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魔導書製造者  作者: 樹
エルフの戦争
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異国

 神殿を出た僕たちはネイスと合流し、草原に連れていかれた。


「ここには比較的弱いモンスターがいる。戦闘してみろ」

「今の僕には熱探査しか使えないんだけど」

「なんのためにネイスがいると思っている」


 ネイスはそんなに強いのか。なら僕たちに助けられるようなことになるなよ。


「武器を貸してやろう。なにがいい?」

「剣」

「えっと……槍で」


 僕は剣を、土屋は槍をもらった。ネイスは弓を構えている。


「槍使えんのか」

「ううん。でも長いほうがいいじゃん」

「……それもそうだな」

「き、た」

「ふむ。ゴブリンか」


 とうとうモンスターが出てしまったようだ。土屋は驚きつつも戦闘することになる。

 ネイスとトーレイの目線の先には棍棒を持った小さな鬼がいた。成程確かにゴブリンだ。


「まず、ぼく、がう、つ」

「そうか。じゃ、解析よろしく」

「うっうん!」


 土屋がスキルを使い、眼鏡が出現する。ネイスは弓に魔力を込め、矢をはなった。矢はゴブリンの体に当たる。


「どうだ?解析できたか?」

「うん!これすごい!スカウターみたい!」


 すごいな戦闘力でも見えるのか。


「解析結果は?」

「魔力を矢に流して小さな竜巻をつくって周りの風を巻き込んで風の魔法を作り出したみたい。すごいなー」

「成程」


 土屋から聞いた解析結果を魔導書に打ち込む。魔導書の一頁に魔法が表示された。


「セットウィンド。武器に風魔法をつける魔法か」


 さっそく使ってみることにした。


「セットウィンド」


 風が剣を包む。よし、ゴブリンに攻撃だ。


「死ね」


 ゴブリンに突っ込み、左胸を刺した。ゴブリンは棍棒を落として倒れ、粒子となって消えた。ゴブリンの死体のあった場所には金が落ちていた。


「五、ルー、ク」

「ルーク?この世界の通貨か」

「う、ん」


 後で相場を聞いておかなくては。しかし、一撃当てたら魔法は消えてしまうんだな。時間制限なんかも調べなくちゃいけないし。やることが山積みだ。


「おい、トーギ」


 トーレイが怪訝な顔をしている。


「なんだよ」

「お前、即死魔法でも使えるのか?」

「いや使えないけど」


 なに言ってんだこいつは。まだ使える魔法は二つだけだ。


「ではなぜゴブリンを一撃で殺せたのだ!」


 …本当に何を言っているんだこのエルフは。


「そんなもん、心臓を刺したからに決まってんだろ」

「心臓?なんだそれは」


 …おいおい冗談だろ?心臓を知らないってどういう…


「…そうか、ここにはHPがあるんだ」


 HPがなくなれば死に、HPが回復すれば末期ガンでも治る。ここはそういう世界だ。なら体を切って手術なんてしなくてもいいし、弱点を考えて攻撃しなくてもいい。だから自分の体の構造すら知らないんだ。


「あのさ、もしお前らが死んだら死体はどうなるんだ?」

「シタイ?なんだそれは。死んだら消えて神々の庭か死霊の国に導かれるんだろう?」


 僕はため息をついた。ダメだ。魔法至上主義はここまで殺傷技術を劣化させるのか。


「後で教えるよ」


 若干の頭痛をこらえながら剣に再びセットウィンドウをかける。


「ネイス、次は瀕死で止めておいてくれ。魔導書を当ててみるから」

「ん。りょう、か、い」

「私も忘れないで!」


 草原の狩りは日が傾くまで続いた。しかし僕はこれから人体の構造について説明するため再び神殿に行かなくてはいけない。

 やはり完璧な主義主張などないようだ。

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