第二話
どうやったら、読みやすくなるんだろ?文才なさすぎで悲しくなってきた。
★ミシェルは、ベッドから起きました。まだ疲れがとれていないのか、ずいぶん寝ていたようです。もう、太陽が西に傾き始めています。髪が桃色の女性が部屋に入ってきました。
「あらっ、お目覚めかしら?」
「リディルさん、おはようございます。二日も泊めて頂きありがとうございます。」
「ミシェルさん、お気になさらずいくらでも泊まっていって下さい。あの、一つお聞きしてもいいかしら?フェイのことなんですが、なんか強力な魔法とか使いましたか?」
「・・・。はい、魔物から逃げるのに体を透明にしてくれました。」
「そうですか。教えてくれて、ありがとうございます。」
と言って、リディルは部屋を出ていきました。
『あれから、もう二日か・・・。』
ミシェルは二日前のこと思い出しながら、部屋を出ました。
二日前、フェイを背負い街まで連れてきた、ミシェル。不思議なことに、門は簡単に通ることができました。トルスタでは入るために手続きが必要なのに、この街ルクナスは何故か見張りの者が一人もいなかったのです。これは、一体どうしてでしょう?
ミシェルは、フェイの家を多くの人に訊きましたが、誰一人答えてくれませんでした。街の人は、とてもフェイに対して冷たい態度でした。ミシェルが「誰か、この子の家を知りませんか?具合が悪く倒れてしまったのです。」といっても、街の人は「近寄るな」や「化け物の子なんてどうなろうと知らないよ!」など、子供までもが「化け物!」と泣き叫びながら走っていく有り様でした。質問の答えは一つも返ってこないばかりか、冷たい言葉ばかりでミシェルは悲しくなりました。『なんで、人間じゃないからって、こんなに言われなきゃならないんだろう?あまりに、ひどすぎる・・・。私たちと同じで生きているのに。』と思いながら、電灯の下で途方に暮れていました。すると、少し離れた所から走ってくる女性が居ました。それはフェイが倒れていることを人づてに聴き、フェイを探し走り回っていたリディルでした。その後は、フェイを二人でリディルの家に運び、ミシェルは泊めてもらうことになったのです。
★部屋を出て、庭に出てみるとリディルが洗濯物を干していました。
「フェイさんは、まだ帰ってないのですか?」
フェイは昨日の朝、目が覚めるとすぐに家を出ていってしまいました。
「そうなのよ・・・。たぶん、私に心配かけたくなくて森で寝ているのでしょう。まったく、あんなに真っ青な顔してね・・・。いつも、ああなのよ。」
とリディルは森の方をみながら答えました。
「あんなに具合悪くなってしまったのは、あの魔法のせいですか?」
「そうですね。あの子の魔法はまだ、不安定なの。たぶん、自分に自信が持てないせいね。どうにか自信を持たせてあげたいのですが、私がいくら言ってもダメで・・・。
そうだ、ミシェルさんこの街を見て回ってはどうですか?」
「はい、そうすることにします。夕方頃には戻ります。」
★ミシェルは街を歩いていました。街の様子はというと、とても活気があり明るい街です。
『今日も良い天気だなぁー。こないだ雨が降ってからまだ一ヶ月ぐらいしかたってないから、当分は雨降らないな。』
この世界では約三ヶ月に一度の周期で雨が降ります。その雨というのは、十日も続きます。まぁ、そのおかげで水不足にならないのですよ。
ミシェルが道に迷っていると、街の人は声をかけてくれました。「お譲ちゃん、何かお困りかね?」や「あら、新顔だね。」などといった、まるで先日のフェイに対しての冷たい言葉は嘘のようでした。ミシェルは困惑しながらも、道案内され無事に目的の場所にたどり着くことができました。その目的の場所とはこの国で一番高い、時計台でした。ミシェルはこの時計台に一度でいいから上ってみたいと思っていたのです。
もう、空の色も真っ赤に染まり日が沈む時刻。ミシェルは時計台の屋上でそこから見える景色を楽しんでいると、見慣れた青い鳥が飛んできました。そして、ミシェルの肩にとまりました。それは、ティスファーでした。
「ティスファー!村を出たから、もう会えないかと思ってたんだよ。あっ、また手紙を届けてくれたのね。ありがとう。」
手紙を受け取るとティスファーはまた飛んで行ってしまいました。もう日が暮れるので手紙を読むのは後にして帰ることにしました。しかし、どうしてミシェルのいる場所が分かるのでしょう?
なんとか家に着き、リディルの用意してくれた夕飯を食べました。
その夜、ミシェルは街の人のフェイに対する態度について考えていました。ですが何も思いつかず、眠りについてしまいました。ジルからの手紙を忘れています、いつ思い出すのでしょうか・・・。
★ベッドから起き、居間に行くとリディルが台所で朝食の準備をしていました。
「あの、手伝います。」
「あら、気にしなくていいのよ?好きでやっているのですから。」
リディルは楽しそうに野菜を切っています。
「ダメですよ!何もしないでお世話になってばかりでは、いられません。」
「そう?じゃあ、食器とかの用意をして下さい。」
ミシェルは皿やフォークの用意をし始めました。
「ミシェルさん・・・。言いづらい話なのですけど聞いてくれますか?」
「はい?なんですか?」
リディルは手を止め、ミシェルを真っ直ぐ見ながら言い始めました。
「ミシェルさん、あなたは確かここから一番近い村のトルスタから来たと言っていましたよね?実はあなたが住んでいたその村は、三日前に一夜にして住んでた人が全員死んでしまったそうです。原因も分からないんですって。私も今朝、掲示板を見て初めて知ったのよ。」
「そんな・・・。」
―バリーン―
あまりのショックに、ミシェルは手を滑らしてしまい、皿を落としてしまいました。皿の欠片が床に飛び散りました。
「すみません・・・。」
「いえ、いいんですよ。私がこんな話を今話したのが悪かったのですよ。私が片付けておきますから、ミシェルさんはソファで休んでいて下さい。」
ミシェルはソファに腰掛けて、ジルからの手紙の内容を思い出していました。
『まさか本当だったなんて。もし、私がジルの話を信じなかったら・・・。』
トルスタでは、あまり良い思い出のないミシェルですが、それでも身近にいた人たちの死を思い悲しみました。もし自分が村を出て行かなかったらと思うと、恐怖で震えだしてしまうミシェルでした。ミシェルが気を落ち着かせるには大分時間がかかりました。
★その日の夜、フェイが戻ってきました。
「フェイ、ちゃんと答えなさい!どうして、一人で無理をするの?あんなに真っ青な顔して森に行くなんて・・・。」
「・・・。心配しすぎなんだよ。僕のことより自分の心配しろよ。」
「私のことはどうだっていいから、私はあなただけが大切なのよ。だから、一人で森の中に行って、何日も帰って来ないなんてやめて。」
リディルは少し声を荒げて言います。本当にフェイのことが心配なのでしょう。
リディルが少し咳き込むと、フェイは泣きそうになりながら、
「わかったよ。あんまり大声を出しちゃダメだよっ!体に障るから・・・。もっと自分の体を労ってよ。」
フェイの言動からして、どうやらリディルには持病があるようです。
「良かった。約束ですよ?フェイ、そこにいるミシェルさんと仲良くして下さいね?」
フェイはミシェルを横目で見ました。
「なんでボクが人間の子なんかと・・・。」
「フェイっ!そんなこと言ってはダメですよ。あなたはこの街で育ったから分からないかもしれませんが、世界は広いのですよ。だから、あなたが獣人の子供だからって怖がらない人も沢山居ます。現にミシェルさんだって、あなたのことを人間じゃないって知っても、この街まで運んで来てくれたじゃないですか。そろそろ、良い時期でしょう。私以外の人とも仲良くなって下さい。」
リディルはそう言ってから、急に体調を崩し出しました。咳が止まりません。
「母さん、だから言ったじゃないか、あまり大声をだしちゃダメだって・・・。」
フェイは涙を流しながら言いました。
「フェイさん、リディルさんをベッドまで運びましょう。手伝って下さい。」
二人はリディルをベッドまで運びました。そして、リディルがいつも飲んでいるという薬を飲ませました。その薬の量は異常でした。病気がとても酷いことが容易に判ります。
★フェイは泣き疲れて寝てしまいました。ミシェルはフェイをベッドまで連れて行き、リディルの部屋に戻ってきました。すると、リディルはベッドの上で座っていました。
「リディルさんっ!寝てないとダメですってば。」
「大丈夫ですから、ミシェルさん聞いて下さい。私は、もう長くないのです。医者からも言われています。」
リディルは薬が効いているのか、先ほどよりは顔色が良くなっていました。
「そんなのって・・・。フェイさんはどうするんですか?」
「そうなのですよ。それをあなたに頼もうと思いましてね。ミシェルさん 私の死後、フェイのことをお願いします。フェイはとても優しい子です。あの子がミシェルさんの前で使ったあの魔法は、とても魔力が必要な魔法です。とても負担が重かったはずです。なぜ、その魔法を使ったと思いますか?あの子は、魔物を傷つけるのが嫌だったのでしょう。可笑しいでしょう?自分が襲われているのに、魔物の身を心配してるんですもの。」
リディルは笑っています。
「だから、真っ青な顔して倒れてしまったのですか。私は、恐怖で一杯だったのに・・・。」
「普通の人はそうですよ、私だってそうですよ?だから、気を落とさないで。
優しい子なんですよ・・・。それなのに、あの子はこの街でずっと虐げられてきたの。ただ、人間じゃないってことだけで。私は、フェイに人間を嫌いになってもらいたくないの。だから、あの子を広い世界を連れていって下さい。あの子は、色々な場所に行き沢山の出会いをし、世界を知ることが必要なのです。お願いします。」
リディルはそう言って、頭を深く下げました。リディルの目には涙が浮かんでいました。
「ちょっと、リディルさん頭を上げて下さい。」
ミシェルは慌てて、リディルの頭を上げさせました。数分の間、二人とも黙っていました。その沈黙を破ったのはリディルでした。
「それからミシェルさん、私の息が途絶えた時フェイを支えてあげて下さいね?そして、フェイが落ち着いたらそこの机に引き出しに入っている物をフェイに渡して下さい。
話は変わりますが、そこの机の上に置いてある袋を開けてみて下さい。」
言われた通り、ミシェルは袋を開けてみました。するとその中には、何着かの服が入っていました。とても可愛らしい服でした。
「良かったら、着て下さい。あなたの荷物はとても少なかったから、服とかにも困っているのではないかと思いましてね。迷惑じゃなければ良いのですけど・・・。」
「迷惑なんて、とんでもありません。私、こんなに親切にしてもらったり、贈り物を貰ったのは初めてです。」
ミシェルは嬉しく涙がでてきました。
「そうですか、あなたも苦労したんですね。辛かったでしょう?」
その一言を聞いたミシェルは涙が溢れ出てきました。リディルはミシェルの頭を軽く撫でました。ミシェルは、今まで苦労したこと、悲しかったことをリディルに話しました。リディルはそれを黙って聞いていました。2人のその姿は親子のように見えました。
★ミシェルが目を覚ますと自分のベッドの上でした。
『あれ?私はいつの間にベッドに戻ったの?』
そんなふうに思いながら、部屋を出ました。
リディルの部屋を覗いてみると、フェイとリディルが話していました。
ミシェルは邪魔してはいけないと思い、買い物に出ることにしました。
自分の荷物からお財布を取り出し。外へ出ました。
歩いていると公園が目に入り立ち寄りました。その公園の真ん中には掲示板がありました。
そこには昨日の朝、リディルが言っていた通りのことが書いてありました。
その記事とは・・・
(BLAZE_MONTH,5.の夜、ここから然程離れていないトルスタの村で、そこに住んでいた約60名の人が死亡した。この事は、その村を偶然訪れた旅商人が発見した事により判明した。生存者がなく、目撃者もなし。人以外の生物の猫・犬・家畜は生きていた。この原因は不明。毒ガスによるものかと遺体を調べたが何も異常はなかった。驚くことにどの遺体にも外傷はない。他国によるものかそれとも新種のウイルスによるものか・・・。調査は続行中。)
といった内容だった。
ミシェルはその記事を読み終わり、公園をブラブラしていました。すると、いきなりミシェルは寒気に襲われました。嫌な予感がし、慌てて家に帰りました。
★ミシェルが慌てて家に帰ると、フェイが大声で泣き叫んでいました。ミシェルの予感的中です。
「母さぁーん、ボクを置いていかないでよ!ボクは、母さんがいないとダメなんだよ。ボクは一人じゃ生きていけないよ・・・っ。」
「大丈夫よ、あなたは一人じゃな・い・か・・・ら。」
とリディルの声はだんだん聞こえなくなっていきました・・・。
それっきり、リディルはピクリとも動かなくなってしまいました。
フェイはリディルの手を離さずにずっと泣き続けました。
ミシェルの目からも涙が流れ落ちていました。自分に優しくしてくれたリディルの事を考えると涙が止まりませんでした。
★翌朝、フェイもミシェルの目も真っ赤でした。
いつまでもここで立ち止まっている訳には行かないと思ったミシェルは、フェイをリディルの側から離すことにしました。
「いつまでも泣いていてはダメだよ・・・。悲しい気持ちはよく分かるよ・・・。だから、少し外に出て気持ちを落ち着かせようよ?」
「嫌だっ!ボクは母さんから離れないよ。キミに何が分かる?街の人からも嫌われ、母さんだけがボクの味方だった・・・。ボクは一人になってしまった。」
「・・・。分かるよ。私は、両親が戦争に巻き込まれ死んでしまった、そして私一人が生き残ってしまった。その時、悲しくて悲しくて死にたくもなったよ。でも、私が死んでもお母さんもお父さんも喜ばないって思ったの。今、生きたくても生きられない人が沢山いる。だからっ、立ち止まってはダメなんだよ!リディルさんのためにも。」
自分の両親の事を思い出し、泣きながらミシェルはフェイに話しました。
フェイはずっと掴んでいたリディルの手を離しました。そして、フェイはミシェルの涙を拭き取り、本当に小さな声で「ありがとう」と言いました。
★ミシェルはリディルに頼まれた通り、机に入っていた二通の手紙と小さな紙袋をフェイに渡しました。フェイは自分宛の手紙の封を切り、すぐに読み始めました。
その内容は・・・。
【フェイ、あなたがこの手紙を読んでいるということは、私はもうこの世には居ないことでしょう。ごめんなさいね。もっともっと、あなたと一緒に居たかったのだけれど。でも、フェイ、私の死で立ち止まっては駄目よ。泣かないで、お願い。前に進んで。フェイには誰かを守れる力がある。その力で、大切な人や物を守ってください.私のわがままを一つだけ、あなたに頼みます。頼まれてくれるかしら?今まで、話していなかったけど、私には西にあるソルリアという国に母がいます。私は親の言うとおりに生きるのは嫌だったので家を出ました。あの頃の私は、軽率でした。でもフェイに出会えたから良かったとも思っています。しかし、何一つ親に恩返しもできなかった。せめて、私は幸せでしたと言うことが書いてある手紙を届けてほしいの。これが私からの最後のお願いです。最後にあなたは、私の最高の子でした。】
フェイは手紙を読んでる最中、涙が止まることはありませんでした。
手紙を読み終えて、手紙を丁寧にしまいました。そしてミシェルを真っ直ぐ見ました。
「ミシェルさん、お願いします。ボクと一緒にソルリアという国に行ってください。ボク一人ではたぶん辿り着けないと思う。きっと、諦めてしまうから・・・。でも、ミシェルさんがいてくれればボクは変われると思うのです。」
「もちろん、行くよ。リディルさんからも頼まれましたし。私も、もう少しフェイと一緒に居たいし。これからの旅、宜しくお願いね?あと、これからは仲間なんだから、さん付けはやめにしよう。」
★2人はリディルのお墓を建てました。そこは、とても見晴らしの良い所で海や川や遠くの山などを一望することができました。緑が多くとても落ち着く場所です。空を見上げると雲一つない青空が広がっています。また、足元は緑の絨毯が広がっています。
フェイは、リディルが好きだったという花束を横に置きました。
「母さん、ボクはミシェルと一緒に広い世界を見てくるよ。そして、母さんに誇れるぐらい大きくなり、必ずここに戻ってくるよ。だから、それまでのお別れだよ。」
フェイの背中は真っ直ぐで、今まであった迷いが消えたようでした。
「リディルさん、この服や色々と親切にしてくれてありがとうございました。」
すると暖かい春の風が2人の間を通り、背中を押しました。それはまるで「いってらっしゃい」と言っているようでした。
―獣人というだけで酷い扱いを受けているフェイ、その唯一の理解者である母親の死。親の温もりを知らずに育ったミシェル、トルスタの村人全員の死。この辛い運命に2人は立ち向かっています。1人では無理でも2人なら乗り越えて行けるでしょう。(多分)
異種族が互いに共存していくことは出来るのでしょうか?これにて第二章終了です。
(悲しい知らせと優しい母の死)




