変化
フォンと言う爆弾を連れている。最初はどうなることかと思ったがキトルのコミュニケーション能力は高く今はフォンとキトルが楽しそうに話している。とりあえず懸念すべきことはフォンではなく、それをイラつきながら見ているルーだろう。
「おいルー、分かってると思うが」
「…大丈夫だ」
大丈夫に見えない。なにせ殺気が出まくっているのだから。
でもいくらイラついているからって斬りかかったりだとかはいくらなんでもしないだろう。そんなことしたらエルフにまで狙われることになる。
「ねぇトーギくん、霧が濃くなってないかい?」
「…そうだな。確かに濃くなっている」
「これ以上先に進むには危険かなぁ。さっきの場所に戻って霧が晴れるまで待とうか」
「それがいいかもな」
レーダーで山の地形やモンスターが分かるとしても全方向に対応しているわけではない。ルーがさっき襲われていたし、この濃霧で魔獣がいる山の中を進むのは無謀だろう。
そう思って引き返そうとしたとき、僕たちが進んでいた道の先から、霧が迫った来た。
「走れ!」
フォンが叫び全員が走り出す。霧は速いものの結構距離があるので逃げきれないわけではない。
「というかあれは何だ!この山特有の霧か!?」
「多分キリキリマイだと思う」
「あー!なるほどね!」
キリキリマイと言うのは霧に包まれたカタツムリのような魔獣だ。体格は成人男性と同じくらいで体から霧に似た気体を発生させて襲ってくる。しかも肉食。霧自体に毒などはないもののあれに飲まれたら厄介だ。
「って!?」
焦って走るあまり後列で走っていた一人が転んだ。たちまち濃霧に飲む込まれゴギという機械が噛み砕かれる音がした。
電脳種の体すら噛み砕くのかよ。というかキリキリマイってもっと頂上付近にいるはずじゃなかったのか。
「どうするキトル!」
「大丈夫だ!彼の魔力核は確保した!再生可能だよ!」
「そうかそれはよかったな!でもあの霧はどうにかできないのか!?」
風で吹き飛ばしてもすぐにまた霧をまとわれてしまう。そんなことしている暇はないし、あそこまで濃い霧ではレーダーでとらえることも難しい。
「山道で遭遇したくはなかったね!」
「でもしてしまったものは仕方がないだろ」
僕は振り向きつつエアステップを使って足場を固めウィンドスピアを何本か放つ。ウィンドスピアは霧を巻き込みつつ進みキリキリマイには当たらなかったもののどこにいるかぐらいは分かった。
「言っとくけどキリキリマイは防御力が高いからね!?遠距離魔法にしてもかなりの威力でやらなきゃ無理だよ!」
「知ってる」
僕は地面におりつつ地面に複数魔法をセットする。地雷みたいなものだがもちろんこれで倒せるとは思ってない。
そしてその上にキリキリマイが乗り地面が爆発する。しかしもちろん止まらず進もうとしている。
「かかった」
しかし複数の爆発の衝撃で地面がへこみキリキリマイが落とし穴に落ちた。もちろん上がってくる前にグラビティグラウンド使い押し潰した。
なんとなったか。霧も止まってるし。
「生命反応なし。ご苦労様」
「お前も手伝えよ」
「君を信頼しているんだよ」
キラキラとしたオーラーを出して僕の肩に手を置くキトルを睨みつつため息をつく。
そういえばルーが大人しいな。
「ルーさん、大丈夫ですか?」
「……まぁ、大丈夫だ」
「ルー、何かあったのか?」
「………昔、な」
嫌なことを思い出したのかルーは顔をしかめた。
「ところでトーギ」
「なんだフォン」
「ここ、どこだ」
……あれ?ここどこだ?
気が付けば知らない場所にいた。目の前に洞窟があり後ろには密林が広がっている。
「……転送魔法なんて使ってないよね」
「しかも僕たち以外はここにいないね」
いるのは僕とキトル、ルー、フォンだ。他の奴らはここにいない。
「まぁ他のみんなには何かあった場合は船に戻るように言っておいたから大丈夫だと思うけど」
「むしろ大丈夫じゃないのは我々のほうでは?」
フォンの言葉に僕たちはそろって洞窟を見る。暗くて奥が見えない洞窟は巨大な何かの口に見えた。
「ここに入るしかないんだろ。だったらアタシは行くぞ」
「あ、ルーさん一人で行くのは!」
そう言ってルーとキトルが入って行ってしまった。僕とフォンも少し遅れて洞窟に入る。
洞窟の中は暗く何も見えない。今は光をともしているからいいものの魔力が永遠にあるわけではないのであまり強力な光にはできない。
というか、なんで先に行った二人がいないんだよ。
「とうとうキトルやルーともはぐれたな」
「そうだな…転送魔法なんて使った形跡はなかったけど」
二人ともはぐれてしまい僕とフォンは洞窟の中を進む。どうもあの遺跡と同じ感じがするんだよな。あの時みたいなルールがあるんじゃないだろうか。
「行き止まりか」
「そうだな」
しばらく行くと行き止まりになっていた。僕たちが引き返すとそこに二手に分かれた道があった。さっきはこんな道はなかったぞ。
「あれ?道を間違えたか?」
「いやそんなことはない。今までの道は見覚えがあった」
僕が風景を見間違えることはない。ならばこれはどういうことなのだろうか。
…これがこの洞窟のルールか?
「とりあえず左に行ってみるか」
「そうだな」
二手に分かれるわけにもいかず僕たちは適当に左に進む。そのまま先に進むとまた行き止まりで戻ると道は一つになっていた。
「これは、あれか」
「多分そうだな」
変化する洞窟。あの時の遺跡よりも面倒じゃないか…