ね返す?」
「…気づいてないならそれでいいや」
フォールは意味ありげに笑う。ディスベルはその理由を考えようとしたがやめた。
こいつの考えなんて分かるはずないか。
「それで、オレは何をすればいい」
「おや、ここに呼ばれた理由を聞かないのかい?」
「お前もオレも行き着く結果は同じだろ」
「いいね。そういうの」
そう言ってフォールは「でもまぁ」と続ける。
「言っておくけど、これを考えたのは君の愛するユウコちゃんだからね」
「だったらなおさら問題ない」
ディスベルはそう言い、フォールの話を聞いて愕然とした。
マジか…!と叫びたい気持ちを押さえ自分にできることを考える。
こいつに従うしかないんだろうが…だったらなんでオレは呼ばれたんだ。
「君には重要な役割を果たしてもらう。この作戦を成功させるためのキーだよ」
「…光栄だ」
大丈夫だ。うん。大丈夫だ。
だってオレには、最強の味方達が、世界を救うために呼ばれた勇者がいる。だったらその作戦、乗ってやろうじゃないか。