第2話
「はぁ、はぁ、はぁ、間にあったぁ」
疲れた。この学校広すぎだっての。
全速力で走って講堂まで来たので、汗だくになっている。
「遅いよキラ」
膝に手をついて息を整えているオレに、1人の少女が話しかけた。
彼女の名前はローラ・パーシファル。
オレの幼馴染で、さっきオレに講堂までの道を教えていたのもこのローラだ。
背はあまり高くなく、オレの肩辺りまでしかない。
しかし、出るところはしっかり出ていて、胸なんかはかなり大きな方じゃないだろうか?
更に、目を引くところは胸だけではなくその容姿。
ピンク色の瞳は若干垂れていて、かなり整っている。
人懐っこそうな笑みを浮かべる顔は正に小動物で、彼女を見た者は皆『かわいい』と言うであろう。
それほど彼女の容姿は整っていた。
淡いピンク色の髪を肩の当たりで揃えた髪型もよく似合っている。
「ごめん、ローラ」
「もう、方向音痴なのに色々探検したがるんだから」
「反省してるって。それよりも、ほら、もうすぐ入学式始まるぜ」
オレは講堂内にある大きな時計を指差す。
時計の針は10時の少し前を指していた。
入学式は10時からなので、そろそろ席に着いておかないといけいない。
「あ、ホントだ。じゃあまた後でね」
そう言うと、ローラは手を振りながら走って行った。
席は基本自由だが、男女は別れなければいけないのだ。
「さて、俺も行かなきゃな」
そう呟くと、オレは空いてる席に適当に座った。
そのまま数分待つと、ハゲ頭のおっさんが壇上に上がる。
彼の名前はシュノルド・リンケン。
ヴァルトヘイム学園の学園長だ。
今は現役を退いているが、昔はすご腕の魔法使いだった人物である。
人柄に優れていて、生徒からの人望もかなり厚いらしい。
オレが見たのは今が初めてで、ホントの事はよく分からない。
「皆さん。おはようございます!学園長のシュノルド・ハルケンです」
「「「おはようございます」」」
学園長の挨拶に入学生達が返事をする。
おはようと言うには遅い時間の気がするが、そこには誰も突っ込まなかった。
「今日は天気にも恵まれ、最高の入学式日和になりました。ここ数年入学式は雨ばかりだったので、ワタシ、正直感動しております」
何処からともなくクスクスと笑い声が起きる。
いきなり何言い出すんだよこの人は。
「まぁ、冗談はここら辺にしておきましょうかね。これ以上やると、後で先生方にお説教されなくてはならなくなるんですよ。ワタシが学園長なんですけどね」
『お説教される』なんて言っておきながら、学園長の話しはまだまだ続く。
長くなりそうだし、寝るか。
オレはそう決めると、夢の世界へと飛び込んだ。
パチパチパチパチパチパチ。
どれくらい眠ってたんだろう?
拍手の音で目が覚めた。
壇上にはまだ学園長の姿があるから、どうやら今学園長の話が終わったみたいだ。
時計を見てみると入学式が始まってから30分経っている。
どんだけ長い時間話してたんだよ。
「あなた達には期待していますからね。一緒にリンドブルムを守りましょう」
学園長はそう言うと、満面の笑みを浮かべながら壇上から降りて行く。
その間、拍手は一瞬たりとも途切れることはなかった。
そんなにいい内容の話だったのかな?
オレも聞いておけばよかったかもしれない。