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チャプター6 復讐の無意味さ

場所は変わり、ドレイクシティの路地裏。月明かりも無く、わずかな街灯が照らすのみ。トビアスはその路地裏を歩いていると、巨大な影を目撃した。それは鳥のような何か。ゆっくりとこちらへ近づいている。やがてその姿を現した巨大な影は、ハヤブサだった。トビアスは小さな頃のように逃げようとはせず、ずっとそこに立っていた。ハヤブサはトビアスの前で羽ばたき、「トビアス・・・」とエコーのかかった声で呼んだ。

「トビアス・・・」

「トビアス・・・起きろ!」

ハヤブサの声はブライアンの声へと変わり、トビアスは飛び起きた。

夢だったのだ。

「トビアス、飯の時間だ。」

「またあの夢・・・」

トビアスがつぶやく。

「何だ?」

ブライアンは不思議そうな顔をして聞いた。

数分後、2人は1階に降り、ケンジが用意してくれた食事を食べていた。

ご飯を豪快に食べながら、ブライアンは今日あったことについてトビアスに聞いた。

「なあ、トビアス。お前、日本語できたのかよ。何でケンジと話さなかったんだ?それに、あいつらに絡まれても殴ろうとはしなかったし。」

彼の言葉にケンジが口を挟んだ。

「彼の行いは正しい。武道家は、手を出してはならない。」

「なら黙ってボコボコにされるのか?」

ブライアンは彼に反論するが、ケンジは黙っている。

トビアスも黙って食事をしていた。

「喋れよ~。」

ブライアンは愚痴っていた。

食事が終わり、トビアスとブライアンは風呂に入る。

「ああ、最高だ!日本に来てよかったよ。なあ、トビアス。」ブライアンは湯船に浸かりながら、言った。

「トビアス、お前今日見た夢何だったんだ?」

ブライアンは突然こんなことを聞いてきた。

ブライアンの質問に、トビアスは幼少の頃から見ていた誰にも言ったことが無かった夢を打ち明けた。「僕は、小さな頃からその夢を見てた・・・ドレイクシティの街の路地裏に1人で立っていて、歩いていくと大きなハヤブサがこっちに向かってくる。ハヤブサは僕の名前を呼んだ・・・「トビアス・・・」。いつもそこで目が覚めるんだ・・・。」

「お前、導かれてるのかもな。」

「導かれてる?何に?」

「そのハヤブサにだよ。」

「そんな。ただの夢だよ。」

笑って済まそうとするトビアスに、ブライアンは真剣な顔で聞いてきた。

「お前、復讐してやろうって考えなかったのか?」

重い内容の質問に、一瞬戸惑うトビアス。

「復讐?両親の?」

「そうだ。」

「そんなこと考えたこと無い。余計に悲しくなるだろ・・・自分の手を汚すだけだ・・・」

「そのハヤブサはお前に復讐しろって言ってたんだよ。」

「勝手な思い込みはよせ!ただの夢だ!」

普段あまり大きな声を出さないトビアスが珍しく大きな声を出した。

ブライアンは黙り込む。

少しして、ブライアンは言った。

「正直になれよ。心のどこかでは復讐を誓ってたはずだ。」

彼の言葉はトビアスの心を突いた。

トビアスは心のそこでは、自らの手で復讐しようとしていたが、自らの手を汚しても、何も残らないと考え、必死に復讐心を抑えていたのだ。

ブライアンは見抜いていた。

「俺がお前に声をかけたのは、お前の闇に包まれた心に、光を照らすためだ。」

「僕が両親の仇を討つためと?僕は復讐なんて汚いことはしない。」

トビアスはきっぱりと言った。

「復讐じゃない。いずれわかるさ。俺の言ったことの意味をな。」

ブライアンはそう言い残し、風呂を出た。

1人残されたトビアスはずっと考え込んでいた。

(いったい彼は僕に何をしたいんだ?何を求めているんだ?)

トビアスにはまだ彼の言った言葉は理解できなかった。

寝床に就いても、まだそのことについて考えていた。

ブライアンは隣の布団で寝ている。

彼の目的はトビアスにはまったくわからない。

考えれば考えるほど謎が深まるばかりだ。

トビアスは眠りに就いた。

気がつくと、トビアスはドレイクシティの自宅のベッドに居た。

ふと傍を見ると、父と母が座っていた。

「パパ・・・どうしてここに?」

トビアスが問いかけると、父は答える。

「お前はまだまだ強くならなければならない。恐れるな。戦え。」

父に続き、母も言った。

「トビアス。あなたなら強くなれる。」

2人の言葉にトビアスは何も言うことは無かった。

父と母のビジョンは消えていき、いつの間にか路地裏に居た。

「またか・・・」

トビアスはつぶやくと、いつものように巨大なハヤブサがゆっくりと飛んできた。

トビアスは幼少時代とは違い、逃げようとは考えなかった。

もう恐れるようなものではなかった。

ハヤブサは「私を受け入れろ・・・」と言ってトビアスと一体化した。


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