11話 出番前のウフフ
化粧鏡が並んだ控え室。
眞名はライブで乱れた髪を直していた。
「やらかしましたわね、マナマナ」
無表情で話しかけてきたのは黄色担当の二条冬華。眞名と同じ高校二年生。アイドルには珍しくお高いツンデレを売りにする金髪のクオーターはリアルでも大手私鉄オーナーのお孫様と言う、正真正銘のお嬢さまだった。
「ごめんなさい! だけどふゆっちだって私の足を思いっきり踏んだでしょ!」
「場所間違えたマナマナが悪いのですわ」
「とっても痛かったんだから」
「あら? 私のヲタクなら喜びますわよ」
「変態かっ?」
「変態ですわっ!」
冬華はあっさり認めるや、眞名を胸元に引き寄せた。
「なっ……」
「やっぱりマナマナは可愛いですわね」
「一応はアイドルですからねっ」
「控えめな胸も悪くないですわ」
「イヤなら他を当たってくれる?」
「先輩にはこんなこと出来ませんから」
「いつも仲がいいのね。私も仲間に入れて」
ふたりを同時に抱きしめながら呟いたのは桃山さくら。長身の大学三年生はふたつの頭をその豊かな胸に引き寄せて微笑みながら瞼を閉じる。
「ずるーい!」
そこに参戦したのは伏見花恋。背後からさくらに抱きついたツインテールは眞名よりひとつ年上の高校三年生。自称150cmの小柄な彼女はさくらのお腹をしっかりロックする。
「さなも!」
ぷくっと頬を膨らませ花恋の背後に駆け寄った小田原紗菜は大学一年。おっとりゆるふわ女子は花恋の首に両手を回してむぎゅっと抱きついた。
他の出演者もいる楽屋、カモミーユのメンバーは寒くもないのにひとつになって抱き合っていた。
「あらまあ。みんな抱き合っちゃって。そろそろ満足したかしら?」
後ろを振り返ったさくらは花恋と紗菜を呆れたように見つめる。
「まだで~す! さくらさん成分が足りませ~ん」
甘えた声の花恋。
「分かったわ。じゃああと3秒ね」
「足りませ~ん! あと10秒欲しいで~す!」
花恋の言葉にさくらは微笑むと10秒数えた。
「はい10秒! さ、いくわよ! 皆さんお待ちかねよ!」
『は~いっ!』
【すぐ消えるあとがき】
アイドルグループってどのグループも仲良しを演出してるんですが、実態は不明なんですよね。
そりゃあ実際は仲悪くても口外するわけないですから。
この辺はよく観察してると何となく分かっちゃうこともあるんですが、基本ヲタクには分からないところなんですよね。だって年頃の女の子が5人とか7人とか集まってるんです。学校での経験則でもみんな仲良しって難しいことは想像に難くありません。けどその辺うまくやってるとこは確かにあるようで。
だからこの一話は僕の理想を書いたもの、なのかもですね。




