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魔導書製造者  作者: 樹
それぞれの戦い
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反抗

百回です。凪川くんと浅守くんとの話を交互に書いていますが、どうぞこれからも応援してください。

 フォールの体から黒い霧のようなものが空中に拡散する。その黒い霧は空中で形を成し、そしてフォールは黒い霧をまとい笑っている。


「闇核解放。ナイトフォール」


 そして黒い霧をまとったフォールは俺たちのほうに右手の手の平を向ける。

 瞬間、無意識に俺はエクスカリバーを振り上げ全力で振り下ろしていた。気が付けば俺の目の前には黒い塊が迫っておりエクスカリバーから発せられる光とぶつかり霧散した。


「やっぱりこの程度じゃ相殺されちゃうね」

「この程度って…」


 今のはかなりヤバかった。現に俺の目の前に広がっている草は枯れ果てている。今のが人体に当たったらと思うとぞっとする。

 これが百年前の魔王の力…よく勝てたね。百年前の俺たち。


「はぁ!」


 リュートさんが重力魔法『グラビティデッド』を発動しフォールを押し潰そうとするもフォールは黒い霧に守られフォールの周りの地面が陥没した。

 やっぱりあの黒い霧を突破できるのは勇者の武器だけか…


「君、ちょっと邪魔」

「しま―」


 黒い霧が地面の下から噴き出してきてリュートさんを包む。リュートさんの叫び声が聞こえて、黒い霧が消えるとそこには誰もいなかった。

 へ?…嘘…まさか…


「ちっ、おしい」


 俺の考えとは裏腹にフォールはゲームで失敗した子供のような感想を漏らす。フォールの目線を追ってみるとそこにはリュートさんと悠子がいた。

 よかった…悠子が転送してくれたんだ。


「彼女も勇者か…でもぼくと闘ったときはいなかったなぁ」

「それより前に死んでまったみたいやからね」


 悠子はフォールを睨み、フォールは悠子を楽しそうに見ている。悠子は俺の隣に転移してきて俺の後ろに立つ。


「来てくれてありがとう」

「こんだけ大きな音だしとれば嫌でも分かる。それより、あの人なに?」

「…敵だよ。俺たちの、この世界の」


 フォールは俺の言葉に「ひどいなぁ」と呟き、黒い霧を消した。


「…闘わないの?」

「闘って欲しい?」


 正直勘弁してほしい。でもここで逃がしたら何が起こるかわからない。

 俺が迷っていると悠子がフォールに話しかける。


「君は勇也くんを強くしたいんよね」

「え?」


 俺が疑問の声を上げるも悠子は気にすることなく話しかける。


「勇也くん強くなってこの世界を元に戻すことができれば君も元に戻って、また暴れられるから」

「せいかーい。拍手~」


 ぱちぱちとフォールは拍手をする。

 そんな…それじゃこの世界を元に戻してもまた…


「ていうのは、ウソ」

「…へぇ?なんで?」

「だってあなた、今の勇也くん技を相殺されてる。そんなんじゃ世界を元に戻してもその時の勇也くんには勝てない。だから勇也くんを強くする意味もない。どっちかっていうとこの世界のほうが都合良いしね」

「じゃぁ、どうして…」


 フォールは笑っているだけだが、その眼は悠子を警戒している。


「君は死ななきゃいけないんやないの?」

「はは。それは傑作」


 フォールは悠子の話を鼻で笑う。俺もそんな話は信じられない。だってこいつが死ぬ理由は何もない。むしろこっちを殺す理由のほうがありそう。


「ない話じゃないよ。だって君の存在は知られてるはずやから。あんなに苦戦した君のことを調べないはずがないから」

「じゃぁ君はぼくをこの世界に役割を与えられた、ユウヤに殺されるために生かされていると?」

「本来は違うんやろ。だから君はあの人たちに一泡吹かせるために死のうとしとる」

「生憎、自殺志願者じゃないんだけど」

「自殺志願者じゃなくても死ななくちゃいかん時がある。例えば、君をかろうじて生かしてるものが手から離れようとしている、とか」


 その言葉に一瞬だけフォールの目は見開き、そして声を殺して笑う。

 よく考えてみればそうだ。フォールが持っている闇核が本来この世界のものだとすれば、フォールが所持している限りこの世界に魔王は生まれない。つまりフォールをフォールたらしめているものが本来の主の元に戻ろうとしているのならフォールは、消えるのだろう。


「だから君は勇也くんを強くしてその『生かしている何か』を破壊させようとしている。違う?」

「違う」


 フォールはそう答えるも先ほどの飄々とした笑いは浮かべていない。その顔は真剣そのもので、多分悠子の言っていることが正解なのだろう。

 まさかそんな理由で行動してたなんて。


「まぁあの人たちも運命が変わることを危険視してあんまり関わってこんと思うけど、あんまり過ぎるようやったら干渉してくるよ」

「分かってる。でも心配ないさ」


 そう言ってフォールは指をパチンと鳴らし、消えた。残ったのは俺たちが戦った跡だけ。

 それにしても悠子、よくそんなこと気が付いたな。


「心配ないか…そうだとすればそこに鍵が…」

「悠子?」


 何かぶつぶつ言っている悠子に話しかける。


「もしかしたらあの人を倒すカギを見つけたかも…」

「本当!?」

「うん。でもこれは勇也くん次第」


 そんなの最初っから分かり切っていることだ。俺は首を縦に振る。


「それで、どうすればいいの?」

「新しい技の開発。この世界にも前の世界にもない新しい技を創る」

「新しい技?」

「だってあの人たちは既存の情報を集めてここを創った。なら未確認の技に対抗する手段はもってないやろ」


 あ、そうか。それもそうだ。

 でもそんなこと…やらなくちゃいけないんだよね。今のところ悠子に助けられてばっかだし、そろそろいいとこ見せたいし。


「ありがとう悠子」

「どういたしまして」


 俺と悠子が笑っていると、パン!と手を叩く音がした。


「そこまで」


 そちらを見てみると不機嫌そうなディスベルさんが立っていた。

 い、一難去ってまた一難…

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