髪の持ち主
なんの構成も考えず、適当に書いてます(苦笑。
拙い、また簡単にオチの読める話となりそうですが、よろしくお願いします。
黒い髪がサラリと流れた。この暑い時期には暑苦しく見える女子の長髪。束ねていないと尚暑苦しい。だが、彼女の場合はそう思えなかった。
窓からの日光で髪が光沢を放ち、輝く。すっと締まっていて、どこか神々しくも思えるような美しい髪。ここは本当に学校の廊下か? こんなところに女神が持つかのような髪の人間がいていいのか? そう思えるほどだった。
俺はその髪が好きだった。
「……何?」
キッと鋭い目で睨まれる。矢嶋由香里。俺の好きな髪の持ち主だ。白い肌が黒髪を際立たせている。また大きな目の持ち主でもある。白目の面積が多いから、睨みの凄味がはんぱじゃない。
だが、こいつに睨まれるのにも慣れてしまった。
「は? 何が?」
涼しい顔でそう答えると、彼女は嫌悪の感情で俺をじっと見、髪をマントのように翻して立ち去った。
「よぉ、和久田の旦那」
「……あ?」
軽々しく話しかけてきたのは友人の大輝だった。
「まーだ狙ってんの? 悪鬼姫様を」
そう言って俺の肩に腕を回してくる。……暑苦しい。
「そんなんじゃねーって」
「馬鹿。俺を騙せるとでも思ってんのか? お前って隙があればいつも矢嶋のこと見てるよな」
くっ…。返す言葉が無い。勘違いをされていることは確かだが、確かに俺は機会があればいつもあの髪を見ている。いや、髪が俺の視線を引き寄せてるような……。
やめだ。馬鹿馬鹿しい言い訳をするのはよそう。
「あの女だけはやめとけ。顔は綺麗かもしれねえが、性格は最悪だぜ? 暗い上、怖い。薄気味悪い。一人で図書室は当たり前だ。あいつがなんの本読んでるか知ってるか? 怪奇とか拷問とか……ぶっそうなもんばっかだ。それに、告った奴らがなんて言われて玉砕したか知ってるか? 『私のためにヒトミゴクウになってくれる?』だと。意味分かんねえ。イカれてるぞ。顔だけ見るんじゃなくて、もっとしっかり考えろよ」
「いや、俺はあいつの……」
漫画のようなタイミングで昼休み終了のチャイムが鳴った。廊下に出ている生徒はみんな、教室に戻るために慌ただしく動き出す。
「おっ。俺らも戻るぞ」
「……あぁ」
俺はなんとなく矢嶋が立ち去った方向を見てから、教室へ戻った。