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外れ女神レイピアと最強未満の最弱ヒーラー。〜〜アラサー転生者、冒険、青春、ほんのりチート。妹、イケメン化、時々ハーレム  作者: 白井 緒望


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第10話 レイピア様の愛が重すぎる件。

 俺が文字を教えてとお願いすると、2人とも、すごく喜んでくれた。


 互いの手が空いた時に、俺とイーファに、熱心に文字を教えてくれる。


 テーブルでニコニコしているアレンを見て思った。


 向こうの父さんにも、もっと勉強したいって伝えれば良かった。


 「……きっと、喜んでくれたんだろうな」


 日本から通算すれば、今の俺は当時の両親と変わらない年齢なのに、分からないことだらけだ。



 コロン。


 ペンが転がる音で視線を戻すと、アレンと目が合った。



 「なんだ。俺を喜ばせたいのか?」

 アレンはそう言うとニヤニヤした。


 なんだか、妙に腹が立つ。


 「イシュタルお姉さんが、父さんのことを話してましたよ」


 「えっ、なになに?」


 アレンは身を乗り出した。

 ふっ、中身アラサーをなめるなよ。


 俺は咳払いをして言ってやった。


 「迷惑だから、もう個人的な誘いはやめてください、だって」

 

 すると、アレンは机につっぷした。

 分かりやすい性格だ。


 ——ふっ、勝ったぜ。




 それから1ヶ月は、暇さえあれば机にいた。


 熱心な教師のおかげもあり、俺とイーファは、読み書きの基本を覚えることができた。軸になる知識が身につけば、あとは個別に質問をして覚えていけばいい。


 さすが若いだけある。

 この身体は抜群に物覚えがいい。


 今日はイリアが先生だ。


 「母さん、ここの記載はどういう意味ですか?」


 すると、イリアは俺を見つめた。


 「もう一回、『母さん』って呼んで」

 呼ぶたびに、母さんは幸せそうな顔をする。


 すると、隣に座っているイーファが手を上げた。


 「ママ、大切な質問があります!」


 改まって何だろう。

 俺は唾を飲み込んだ。


 「『おとこの娘』ってどういう意味ですか? これが分からないと、本が読み進められないのです」


 ……コイツ、どんな本を読んでいるんだよ。


 すると、イリアは机につっぷした。


 アレンもイリアも大変だ。

 やっぱ、親ってすごいわ。


 イーファと話してると、たまに渡貫と話してるような気分になる。


 でも、渡貫だったら『おとこの娘』なんて初級の質問はしないよな?


 気になってイーファのノートを覗き見た。

 すると「攻め」、「受け」などの騎士っぽい用語が並んでいた。


 なんだ、イーファも真面目に勉強してるじゃん。


 しかし、ページをめくると「ネコ」、「□□」、「△女子」、「貴◯人」、他にも沢山の単語が並んでいた。


 コイツ。自分用ノートなのに伏せ字にしてるよ。一体、何を書こうとしたんだ。


 ……俺の妹は、思った以上にヤベーヤツかも知れない。




 それからまた数日後。


 おかげで、簡単な本なら1人で読めるようになった。


 最近はイシュタルに借りた本を読んでいる。

 ちょっと難しいが、辞書を使いながら、なんとか意味を理解していく。


 さて、今日は第4章のマナ量についてだ。


 どれどれ。

 本を開くと字と図形がビッシリだった。


 「……そもそも、マナ総量は血脈に応じて固定されている。しかし、この世界には幾つかの命を持っている生物が存在し、生と死を繰り返すことでマナ総量を増加させた事例が報告されている」


 生と死?


 もしかしたら、俺のマナ量が多いのは、転生が関係しているのかもしれない。


 それにしても、生と死を繰り返す魔物ってなんだよ。この世界には、そんな恐ろしい生き物がいるのか?


 マナの増加よりも、むしろそっちが気になる。


 ま、ヒーラーの俺には関係ないか。

 そんなヤバいのに会うわけないし。


 ページをめくる。


 「発動速度については、脳の魔法領域の処理速度がなんたらで……要は反射神経のように生まれ持った資質ということか」



 イシュタルが家庭教師になってからは、魔法の基礎を教えてもらって、次の講義までに関連する宿題を終わらせる。その繰り返しだった。


 急がば回れ。

 簡単な攻略法がないのは、どの世界も同じらしい。



 ある講義で。


 俺は手を前に出して、イシュタルに教えてもらった呪文を唱えた。


 「……焼き尽くせ……ファイア!!」


 「…………」


 「ファイアッ!! ふぁいあッッ!!!! んっ、んっ、んーっ!!!!」


 必死に叫んだが、火炎どころか火花すらでない。


 「あれぇ?」


 イシュタルは俺の手の平に触れながら、首を傾げた。


 「うーん。なんでだろ。イオは他の系統の魔法は使えなさそうだね」


 調べてもらって分かったのは、俺には他の系統の魔法を全く使えないということ。初歩の初歩の魔法は系統に関係なく使えたりするものらしいが……俺にはサッパリだった。


 「どうしてなの?」 


 「医神レイピアは独占欲が強い神様なので、嫉妬で阻害されているのかも」


 「神様なのに嫉妬とかするの?」


 「あまりないけど……ね?」

 イシュタルはウィンクした。


 独占欲に嫉妬って……。神様なのに欲まみれじゃねーかよ。人間味ありすぎだろ。


 いや、だからこそレイピアなんて名前なのか。

 

 イシュタルは顎に指を添えて、部屋の入り口でくるくると歩いた。


 「まぁ、どちらにせよ、主神との契約が強固なのは確かね。ウンウン」


 なんかこの人、時々、かなり適当な感じがするのだが……大丈夫なのかな。


 まぁ、でも。


 どうやら俺は、カス職のカス神に愛されていて、他の属性魔法は一切使えないらしい。


 ふっ。愛が重いぜ。



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