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魔導書製造者  作者: 樹
それぞれの戦い
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強者

 エンドカードに乗り込んで襲ってくる敵を落としつつ僕はフェルとの合流を目指す。興奮状態で襲い掛かってくる敵は倒しても起き上ってくるので完全に沈黙させなくてはいけない。まるであの戦争の時のようだ。

 同じ作用の麻薬…いや、それにしては殺意が明確じゃない。どちらかと言うと操られているような感じがする。


 しばらく船内を歩いていると廊下の曲がり角から何人かが吹っ飛んできた。僕はソレをよけつつ飛んできたほうを見ると、フェルがいた。


「トーギさん。ご無事で」

「あぁ。なんでメイドなんだ」


 なぜかメイド服姿で。フェルは特に気にも留めていないようで「他の方もこういう服装でしたので」と言った。

 フェルと合流した僕は土屋の救出に向かう。


「土屋の様子はどうだ?」

「見た限りでは問題ありませんでした。しかし、様子が変でした」

「どう変だった」

「まるで、人が変わったようでした」


 人が変わったようになるってどういうことだ。残酷にでもなったか。

 とにかく急ぐしかないと足を急がせっると僕たちは廊下で立っているそれを見つけた。


「なんだこれ」

「戦闘機甲『デッドライン』です」


 デッドラインというロボットは銀色に輝いており、両手に装着してある重火器を動かす。


「我はスペード。エンドカードのスペード也」

「話せるのか」

「作戦実行作戦実行」


 ウィーンと両手の重火器が少し回転したかと思うと僕たちの目の前を輝く弾幕が覆った。とっさに展開したダークホールで防ぐ。

 質量兵器まで使うのか。しかもしっかり魔法補助が使ってやがる。面倒な相手だがこんな鉄くずに時間を取られているわけにはいかない。

 僕はリロードの一瞬を狙って風属性中級魔法ウィンドストライクで足の関節を撃ち抜き体勢を崩させフェルの望破帝で心臓部の鎧をへこませて僕の百連掌セットウィンドで心臓部を撃ち抜いた。


「行くぞ」


 鉄くずが完全沈黙したことを確認し僕たちは先を急ぐ。

 しばらく行くと廊下が終わり、そこには部屋があった。その部屋には鍵がかかっていて僕はその部屋のカギを壊す。

 そして目に入ってきたのは―


「あ、燈義くん」

「…うぅぅ…」


 こっちを見て嬉しそうに笑っている土屋と、うめき声を上げつつ下に転がっている中年男性がいた。

 これは…本当に人が変わっているな。


「そっか、私、攫われたんだ。だから私が…」

「お前、百年前のほうか」

「そうだよ。百年前の私。なんだか知らないけど出てきちゃった☆」


 出てきちゃった☆じゃねぇよ。と思ったが出てきたものは仕方がない。百年前の戦争に備えて鍛えていたらしい土屋はジョーカーと名乗る敵のボスをあしらい僕が来るのを待っていたらしい。


「多分この人のスキルだと思うんだけど」

「戻れるのか?」

「戻ってほしい?」


 楽しそうに聞く土屋の言葉に少しイラついた僕は土屋の頬を引っ張る。土屋は少し笑ったまま謝り、僕は手を離した。


「でも燈義くん。百年前の土屋美月は今の土屋美月より強いよ?効率重視の燈義くんなら私のほうを選んでもおかしくないよね」

「…何が言いたい」

「結局さ、燈義くんも人間なんだよ。普通の一般人。ただちょっと個性的な普通の人」

「僕が普通に見えるのか?」

「見えるよ。今の土屋美月も百年前の土屋美月もその考えは変わらない」


 僕が普通って…そりゃこの世界にはありえない存在が多すぎるからだろう。


「燈義くんはさ、自分が特別であることを望んで、そうあることで自分を保とうとしているんだよね。浅守燈義という人間が人外だと思いたいんだよね」

「別にそんなこと「あるよ」


 土屋は僕の言葉を遮り僕の目をしっかりと見る。僕は目をそらそうとするも手で頬を掴まれて僕は土屋のほうを見ざるおえなかった。


「逃げちゃだめだよ。燈義くんは強いんだから」

「…僕が強いわけないだろ」

「強いよ。誰よりも何よりも」


 そう言って土屋はにっこりと笑った。

 僕が強いって…こいつにはそういう風に映ってたのか。僕をそういう風に投影していたのか。


「あの、お二人とも。そろそろ移動したほうがいいかと」

「「…」」


 端から見たらただ見つめあっているだけに見えたのであろう。フェルは抑揚はないものの呆れたような感じでそう言った。僕たちは少し頬を赤くしてその部屋を出る。

 なんというか…なんでこんなに心臓の鼓動がはやいんだよ。



 建物から出てみるとそこは戦争の真っ最中だった。怒号と銃声と剣劇が飛び交う場所を僕たちは駆け抜ける。

 特にあの隊長十人の活躍は目覚ましい。しっかりと挨拶したことがあるのはルーだけだが他の人にも挨拶くらいはしたほうがいいかもしれない。


「し「しつこい」


 いつも通り「死ね」と言いたかったらしい敵は吹き飛んで落ちた。もうすぐで到来にたどり着ける。

 僕は到来に飛び乗り土屋を中において戦場の把握をさせる。そして僕は戦場に戻ろうとして、奇妙なものを見た。


 目の前に見えるのは光の柱。あの創造主が出したあの光だ。しかし創造主が関わってくるとは思えない。


「あれは…キトルさん?」

「キトル?なんであいつが」

「だってあの光はキトルさんのスキルだよ。リマスター。電脳種の生殺与奪に作用するスキル」


 リマスター?いやそれは電脳種を創ったやつの名前で…あ。


「ばれてしまったようだね」

「キトルさん」

「お久しぶりミツキちゃん。また会えてうれしいよ」

「…説明を求める」

「いや説明も何も、見たまま聞いたままだよ」


 いきなり出現したキトルはさも当たり前のように言った。


「僕は百年前の君たちの仲間で、僕こそ伝説のリマスターだよ」

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