彼女がいるのに、手を繋いだ
※大人向けの恋愛です。
正しくないと分かっているのに、やめられなかった関係を書きました。
彼女がいるのに、手を繋いだ。
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最初は、本当に何もなかった。
ただ話しやすかっただけで、
ただ一緒にいるのが楽だっただけ。
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店で顔を合わせて、少し話して、
気づけば外でも会うようになっていた。
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「彼女いるんでしょ?」
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軽く聞かれて、軽く答えた。
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「いるよ」
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隠す理由もなかった。
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それで終わると思っていた。
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でも、終わらなかった。
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距離は、少しずつ近くなる。
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夜に会うようになって、
帰り道が同じになることが増えて、
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気づけば、隣にいるのが当たり前になっていた。
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「これってさ」
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ある日、言われた。
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「ダメなやつじゃない?」
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笑いながら言っていたけど、
目は笑ってなかった。
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「何が?」
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分かってて聞いた。
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「分かってるでしょ」
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分かってた。
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でも、そのときはまだ、
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「別に何もしてないし」
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そう言い訳できる距離だった。
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手も繋いでないし、
キスもしてない。
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だから大丈夫だと思ってた。
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その日、帰り道で雨が降った。
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屋根のある場所で、少し雨宿りする。
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距離が、近かった。
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会話が止まる。
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沈黙をごまかすみたいに、手が触れた。
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引かなかった。
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そのまま、繋いだ。
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一瞬だけ、こっちを見たあと、
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何も言わなかった。
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それでよかった。
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その瞬間、
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「ああ、大丈夫だ」
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って思った。
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何が大丈夫なのかは分からないけど、
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まだ戻れると思ってた。
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でも、戻れなかった。
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そこからは、早かった。
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会う頻度が増えて、
距離がなくなって、
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言い訳が通用しなくなる。
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「これ、浮気だよね」
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今度は、笑ってなかった。
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「どうだろ」
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まだ、逃げてた。
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「ちゃんとしてない人、無理なんだよね」
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その言葉で、少しだけ現実に戻る。
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でも、
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「じゃあ、やめる?」
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そう聞くと、
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少しだけ間があって、
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「……それは、嫌」
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って言った。
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その時点で、もう終わってた。
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どっちも分かってた。
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ちゃんとしてないのに、
ちゃんと終わらせる気もない。
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それでも、続けた。
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ある日、急に言われた。
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「もう会わない」
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理由は聞かなかった。
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聞かなくても分かってたから。
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「ちゃんとできない人と続けるの、無理」
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そのままだった。
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何も言えなかった。
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言う資格がなかった。
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「彼女、大事にしなよ」
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最後にそう言って、帰っていった。
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それから、会ってない。
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連絡も来ないし、してない。
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彼女とは、まだ続いてる。
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別れる理由もないし、
嫌いになったわけでもない。
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でも、
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たまに思い出す。
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あのとき、手を繋いだ瞬間。
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あれが、全部の始まりだったのか、
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それとも、
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もう戻れなくなった瞬間だったのか。
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今でも、分からない。
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——あなたなら、あのとき、どうしてましたか。
読んでいただきありがとうございます。
この話は、
「浮気になる前に止めるべきだったのか」
それとも
「気持ちが動いた時点でアウトなのか」
をテーマに書きました。
もしよければ、
どこからがダメだと思うか、コメントで教えてもらえると嬉しいです。




