君は光
ここ最近はずっと良い天気が続いている。
学校の体育の教師はさぞ喜んでいることだろう。
そんな春のうららかな陽気とは裏腹に、私の心は今日も沈み込んでいる。
本当に、このまま深海5000メートルまで沈んじゃいそうなほど深く・・・・。
別に今日に限ってそうなんじゃなくて、いつも暗いけど。
でも今日は特に落ち込んでしまうのだ。
そうなってしまう原因は、体育の男女混合授業。
私の学校では時々行われていて、普段は男女別なのに
「交流が大事」とかなんとか言ってはこういう場を設ける。
まあ、少なくとも私以外の女子では嫌がってる子は見たことがない。
なんでも、好きな男子と用具の片付けやらで色々接触を持てることが嬉しいらしい。
私には全く関係のない系統の話だけど。
そしてこの混合授業では、私はいつもペアを見つけられずに
余ってさらしものになるのがオチ。
しかもいつもは女子だけの授業が、この日は男子も一緒になってからかったり
酷いことを言ってくるから精神的にかなりしんどい。落ち込む。情けない。
あ~・・・それにしても、今日の朝ご飯もひどかった。
何が酷かったって?
味は全然問題ない。
だって母親は栄養士資格を持ってる人だから。
酷いのはその料理のおいしさと、量と「もうお腹いっぱい。」と言っても
「まだたくさんあるから」と、人の話等一切聞かない母親の存在。
もちろん私の「お腹いっぱい」は腹5分くらいで、本当はまだまだ食べたい。
食べたりない!!
でも、年頃なんだもん。デブだけど、努力してない訳じゃない。気にはしてる。
若干諦め気味ではあるけれども・・・。
まあ、そんななけなしの乙女心も、結局母の前では無意味に終わる。
私のこのブラックホールみたいな胃が満たされてる
訳じゃないってことを母はよく知っているのだ。
「まだちょっとしか食べてないじゃない。どこか具合悪いの?
お母さん、純が嬉しそうに料理食べてくれるのだけが生き甲斐なのに・・・。
だってお父さんなんて、食べても・・」
「わ、分かった!食べる、食べるからっ。」
「本当?嬉しいっ!やっぱり純は良い子ね~。
はい、これ新作なの、食べて食べてっ。」
母の父への愚痴は一度始まるとかなりめんどうなので
黙って貰うには食べるしかなく・・・。
結果、今日もパンッパンに膨らんだお腹を抱えて登校する羽目になったのだ。
こんなことが毎日のように続くから痩せられない。
だから嫌われて、学校でも惨めな思いをしなきゃならないんだ。
教室に着くと、もう始業ギリギリ。
やばかった。
ふと窓際の席を見て気付いた。
前はたぶん他人になんて特に関心がなかったから、その人だかりと
人だかりの中心にいる人物のことなんて見えていなかったのだろう。
そう、みんなの輪の中心にいたのは昨日のあの男子生徒だった。
彼をとりまく輪に男女の区別はなく、あの男子生徒も楽しそうに会話している。
彼の視線がふいにこちらに向いた。
私は思わず反射的に視線をそらす。
・・・・見ていてはいけない。
彼自身が私みたいな女子を気にしない人でも、きっと彼の周囲が何か言う。
それが怖い。
それに、今見ていて気がついた。
彼はこのクラスの光だ。
誰もがその輝きに誘われる。
私みたいな小蠅が、少し会話できたからとフラフラ調子に乗って
近づいて良い人ではないのだ・・・。