チャプター2 残酷な世界
数週間後。
トビアスは孤児院に入ることになった。
ドレイクシティの一角にある小さな孤児院だ。
トビアスはここでの生活に不安を感じていた。
「どんなところだろう?」当日、その孤児院に連れてこられた。
「今日からここで一緒に住むことになるトビアス・キートン君だ。仲良くしてやってくれ。」
職員が他の子供たちにトビアスを紹介した。
子供たちは皆、トビアスへ目をやっていた。
翌日、トビアスはまだ誰とも喋っていなかった。
内気な性格であるトビアスは自分から話すことなどできなかったのだ。
しかし、自分より5歳ほど年上の少年がトビアスに話しかけてきた。
「よう、新入り。」
トビアスはその少年を見て、トラウマだった強盗と同じ匂いがした。
怖がって、固まってしまった。
しかし、少年は「トビアスだっけ?いい名前だな。俺はブライアン・デックス。よろしく。」
彼は握手を求めてきた。
トビアスは自然に握手をしていた。
手が勝手に動いたというべきか。
トビアスは彼に不思議な何かを感じていた。
その日の夜。
ブライアンはトビアスに両親の話をし始めた。
「俺の母さんは小さな頃に病気で死んじゃって、父さんだけだったんだ。父さんは戦争を生き延びたんだが、おかしくなっちまってな・・・人を殺したショックで・・・」
この言葉はトビアスの胸に深く突き刺さった。
「お父さんは戦争に行っていたの?」
戦争など考えたことも無かったトビアスはブライアンに言った。
「ああ、自ら志願してな。父さんは「国の為だ。」とか言ってたよ。俺にはよくわからなかった。父さんは俺に武道を教えてくれたり、優しかった。でも、変わっちまった・・・街で歩いてるとき、ジャンキーに絡まれて、そいつを撃ち殺しちまった。父さんは捕まっちまったよ。戦争なんて無くなりゃいいんだ!あれのせいで父さんは・・・」
ブライアンは涙を流していた。
この話は両親を殺されたトビアスにとって身近に感じられた。
1年後のある日、「なあ、トビアス。お前はどうしてここに来たんだ?教えてくれよ。」
ブライアンはおやつを食べながら、こんなことを聞いてきた。
トビアスは少し黙り込み、目をそらしてどう話せばいいのか考え始めた。
目をそらしてもブライアンは真剣な顔でこっちを見ている。
トビアスはブライアンに顔を向けると、過去を話し始めた。
「僕の両親は強盗に殺されたんだ・・・僕が起きたとき、パパとママは強盗に拳銃を付き付けられてた。「金を出せ。」って。
僕は怖くて震えてた。パパは「あんたらのような者に渡す金は無い。」って。
すると強盗は聞いてきた。「ガキは居るのか?」。パパは僕を守るため、「いない。」って答えたんだ・・・そしたら、強盗はパパとママを・・・」
トビアスはあの時のことを思い出して泣いていた。
ブライアンはトビアスを抱きしめて言った。
「強くなれ・・・」。
ブライアンのその言葉に、父を思い出した。
トビアスは自分と両親との過去を話し始めた。
「僕はいじめられたとき、いつもパパに泣きついてたんだ・・・パパは優しい口調で、「大丈夫だ・・・」って僕を抱きしめてくれてた・・・。
でもその日からは・・・」
暗い顔をするトビアス。
トビアスの脳裏に甦る両親が殺されたその夜。
銃を持った強盗が逃げ去っていくのを見た通りすがりのカップルは家の前で泣き叫ぶトビアスを見て、警察に通報。
キートン家の近所の住人は皆、家から出てきてなんだなんだと見に来ていた。
その中には、キートン家の隣人であるスミス家の娘であるメアリーも居た。
彼女はトビアスが小さな頃から好意を寄せていた。
想いを伝えることができずに。
メアリーは両親と一緒に、涙が止まらないトビアスをじっと見守っていた。
警察が到着し、保護されたトビアスのところに髭を生やした警官が傍にやってきた。
「もう大丈夫だ。おじさんたちが捕まえるから。」
その警官の名はジョー・ロドリゲス。トビアスは不安な顔でロドリゲスに尋ねた。
「パパとママは?」
「パパとママはね・・・遠いところに行くんだよ・・・」
ロドリゲスは少し考え込んでつぶやいた。子供に両親は死んだなどとは言えなかった。ロドリゲスがトビアスと一緒にいていると、上司に呼ばれた。
「ロドリゲス。来てくれ。」
上司のもとへ向かうロドリゲス。
話を聞いたロドリゲスはトビアスのところへ戻ってきて言った。
「トビアス君、いいニュースだ。犯人を捕まえた。」
彼の言葉にトビアスは安心した。
しかし、同時に悲しさがこみ上げてきた。
たとえ犯人が捕まったとしても、父と母は帰ってこない。
トビアスはなんともいえない気持ちに包まれた。
トビアスの過去をブライアンは黙って聞いていた。