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外れ女神レイピアと最強未満の最弱ヒーラー。〜〜アラサー転生者、冒険、青春、ほんのりチート。妹、イケメン化、時々ハーレム  作者: 白井 緒望


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第6話 本気魔術で父の庭木が消えた日。


 その様子を見ていたイーファが俺を指差した。


 「ママっ。いま、イオが叔母さんのスカートを脱がせようとしてたよっ!!」


 このチクリ魔め。

 っていうか、普通に兄を呼び捨てにするなよ。


 兄上と言え。

 兄上と。


 イリアは、俺を抱き上げた。

 フワッと良い香りがする。


 「イオ、ダメでしょ? そんなことしてたら、アレンお父さまみたいになっちゃいますよ?」


 優しい口調が、なんだか怖い。 


 「お母さま、今のつるんっていうのが魔法なんですか?」


 すると、イシュタルが答えた。


 「今のは、魔法ではあるけれど、魔術には至らない単なるマナの波動」


 魔法、魔術、マナ?

 それぞれ違う概念なのか?

 

 イリアは俺の頭を撫でた。


 「ごめんね。イシュ……。この子、魔法を見るのをすごく楽しみにしてたの。悪いんだけど、ちょっとだけお願いできないかしら」


 ナイスアシストだ、イリア。

 この後、アレンとイリアが喧嘩したら、俺は母側の味方をすると誓おう。


 イシュタルはクスクスと笑った。


 「わかりました。この辺りじゃ魔術なんて見る機会ないだろうし。魔術書も手に入らないものね。イリア姉さんにも見て欲しいし」


 イシュタルはキョロキョロすると首を傾げた。


 「でもここじゃ迷惑ね。ちょっと外にでようか」


 家の中じゃできないような魔術?

 なんだかすごそうだ。


 否が応にも期待してしまう。


 玄関ドアを開けると、イシュタルは庭の木を指差した。


 「あれでいいかな」


 庭の木は大木と言ってもいいもので、ちょっと蹴飛ばしたくらいではビクともしない。


 「はじめましょう」


 イシュタルは杖を地面につくと、両足を肩幅ほどに広げた。そして、何かを唱え始める。


 すると、風もないのにイシュタルの黒髪が舞い上がった。その瞳孔は青みを帯びている。


 魔術のことは分からない。

 だが、目に見えない何かが渦巻いていることだけは、わかる。


やがて、イシュタルの言葉が聞き取れるようになった。


 「水を司る悪魔王ウォースよ。我が声に応じ、我が望みを聞き届けよ。差し出す贄は我が命……、我が友。我が未来……」


 これは呪文?


 それにしても、なにやら物騒なことを言っているぞ。俺なんかの好奇心のために、命まで差し出す必要はないのだが……。


 「……そして、一族が血脈……」


 一族って……俺も含まれるのでは?


 まだアレもコレもしてないし、こんなところで死にたくないよ。勝手に俺を巻き込まないでくれぇぇ!!



 しかし、イシュタルは言葉を続けた。


 「敵の命運はここに尽きる。我に神に抗う力を与えよ……」

 

 すると、イシュタルの前に、ビー玉サイズの水の塊が現れた。


 なにあれ。

 ショボすぎる。


 神に抗ってアレかよ。

 正直、期待外れだ。


 しかし、イシュタルは言葉を続けた。

 杖を強く握り、木を真剣な眼差しで見つめる。


 「……|インフェルノス•アクアティクス《水滅地獄》!!」


 すると、イシュタルの1メートル程先に、五重の魔法陣があらわれた。


 辺りの空気が一気に集まる。

 風もないのに、イシュタルの黒髪が激しくなびいた。


 水玉は激しく回転する。

 どこかから水を集めて凄まじい水流になった。


 そして、定規で描いた一本線のように真っ直ぐ飛び出す。


 ドンッ!


 直後、大木の破片が舞い散った。


 木は跡形もなくなり、後ろの柵も吹き飛んだ。そして、柵の向こうの地面はえぐれていた。


 轟音で耳がキンキンする。


 これ、当たったら普通に人間死ぬよね?


 初めて見た魔術。

 それは、想像を遥かに越えていた。

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