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魔導書製造者  作者: 樹
それぞれの戦い
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休暇

 連夜、岩に潰される悪夢のような悪夢を経験しつつ俺は今日もフォールの笑い声を聞いている。

 いやもう痛みとか慣れたよ…だんだんと痛みが感じられなくなってきて…


「そして快感へ?」

「いやそんなことはないけど」


 快感へ変わったら完全にアウトだろう。

 俺は自分の血の中から起き上がりエクスカリバーを手に取る。最近、本当に力が落ちてきた気がする。強くならなくてはいけないのに。


「ユウヤくんさ、目的が小さくなってない?」

「どういうこと?」

「君は何のために強くなりたい?」


 何のためって、それは皆を守るために強くなりたいんだ。それはぶれてないしぶれることはない。


「あはは、小さいなぁ」

「小さいって…」

「小さいよ。そんなんじゃ誰も守れない」


 誰も守れない。と言う言葉に俺は反応する。


「だって君が相手するのは世界構造そのものだよ?」

「でも皆を守りたいっていうのは」

「だから小さいんだよ。今日はここまで」


 そう言って俺は現実に戻された。


 朝日が窓から入ってきて俺は目を覚ます。体に異常はないのに痛みを感じる気がするのはやはり特訓が原因だろう。


「おはよう」

「うん。おはよう」


 今日も隣でいつも通りにおはようを言ってくれるべリアちゃんに挨拶を返しつつ俺は布団から出る。

 体に違和感はないのに痛みがあるっていうのも変なものだね。


「大丈夫?かなりうなされてたけど」

「大丈夫だよ。今日も練習に―」

「そのことだけど、今日は休みだって」

「へ?休み?」


 どういう事?

 べリアちゃんは俺の手を引いて部屋を出た。部屋の外にはリュートさんがいた。


「どうしたんですか?」

「今日は休みだからね。一緒に街を回ろう」

「休みって、あるんですか?」

「あるに決まっている。休みがないと兵士たちの不満は高まるばかりだからな」


 それもそうですけど…俺としては特訓をしたいんです。

 言葉には出さなかったものの顔に出ていたらしい俺の手を引きつつべリアちゃんが外に出る。外にはディスベルさんと悠子、そしてホトさんとリュートさんのお子さんがいた。

 あ、そういえばあの子のこと知らないや。


「紹介しなかったね。この子はクリュー」

「えっと…クリューです…」


 ホトさんの後ろに隠れつつクリューくんが挨拶をする。


「すみません。人見知りでして」

「いえ、そんなこと」


 そっか人見知りなのか。道理で俺たちの前に姿を現さなかったわけだ。


「全員揃ったな」

「休暇はいいですけど、どこに向かうんですか?」

「街を観光するだけだ」


 そういえばこの街のことよく知らない。

 街を回るのはやはり俺とべリアちゃん、ディスベルさんと悠子、リュートさんとホトさんとクリューくんとなった。

 多分、悠子と仲良くなりたかっただけだよねあの人。


「それじゃ、夕方には帰れよ」

「はい」


 そうして俺たちは城を出た。



 城を出た俺はルグルスの時と同じようにべリアちゃんが自由に欲しいものを買って回っている。

 まぁこういう時間も大切だろうけど…


「そこの人もどうですか~?」

「あ、どうも」


 とあるお店でお菓子を買っていると店員さんが俺に声をかけてきた。俺は反射的に返事をし、お金を払ってお菓子を受け取る。お菓子はシフォンケーキのようなもので、色が白いがふわふわしていておいしい。


 そしてそのまま公園へ行き、そこで買ったものを確認する。

 血のりまで買うって、どんな状況を想定しているのさ。いやただ興味本位で買っただけだと思うけど。


「ねぇ、カップルに見えるかなぁ?」

「見えると思うよ?」


 そう言うとべリアちゃんは嬉しそうに笑う。

 こんな日が続けばいいと思い、こんな日々を守りたいと思った。

 でも、今のままじゃ無理なんでしょ?どうすれば…


「また考えてる」


 むにゅ。と俺の頬をべリアちゃんが引っ張る。そして手を離し、俺の手を取った。


「そんなに考えること?」

「まぁ、色々とね」

「確かに世界を救うっていうのも大変だと思うけど」


 …まって、世界を救う?俺はそんな大それたことするつもりは……


『だって君が相手するのは世界構造そのものだよ?』


 フォールの言葉が思い浮かぶ。

 そうか。べリアちゃんにはこういう風に見えるんだ。俺は世界を救う勇者で、それが当たり前なんだ。

 自覚が足らなかった。もう少ししっかり自覚するべきだった。


 本当に、小さくなったなぁ。ここに召喚された時は世界を救うつもり満々だったのに色々あって、浅守くんの力を目の当たりにしたりして勝手に限界を決めていたんだ。


 そんなんじゃ、エクスカリバーも応えてくれない。限界を決めてちゃいけないんだ。


「ありがとうべリアちゃん。なんか頑張れそう」

「よかった」


 そう言ってべリアちゃんは嬉しそうに笑った。

 そうと決まったら早速特訓を!


「今日は休みなさい!」


 べリアちゃんに腕を掴まれた。俺は苦笑いしながら謝る。

 そして、ゾクリとしたものを感じた。あぁこれはあの時の、ルグルスの時の!


「誰だ!」


 そう言って俺は近くにある湖に攻撃する。すると湖から叫び声が上がり湖が盛り上がった。

 そして出てきたのは、首長竜。


「ネッシー!?」

「なにそれ!?」


 俺たちは驚きの声を上げる。そしてネッシー(仮)は俺たちのほうを向いて、口を開けた。そこからすごい威力の水が発射された。べリアちゃんを抱えてそれを避ける。

 勇者補正あってよかったー!と思いつつやってしまったかと冷や汗を流す。


「あれ!あの首のところ!」

「どこ!?首が長すぎて分からないんだけど!?」

「付け根のところ!」


 べリアちゃんに言われて見てみるとそこには首輪のような、光の輪があった。

 あれって、確か浅守くんたちが相手したエルフの人の中にいたっていう、モンスターテイマー!?なんでこんなところに!?


「邪魔しないでよね…!」


 俺はエクスカリバーを取り出し斬りかかる。しかしネッシーは水中に潜ってしまった。

 不味いな。水の中では敵のほうが有利だろうし、放っておくわけにもいかないし…


「きゃぁ!」


 べリアちゃんが悲鳴を上げる。驚いてふり見いてみるとそこにはべリアちゃんを襲おうとしている誰かが居た。俺は急いで攻撃するも、すごい速さで避けられてしまう。

 これってギアトさんのスキル!?でもそんなはず…


「べリアちゃん、俺のそばを離れないで!」

「うん!」


 突然の襲撃に驚きつつ、俺はエクスカリバーとデュランダルを構えた。

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