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必ず君を救ってみせる。〜推しが消える最終回は認めない〜  作者: 唯乃


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3/20

第三話

 陽菜と出会ってから数日間、俺は自室に引きこもり、ノートの束を黒いインクで埋め尽くしていた。


 書き連ねているのは、前世で擦り切れるほど見たアニメ『きらめき☆レグナリア!』の記憶。


 俺の目的はただ一つ。朝倉陽菜を死の運命から引き剥がすこと。


(手っ取り早いのは、彼女を魔法少女にさせないこと。…だが、神器の性質上、これは不可能だ)


 俺はノートに大きくバツ印をつけた。


 神器は、理屈ではなく「因果」で適合者を選ぶ。


 時が来れば、聖剣レグナリアは勝手に陽菜の手元へ現れるだろう。


 彼女の性格上、目の前で化け物が人を傷つけている場面に遭遇すれば、拒否することなくその剣を取ってしまう。そんな優しい子だ。


(なら、次の手だ。神器の能力を極力使わせない。あるいは戦闘自体を減らす。……そのためには、彼女が戦う前に、俺が裏で「境界獣」を削る)


 だが、最大の問題はそこではない。物語の舞台装置そのもの―邪神アザ=ルグナだ。


 原作通りなら、完全顕現した邪神を倒せるのは神器を完全解放した魔法少女だけ。


 そして完全解放の代償は、適合者の死。


(邪神の完全顕現を許せば、世界は滅び、結局は陽菜も死ぬ。かといって、今のままでは彼女が自分を犠牲にするしかない。……なら、どうするか。方策は一つしかない)


 俺はペンを走らせる。


(邪神を「不完全」な状態で引きずり出す。神器を完全解放せずとも倒せる弱体化した神。……それを実現するには、奴を復活させようとしている連中の懐に入るしかない、か…)


 いわゆる悪の組織、エクリプス。

 人間を依代にこちらの世界に顕現した魔族により構成された集団。その目的は邪神復活。そのために、彼らは境界獣を暴れさせ、人間の負の感情エネルギーを集めている。

 

 彼らの計画を内部から撹乱し、邪神復活の鍵となる負の感情エネルギーの集束を制御し、物語の結末を書き換える。


(そして、都合のいいことに。……「九条蒼真」には、エクリプスに入る資格がある)


 記憶を辿る。


 原作終盤、九条蒼真は、高位魔族ヴァル=ディグナの依代よりしろとして選ばれ、肉体を乗っ取られる。


 その事実を知った陽菜は泣き叫びながら、世界のため、九条蒼真を屠る。心が抉られるシーンの一つだ。

 

 だが、それはつまり、俺のこの身体は、ヴァル=ティグナとの高い適合性があるということに他ならない。


(原作では、奴に精神を乗っ取られて終わりだった。だが、今の俺には前世の記憶と、何より執念がある。……主導権を奪い合うなら、負ける気がしない)


 こちとら社畜として、理不尽な圧力を受け流し、神経を磨り減らしながら生き抜いてきたんだ。


 そこらの学生とは違って、異世界の魔族一つに屈してやるほど、俺の魂は安くない。


「……待ってろよ、ヴァル=ディグナ。お前の力、陽菜を救うための道具として、残さず利用してやる」


 隣の家から、陽菜の明るい声が聞こえてきた。

 窓の外を見ると、陽菜が洗濯物を手伝っており、こちらと目が合うと、満面の笑みで手を振ってきた。


 手を振り返しながら、俺は改めて決意を強くする。

 この光を絶やさないためなら、俺は怪物にだって成り果ててやる。



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