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魔導書製造者  作者: 樹
それぞれの戦い
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従者

 土屋を助け到来に戻った僕たちを待っていたのはキトルがリマスターであるという事実だった。百年前の僕たちの仲間だと言うキトルの話を聞くため早めにこの戦いを終わらせたいのだが、案外敵の抵抗が強い。


「今はこの戦いを終わらせるのが先か」

「そうだね。頑張ってきて」

「帰ったらきっちり聞かせてもらうからな」


 僕はフェルとともに到来から出て再びエンドカードに攻め込む。手伝えとか言えなかったし、多分キトルは今の僕の実力を測るつもりなのだろう。

 まぁ、あいつもおそらく創造主によって送り込まれた人間なんだろうけど、到来に乗り込んで正解だったな。


 そして左右の別れ道でフェルが言った。


「ではトーギさん、ここで別れましょう」

「別にかまわないが、いいのか?」

「はい。それが最善かと」


 そう言ってフェルは右の道に行ってしまった。何かフェルにも感じるものがあったのだろうが、フェルの判断に間違いはないのだろう。僕は追いかけることなく左の道に進んだ。



 私はフェル。トーギさんとミツキさんに付き従い、お二人を守る存在。だからお二人の目的を害する者は私が排除する。

 そして、それは向こうも同じ事だろう。


「お久しぶりです。教皇」

「お久しぶり。フェル」


 私の目の前にはあの教皇がいた。私にとっての最大の敵であり、私たちにとって因縁の深い存在だ。

 でも今ならわかる。なぜここまでするのかも、全部わかる。


「いえ、そろそろいいですかね」


 教皇はそう言って自分にかけた偽装のスキルを解いた。そして現れたのはやはり、百年前の私、フェルだった。

 フェルは無表情のまま私の前に立っている。


「初めましてフェル。意思のある従者」

「初めましてフェル。意思の死んだ従者」


 百年前のフェルはミツキさんを守れなかった時点で意思と言うものが死んでしまったのだろう。そして元の私に、自分を犠牲にすることで全てを守ろうとした私に戻ってしまったのだ。


 主が死ねば主の命令も無効化される。


「私に意思はない。私は付き従い守るもの」

「私に意思がある。私は考え守るもの」


 私は戦闘態勢に入り、フェルも戦闘態勢に入る。

 敗北は人を強くする。百年前に考えうる限り最大の敗北を味わったフェルに私は勝てないのかもしれない。でも、それでもこの意思がある限りそんな力の差はきっと消えてしまう。


 私は守らなくてはいけない。百年前のトーギさんのようにするわけにはいかないから。


「優しい主を持つと苦労しますね」

「はい。自己犠牲もさせてくれません」


 そして私とフェルはぶつかった。



 到来の中、キトルさんと私は戦うフェルちゃんたちを見ていた。

 私のせいなんだ…やっぱり悲しいなぁ。


「大丈夫かい?」

「大丈夫ですよ…いざとなったら止めに入りますから」

「…強くなりましたね。前は泣いていたばかりなのに」

「そうですね…強くならざるおえませんでしたから」


 百年前ぶりに再開した私たちはお互いの変化を教えあう。今の土屋美月を通じて知っているし、覚悟も決めたんだけど、やっぱりいざとなると辛いなぁ。こんなんじゃ燈義くんに笑われちゃうよ。


「笑わないと思うけど」

「……人の心を読まないでよ。勇也くん」

「ユウヤくん、久しぶり」

「久しぶり二人とも」


 相変わらず人の好さそうな笑みを浮かべているのは百年前の凪川勇也。今はフードの男として存在している人だ。

 なんだろう。同窓会かな。


「まぁ俺はここに来る予定はないというか、きちゃいけないんだけどね。無理言って来たんだ」

「いいの?」

「いいんだよ。基本は俺とフェルが行動して燈義くんが指示を出す。何も変わってないからね」

「そう…大丈夫なの?」

「大丈夫。燈義くんと美月のすごさは君が一番よく知っているはずだよ。きっとハッピーエンドに導いてくれる」


 そして最後には誰も予想しないことをするんだろうなぁ。今の燈義くんと土屋美月ならきっとそうなる。私が存在できる時間は短いけれど、その間に教えることは沢山あるし。


「本当は燈義くんが会えるとよかったんだけど…今は無理でね」

「うん。分かってる。だからもう少し我慢するね」

「うん。頑張って」


 そう言うと勇也くんは消えた。私は目にたまった涙を我慢しつつフェルちゃんたちの戦いを見る。



 轟音が響く中僕は右の道を走る。目の前に現れた敵を排除しつつこの船の動力源を目指す。

 それにしても兵器が多いな。こんなものどっから持ってきたんだよ。


「誰かが支援しているのか…」


 だとすれば合点がいくんだが、一体誰が奴隷解放に乗じてコーホジークを乗っ取ろうとしているのだろうか。ことによってはコーホジークだけじゃなく他の組織も敵に回すことになりそうだな。


 いや、もうそうなっているのかもな。


「あー…面倒なことになってるな」


 でも一年後には全世界を巻き込んだ戦争が始まるんだ。そんなときに内乱が起きているなんて冗談じゃない。コーホジークは最悪、僕たちが取らせてもらう。


「っと」


 目の前の地面が盛り上がり、大量のドリルを付けた敵が出てきた。僕は魔導書を開いて応戦しようとしたところで敵に穴が開き、爆発した。

 …何が起きた。


「探しましたよ。トーギさん」

「…なんでここにいるんだよ」

「あなたが必要ですので」


 そう言ってフォーラスは、僕のほうに銃を向けてきた。


「投降しなさい」

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