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ハズレ女神と最弱ヒーラー。〜〜アラサー転生者、冒険、青春、ほんのりチート。妹、イケメン化、時々ハーレム  作者: 白井 緒望


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第33話 外れ神ですが何か?

 

 ……何も音がしない。

 咄嗟にさとる違和感。

  

 ここは、違う世界だ。



 これは夢か?

 見慣れぬ風景。


 果てのない空と真っ白な石柱。

 どこかの神殿らしい。


 どうやら俺は、夢を見ているらしい。



 俺はベッドで寝ている。

 毛布の中で、何やらもそもそと動いた。


 毛布を退《よ》けると。

 女の子と目が合った。


 銀髪ロングで碧眼の女の子。

 肌は真っ白だ。年齢は16,7歳に見える。


 布を巻いただけのような簡素なドレスを着ている。そこそこ巨乳だ。


 ……人間離れした美貌。



 女の子は笑顔になった。


 「……やあ」


 「だ、だれ?」


 すると、少女はむくれた。


 「外れ神ですが、なにか?」


 外れ神?

 ……該当者は1人しかいない。


 「レイピア……さまですか?」


 いや、きっと違うよな。

 レイピアは理を重んじる理知的な女神のハズだ。


 目の前の人、聞いていた話と全然ちがうし。


 だって、この子。

 第一印象、明らかにイーファ寄りの生物だぞ?


 夢が壊れちゃうから。

 お願い、……否定して。


 しかし、残念なことに、少女は深く頷いた。


 「ほほぅ。えらいえらい。ちゃんと『さま』をつけておるのぅ」


 え?

 正解なの? まじで?


 やめてよ。


 (ってか、いつも呼び捨てにしてるのを気にしていたらしい)


 「んで、今日は何のご用で?」


 レイピアは腕を組んだ。


 「汝は、大切な信者じゃからな。夢に出てやるなんて、特別扱いもいいところじゃ。感謝せよ」


 レイピアは胸を張った。


 「信者? 誰がですか?」

 

 すると、レイピアはベッドから転がり落ちた。


 「ち、違う……の?」


 瞳が潤んでいる。


 「すいません。意地悪しちゃいました」 

 

 「ほっ……」

 レイピアは胸に手を当てた。


 「今後は、信じられるように善処します」


 「……泣くぞ」


 「え?」


 「それ以上、イジメると泣くぞ!」


 レイピアは口を尖らせた。


 なんだかノリが軽い。

 聞いてた話と全然違うじゃん。


 もっと、こう……。白衣が似合う感じの、赤縁メガネに巨乳の大人っぽいお姉さんを想像してたのに。違いすぎる。


 俺の無垢な憧れを返せっ!!


 だが、レイピアは悪びれる様子もなく、平常運転で続けた。


 「ん。あぁ。忘れておったわ。汝、今日で14歳じゃろ? なのでプレゼントを渡しにだな……」


 「ありがとうございます。ちなみに、どんなものをくれたんですか?」


 神様からのプレゼント。

 否が応でも期待してしまう。


 「……それは、起きてからのお楽しみじゃ。せっかくのご対面じゃ。何か聞いておきたいことはあるか?」


 

 せっかくだから聞いておきたい。

 ずっと気になっていたこと。


 「レイピア様は、医神じゃないですか。他の癒しの神様とは違うんですか?」


 「似たようなものじゃな」


 軽っ。

 同じなのかよ。


 レイピアは手の甲に顎を乗せると、続けた。


 「まぁ、強いて言えば、お主に授けたヒールは、癒しの奇跡ではなくて究極の治療なんじゃよ。だから、未来永劫、人知の及ばないものは治せない。要は、医術の可能性の先取りじゃな? ……他の魔法も、基本はそういう方向性ということだ」


 「まったく分からんです。質問して、むしろ疑問が増えたんですけれど」


 すると、レイピアはヤレヤレという様子で、ため息をついた。


 「百聞は一見にしかずじゃ。目覚めたらレイピアの聖典を確認してみるがいい」


 レイピアの聖典?

 なんじゃそりゃ。


 あ、もしかして。

 リリスがくれたボロい本のことか?


 たしかに、この人の説明よりは、そっちを見た方が早そうだ。


 「それと最後に。おぬしのファーストキスは、ボクのものじゃ♡ 主神と下僕は深く繋がっておらんとな……」


 (下僕? いま、コイツ、俺を下僕っていったよね?)


 レイピアはぐーっと唇を近づけてくる。


 チュ



 (まじかよ。この人、女神というより、小悪魔じゃん……)




 ********



 目を開けると、目の前にリリスの顔があった。



 「わぁぁぁ。リリスさまっ」


 俺は驚いてベッドから落ちてしまった。


 リリスは頬をふくらませた。


 「そんなに嫌がらなくてもいいじゃないですか。それに、イオのベッドに潜り込んだら、そっちから……、いや、なんでもないです」


 「そ、それはごめんなさい」


 「あんなことされて謝られると、なんか傷つくのだけれど」


 あんなことって、なんだよ。

 めっちゃ気になるんですけれど。


 「それで、今日はどういうご用で?」


 「イオは今日で14歳でしょ? 4年間、よく頑張りました」


 「ありがとうございます」


 リリスは俺の頭を撫でた。


 「イオが最近、アイシャばかりで相手してくれないから……構ってほしくて……こほん。お誕生日のお祝いを伝えにきたのです」


 「それはそれは、ありがとうございます」


 「まぁ、思わず、お誕生日プレゼントに、わたしの初めてを差し上げることになってしまったわけですが」


 (何の初めて? 変にボカさないで。妄想がややこしくなっちゃうから)


 アイシャと仲良くなってから、リリスがやきもちを焼くようになった。放置してると、こうしてお忍びで、ベッドに潜り込んでくる。


 10歳の頃は、26歳の大人のメンタルが騒いでいただけだったけれど、14歳の今は、ちょっとヤバい。


 本気で間違いを起こしてしまいそう。


 いや、相手からベッドに潜り込んできてるのだがら、あながち過ちでもないのかも知れないが。



 あ、そういえば。

 レイピアのプレゼントって何だろう。


 あたりを見回すと、すぐに分かった。

 テーブルの横に、見たことのない杖が立てかけてある。


 (あきらかにアレだよね)


 「ちょっと。まだ話は終わってない……。ちょっとイオ。その杖はなに? ちょっと」


 俺はリリスの制止を無視して、杖を手に取った。


 古いがよく手入れされている。

 柄もしなやかで、高級そうな錫杖だ。


 金具のところに、なにやらメモがついていた。

 

 むかし、PCにペタペタ貼り付けていたヤツに似てる。


 メモは俺の字だが、もちろん、書いた覚えはない。どれどれ……。


 「タンパに杖をあげます。これでサイファをぬっころ……こほん。高級品なので大切に使うように。それと、もうひとつ。ありがたい祝詞は聖典で確認してね。 きっと、これらが、あなたを幸福に導くことでしょう。追伸:早くボクの信者になって♡」


 インチキ宗教の勧誘みたいな文言だ。

 信者じゃない、って言ったことを地味に気にしているみたいだ。


 改めて視線を上げると、先端の赤い宝玉の縁に、リングが沢山ついている。リングにはそれぞれ色の違う宝玉が一つずつついていて、おのおのが別々の速度で回転している。


 天体軌道模型みたい。


 内側から三つ目のリングに付いている青い宝石。地球?


 太陽系に見える。


 (異世界で……太陽系?)


 神様からのプレゼントだし、大切に使おう。


 レイピアさま。

 ありがとうございます!!


 すると、リリスが杖を指差しながら、何か言った。指先がプルプルと震えている。


 「イ、イオ。……それは?」


 「神様からのプレゼントらしいです。リリスさまは、これを知ってるんですか?」


 「それは太陽の錫杖よ。ナインエッジの英雄の1人、サイファの司祭が持っていた伝説の杖で、サイファの教皇でさえ、触れることが許されていないものなの。いまは、大聖堂に大切に保管されているはずなのだけれど……」


 えっ。これ、レイピア様が俺のために作ってくれた杖じゃないの?


 「それって、これはサイファ教徒の大切なものってことですか?」 

 

 リリスは大きく頷いた。

 なにやら、額に汗をかいている……。


 「至宝中の至宝よ。サイファ教の伝説の武具なのよ?」


 「なるほど。俺がこれをもってると少しマズイですか?」


 「少しどころの騒ぎじゃないわ。サイファ教徒にとっては、それのためなら喜んで死ねるくらいの宝物なの。と、とにかく、それは隠しておきなさい」


 リリスは爪を噛んだ。

 本気で困っているらしい。


 (神様。プレゼントって盗品じゃねーか!!)


 あっ、メモには続きがある。

 俺はメモの続きを読んでみた。


 もしかしたら、返却方法が書いてあるかも知れない。


 すると、テレビ通販の注意書きのような、とても小さな字で何か書いてあった。


 「あ、その杖。へんなマークが付いてるからね。ほんと、ボクの杖に変なマークつけるとか、あのクソ女神。……えっと、ボタンを押せば大丈夫♡」


 杖の裏をみる。

 すると、見慣れた聖印がついていた。


 こ、こ、これは。

 ……サイファ神の聖印だ!!


 んで、ボタンって?


 杖の持ち手をよく見ると、明らかに無理にドリルでこじ開けたような穴がある。


 そしてそこには、違和感満点の真っ赤なボタンが付いていた。


 レイピアさま、杖に穴開けたの?

 これ、絶対に後付けボタンだよね?


 ポチ……。

 とりあえず、ボタンを押してみた。



 すると、ブーンって音がした。


 サイファの聖印がピカピカと光って、レイピアの聖印に変わった。そして、もう一度押すと、元のサイファ聖印の杖に戻った。


 (盗品の偽装機能かよ……)


 幸せに導かれるどころか、どう考えても地獄への片道チケットなのだが。


 

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