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魔導書製造者  作者: 樹
それぞれの戦い
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未完

 変化する洞窟に迷い込み、二時間ほどさまよって進んでいるのか下がっているのか分からない状況の中僕たちは道を進む。

 一番心配していた食料は所々ある薬草などでしのげそうだった。


「それで、これはどうすればゴールなんだろうな」

「それは分からないな。そもそも課題がない」

「変化も不規則で法則性はないし…面倒だな」


 せめて問題があればそれを目的に進めばいいのだが…問題提起ぐらいしてくれればいいのに。


「しかし右も左も分からずに進むというのは精神的につらいものだな」

「そうだな。一応違うところとか探してるんだが壁の傷の位置まで一致している。壁が動いているとしか考えられないし…フォン、天碌山のこういう洞窟の話を聞いてことがないか?」

「ない。そう言うのとは縁遠くてね…」

「そうか…ならいい」


 縁遠いか…

 僕は歩きながら何かないかと探るものの特に何もない。


「壁を壊してみるか…」

「そんなことしていいのか?」

「するしかないだろ」


 僕は試しにグラウンドデリートを使ってみるものの壁には傷一つつかなかった。


「これは…」

「傷一つつかない壁とは…これって結構やばいんじゃない?」

「いや、むしろ傷がついてないおかげで糸口くらいは見えたかもしれない」


 そう言って僕はため息をつく。

 この手は奥の手、しかもこの魔法自分に向かって発動すると解けない可能性があるっていうか見たくないものを見そうな気がして…まぁいざとなればやるしかないんだよな。

 それに、まだ信用できないことがあるし。


「…先に進むか」

「糸口は試さなくていいのか?」

「一応見ておきたいんだ」


 そう言って僕は先に行き、その後ろをフォンがついて来る。そしてさらに一時間ほどたったところで僕はため息をつきつつフォンを見た。


「おいフォン」

「なんだトーギ」

「そういえばお前、いつもかけてる王家の十字架はどうした?」

「あぁ、それならおいてきたけど?」

「…そうか、ならいい。お前は消えろ」


 そう言ってフォンにウィンドストライクを放つ。丁度フォンが避けられるかどうかギリギリの角度で。

 そしてフォンは避けようともせず無表情でウィンドストライクに当たり、消滅した。


「こんなことだと思ったよ…」


 フォンなんて最初っからいなかった、というわけではないのだろうけど。少なくとも僕は一人で行動しておりフォンは幻想だったということだ。

 そしてフォンが消滅し、僕の目の前にまっすぐな道ができた。その先を進むと広く白い空間に出られた。地面はないのに僕は立っており、そしてそこから変化せず、まるでバグを起こしたゲーム画面のように白いままだった。


「入口もないが地面はある…ここならいいか」


 僕は地面に寝転がり魔法を唱える。


「ルーズマジック」


 僕はある魔法に遅延魔法をかける。

 これで準備万端だ。


「スリープ」


 自分自身に睡眠魔法をかけ、眠りに落ちる。そしてルーズマジックの効果が切れ更なる魔法が発動する。しかしそれは僕が感知することはなかった。



 ―――――――気が付くと僕は知らない場所に、しかもさっきの白い空間ではなくしっかりと地面がある場所に寝転がっていた。


「やぁ、おはよう」

「お前のほうが先だったのか。キトル」

「まぁね。さっき起きたばかりだけど」


 そう言ってキトルはあくびをした。

 つまりはさっきの洞窟も何もかもが夢だったわけだ。そして僕は夢の中で夢を、ディストピアで夢を見たおかげで現実に戻ってこれた。

 夢で夢を相殺したのだ。


「一応聞くけど、トーギくんもあの洞窟に?」

「あぁ。お前もか?」

「そうだよ。どうやら全員が同じ夢を見てるらしいね」


 そう考えるのが妥当だろう。

 僕は未だに寝ているフォンとルーを見る。二人ともこれと言った表情もなく寝ているだけだ。


「起こすか」

「よろしく」


 僕は二人にディストピアを使おうとして、魔法が使えないことに気が付いた。


 ………まさか。


「キトル」

「なんだい?」

「一発殴られろ」


 そう言うとキトルはにやりと笑い、姿を変えた。


「よく気が付きましたね」

「…どうも」


 そしてそいつは現れた。この夢を仕組んだ奴で、エジプト神話の神。一目でわかるその姿で現れた。


 太陽神ラーが、その神々しい姿を現した。



 ラーは鳥の姿をしている。それはこの世界でも変わらないようで光を放ちつつ僕の前にラーは立っていた。


「夢を夢で相殺した瞬間にまた夢に引きずり込まれたのか…」


 さすが抜かりないというか…神ってなんでこう想定外のことするのだろうか。


「それで、噂に名高い太陽神様が一体何の用で?」

「それはあなたがよく知っているでしょう?この世界のこと、私達がなぜ創られたのかも」

「…修行でもつけてくれるんですか?」

「いいえ。私は使者。創造主の使者にすぎません」


 ラーを使者にするって…まぁあいつならできるんだろうな。


「それで、何をくれるんですか?」

「これを」


 そして僕の手元に落ちてきたのは一冊の本。しかしその本は鎖で厳重に封印されておりどうやっても本を開くことができない。


「それを開きなさい」


 そう言ってラーは本の中に吸い込まれ、消えた。

 成程、この本が開ければラーの力が使えるようになるのか。すごい本ではあるがまたどうやって開けるのか指示がないのだが…


「まぁいいや。あいつに聞こう」


 幸い百年前の伝説の存在がいるわけだし、そいつに聞けばいいや。


 天井が消え、太陽が現れる。その太陽に吸い込まれるように僕は空中にあがっていき、やがて太陽に吸い込まれた。

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