表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハズレ女神と最弱ヒーラー。〜〜アラサー転生者、冒険、青春、ほんのりチート。妹、イケメン化、時々ハーレム  作者: 白井 緒望


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

40/46

第40話 英雄の贄と、最低な選択肢

 

 ……どうする?


 俺1人ではどうしようもない。

 なんとかして、リリス達と合流しないと。


 何かヒントはないか?


 洞穴の奥の方に何かの台が見えた。大きな石の台に何かが彫ってあり、周囲には動物の頭蓋骨が飾ってある。


 あれは、祭壇か?


 そういえば、シャーマンが贄がどうのとか言っていた。


 審問官のヤルバスの方を見ると、まだ鉄格子を掴んで怒鳴り散らしていた。こちらのことは全く気にしていない。


 今のうちだ。


 俺はゴブリンシャーマンに質問した。


 「あの祭壇は?」


 シャーマンは祭壇を指差した。


 祭壇の方からは、酷い悪臭が漂ってきている。周りには無数の人骨らしき物が落ちていた。


 頭蓋骨も複数見える。


 (コイツら、何人を犠牲にしたんだよ)

 


 「キキ(アレ、英雄復活、儀式。贄、沢山、イル。私の魔力、贄、足りない)」


 そういえば、酒を飲んでいる時にも、そんなことを言っていた。


 ところで、英雄とは何者だろう。


 人間の英雄……ってことはなさそうだ。

 

 だとしたら、ゴブリンの英雄か。


 シャーマンでこの程度だ。

 英雄でも、頭は悪そうだが……。


 とにかく、シャーマンは困っている。

 これはチャンスだ。


 俺は申し出た。


 「それでしたら、ポポポ教の秘術でお手伝いできると思います。みたところ、既にかなりの数の生贄を捧げたご様子。わたしの力があれば、後はあの赤毛の娘がいれば十分かと。シャーマン殿がご希望でしたら、今すぐ、儀式にとりかかれると思いますが……」


 ゴブリンシャーマンは黄色い歯をのぞかせて、ニターッと笑った。


 「キキ(それ、本当か?)」


 「はい。ポポポ神様に誓って、嘘は申しません。シャーマン殿は、サイファの神官などに本当に従いたいのですか?」


 シャーマンの神が何なのか知らないが、ヤルバスに邪教と言われ、快く思っているはずがない。


 シャーマンは眉間に皺を寄せた。


 「キキ…(人間、従う、屈辱。儀式、可能なら、サイファ…の神官、殺す)」


 って、俺も人間なんだが。


 「ほほう。サイファ神官を敵に回しても問題ないと?」


 「キキ(英雄、いれば、問題、ナイ)」


 ゴブリンの英雄というのは、そこまでなのか?


 まぁ、赤毛少女で生贄が完成するのは咄嗟についた大嘘だ。英雄のことを考える必要もないか。


 俺は両手を上げた。


 「では、さっそく取りかかりましょう。ですが、英雄復活はサイファにとっては邪神の儀式。妨害されるかも知れません。まずは、あの邪魔な神官をどうにかしませんと」


 「キキ(理解。あの神官、殺す)」


 ふふっ。

 所詮はゴブリン。チョロいぜ。


 すると、ヤルバスは異変に気づいたらしく、俺を睨みつけた。


 「おい、お前ら。何をしているっ!!」


 そう叫ぶと、ヤルバスは腰に差していたウォーハンマーを手にとって身構えた。


 しかし、ゴブリンシャーマンはそんなことを気にする様子もなく、手を上げて口笛を吹いた。


 ダダダッ。

 無数の足音。


 すぐに、どこからか20匹以上のゴブリンが押し寄せてきた。またたくまにヤルバスは囲まれた。


 シャーマンは、予めゴブリンどもを隣室に待機させていたらしい。   


 準備が良すぎる。

 この展開を予想していたとしたら、ゴブリンは俺が思っているほどバカではないのかも知れない。



 ヤルバスはハンマーでゴブリン数匹を叩き潰した。必死の形相で聖印を切り、魔法を唱えようとする。


 しかし、先頭のゴブリンはナイフでヤルバスの脇腹を刺し、次のゴブリンは、手に持っていた布切れをヤルバスの口に強引に詰めた。


 ヤルバスは声が出せない。魔法が唱えられないと分かると、鈍器をもったゴブリン達が一斉に飛びかかった。


 意趣返しだろうか。

 餅つきのように執拗に殴られている。


 ヤルバスは必死の形相で群れから這い出そうとした。しかし、底なし沼にでも飲まれるかのように、手を伸ばした姿勢のまま、ゴブリンの群れに飲み込まれていった。


 群れの中からヤルバスの声が聞こえていたが、1分もせずに静かになった。


 とりあえず、審問官の処理は終わった。

 審問官を殺したのはゴブリンだ。ゴブに責任転嫁もできた。 


 「キキキッ」


 シャーマンの声でゴブリン達が散り散りになった。後に残ったのは、ヤルバスは無惨な死体だった。


 クズな審問官だ。

 哀れな最後だが、自業自得か。


 

 シャーマンは俺の方を見た。


 「キキ(邪魔者、消えた。儀式、する)」


 「儀式を行うために助手達を解放して欲しいのですが……」


 俺は周囲を見渡した。

 まだ相当数のゴブリンがいる。


 今、尻尾を出すのはマズイ。

 アイシャとリリスは、ゴブリン自身の手で解放させる必要がある。


 シャーマンは俺を信じ切っているらしく、すぐにリリス達を連れてきてくれた。生贄台の方にいき、なにやらゴブリン達に指示している。


 「無事で良かった」


 俺がそう声をかけると、リリスが手首を摩りながら答えた。


 「酷い目に遭いました。ゴブリン達……思いっきり縛るし、手首が痛いです。臭いし。ほんとうにアイツら最悪」


 ……そもそものキッカケは、貴女がいきなり魔法でゴブリンを吹っ飛ばしたからなのだが。


 アイシャも手首を摩っている。

 首を傾げると、質問してきた。


 「イオさま。ありがとうございました。これからどうしますか?」


 それは、もちろん。

 逃げるに決まっている。


 審問官がきて、ゴブ大集合のこんな騒ぎになるとは思ってなかったし。たとえ単体は弱くても、20匹以上のゴブリンに襲われたらひとたまりもない。


 こっちには女性もいるのだ。アイツらに捕まったら、どんな展開になるか想像するまでもない。


 シャーマンは、祭壇の前で棒を振っている。


 儀式の準備に夢中なようだ。合間に身振り手振りで、ゴブリン達に指示を出している。ゴブリン達もせわしなく動き回っていて、誰も俺たちを気にしていない。


 (今のうちなら、余裕で逃げられそうだ)



 俺はアイシャに答えた。


 「今のうちに逃……」


 すると鉄格子の牢屋の辺りにゴブリン達が集まり、騒いでいる。


 「わ、わらわに何をするっ。ひっ、胸に触るでない」


 どうやら、生贄にするために、赤毛の少女を移動させるらしい。ゴブリンは少女の髪の毛を掴むと、引きずり倒した。


 こんな巣穴で欲求不満なのだろうか。

 ゴブリンは少女を押さえつけると、太ももを舐めまわした。


 その様子を見ていたシャーマンが言った。


 「キキ(贄、処女、条件。それ以外、好きに、しろ)」


 すると、ゴブリン達から歓声が上がった。

 金属同士が擦れるような不快な声が、洞穴の壁で反響する。 


 「キーッ!」


 ゴブリンの中の1匹が少女に馬乗りになり、少女のスカートを剥ぎ取った。


 「や、やめ……。そ、そこのお前っ。わらわを助けろっ、助けてぇぇ」


 赤毛の少女は、明らかに俺のことを見ている。

 

 気の強そうな青い目は、今は恐怖に怯えていて見る影もない。


 いや、でも。

 

 ここであの子を助けたら、ゴブリンの儀式を邪魔したことになる。全てのヘイトが俺たちに来るぞ?


 あの数に襲われたら、ひとたまりもない。


 こっちにも女子はいるのだ。見ず知らずの少女のために、2人を危険な目に合わせることはできない……。


 シャーマンの機嫌を損なわなければ、無傷で出れる可能性すらある。



 可哀想だけど、見捨てるしかない。



 振り返ると、リリスとアイシャが無言で俺を見つめていた。……2人の視線が痛い。


 期待と信頼の眼差し。


 この視線……きっと、俺が少女を置き去りにしようとしてるなんて、夢にも思ってないやつだ。



 どうしよう。


 いくら苦手なタイプでも、ゴブリンに乱暴されるのは可哀想だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ