F2
逃げてきた俺はギターを背負いながら歩いていた。あてもなくさまよい続けていると、小さな村を見つけた。心身ともに限界だった俺は、助けてもらえるかもしれないという希望が湧き、走って向かった。
近くまで行くと門番がいることに気がついた。門番は片手に槍を持っており、やや小太りな茶髪の男性だった。どう見ても日本人ではなかったのでなんて声をかければ良いかわからなかった。拙い英語で会話をしようとした時、あちらから声をかけてきた。
「それ以上近づくな!」門番はこわばった顔をして槍を構え臨戦態勢になる。驚いた自分は両腕をあげた。
「お前は何者だ!どこから来た!」
質問に答えないと命が危なそうだったので正直に答えた。「真長といいます。事故で車に轢かれ、気がつくと草原にいたので分かりません。」
着の身着のままな俺には何も出来ないと判断して、門番は冷静さを取り戻した。
「なんだそれは。ほとんど答えになってないじゃないか。だいたい、クルマとはなんだ。」門番がそう言った。
自分は頭の中で驚きながらも、薄々感じていた違和感の正体に気がついた。それはここが異世界であるということだ。ありえないような巨大な大きさの生き物に、現代で使うことの無くなったはずの槍。そして車という概念がない。全てが自分の中で合致した。
「すみません、馬車のことです。」とりあえずそう答えておいた。
「最初からそう言え。俺は共通語以外の言語は分からん」と門番は言った。どうやらクルマを別の言語の言葉だと思ったらしい。
「ところで、共通語ってなんですか?」
そう俺が聞くと門番は笑いだした。
「おかしなことを聞くもんだ、今俺らが喋っているだろ?」
どうやらこの世界は日本語が共通語となっているようだった。
カン!カン!カン!カン!
金属を叩く音が鳴り響いた。
「はぁ…。魔物がやってくる。兵士が来るからそいつらに任せて俺らは村の中に入るぞ。」
そう言われて中に入った。




