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君に百合の花束を!  作者: 鈴木 澪人
見つけた編

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3/4

すずなのクリスマス・イブ

 毎年クリスマスのお話をどこかで書いていると思うんですが・・・。

今回はこちらのお話で書いてみました。


いつもより少しだけ長文です。

一人称と三人称が混じっていて読みにくかったらすみません。

恋愛についてはタグをご確認の上お読みください。

お疲れさまでした~。すずなは後輩たちと同じタイミングで美容院を出た。


「すずな先輩!これから飲みに行くんですけど、一緒に行きませんか?」


後輩たちの代表が私に声をかけてきた。


ん~。残念、今日は予定があるので無理かな~。


「ごめんね!また次の機会に飲み行こうね!」


私は申し訳なさそうに後輩たちに謝った。

すると、後輩たちは一斉に首をブンブンと横に振って


「大丈夫です!今度楽しみにしてます!」

みたいな内容を口々に言ってくれた。可愛い後輩たちめ!今度お姉さんが奢ってあげようと心の中で誓った。


その後すぐ分かれ道になったので再び「お疲れ様でしたー!」と大声で声をかけられた。

道行くサラリーマン達の冷たい視線が少し笑えた。


でも、私の服装を見ると怖いのか目を合わせてはくれなかった。

目的地まで何か曲を聞こうかなと思い無線のイヤホンを取り出してると


「相変わらず、後輩たちに好かれてるのな」


とすずなの上司でもあるシモンに後ろから声をかけられた。


「シモンさん、お疲れ様です」


私は持っていたイヤホンをポケットに突っ込んでシモンさんが隣に来るのを待った。


「で、今日は恋人にでも会いに行くの?」


普通の職場ならハラスメントと訴えられてもいいようなプライベートを平気で尋ねてくる。


「そんな風に見えましたか?」


すずなは瑠香に合わない日はそんなに気合をいれておしゃれをしないので一目見て直ぐにわかるはずなんだけどな~。と思いながら歩き始めた。


「ん?なんとなく俺が知りたくなっただけ」


「・・・あんまり部下にそんな発言するの宜しくないですよ?」


自分じゃなかったら勘違いする女の子もいると思いますよ。とやんわりとクレームをつけた。


「職場が修羅場とかシャレにならないんで・・・お外で遊んでくださいね」


「もちろん、こんな話をするのはすずなちゃんだでだよ~」


だって言っても靡かないでしょ?とシモンは笑いながら言った。


「分かっているんだったら、面倒なので辞めてくださいね~」


「ハイハイ」


 シモンも同じ美容師なので自分を良く見せる方法を熟知していた。

少し前までは重めの黒髪に眼鏡を掛けたアンニュイなお兄様を醸し出していたのに突然髪を短く切って明るめのミルクティー色にしてかわいい弟キャラのイメージで服もスタイリングしていた。


シモンの方が年上なのにすずなと並ぶと姉と弟みたいな雰囲気になる。


 一時期シモンがすずなにしつこく言い寄ってきたので面倒になったすずなが


「一回ヤレば気が済みますか?」とキレ気味に答えると、シモンは表情を変えながら


「何言ってんの?恋愛はそこがゴールじゃないでしょ!すずなもっと自分を大切にしないといけないよ!」と説教をくらった事があった。それ以降シモンがすずなに本気で口説くことは無くなったが、コミュニケーションの一環とでも言いたいのかこのようなやりとりをしてくる。


 すずなは正直迷惑だった。


二人はしばらく無言で歩いていたが


「今日は、ちょっと相談を兼ねての飲みですかね」


と珍しく答えた。


「そうか・・・。まぁ~明日はクリスマスだもんね」


と言いながらシモンが上を見ると街路樹が綺麗なイルミネーションに包まれていた。


「そうですね・・・。」


実はシモンが上を見るまですずなはイルミネーションに気付いていなかった。


「まあ、俺よりも信頼できる人に相談するんだからきっと言いアドバイスもらえるんじゃない?」


 いやいや、シモンさん恋愛主義すぎるからぼやくとやっぱり面倒になりそうなんだよね。


とずずなは心配してくれている上司を少しディスっていた。


「じゃあ、俺はここから電車に乗るわ〜。また明日ね!おつかれさん」


「お疲れさまでした~」とすずなは返事をしてシモンと別れた。


 私は、上司と別れた後再びポケットからイヤホンを取り出してスマホで曲を流し始めた。

周囲がカップルばかりに見えるのは気のせいだと思いたいが・・・そうでもなかった。


「イルミネーションかぁ~」


私は街路樹のイルミネーションを見ながら歩いていた。好きな曲が流れ始めているのも重なって少しだけ心が浮いた。この長い片思いが続いている間には滅多にこない感情だった。


街路樹を進むごとに色が変わっていくのを見ながら今日の目的地のバーに着いた。


 シンプルなドアは一見バーには見えないが所謂恋愛対象がマイノリティーな女性向けのバーだった。


「いらっしゃ~い」


 私は、聞きなれたママの声を聞くと思わず笑顔が漏れた。


「もぅ、私にそんな笑顔を振りまかないで。あの子が焼きもちやいちゃうでしょ!」


入店してすぐに怒られた。ちょっと悲しかった。


「ちょっとママ、さすがにすずな相手に私は焼きもちなんか焼かないわよ!」


奥で料理を作っているパートナーに今度はママが怒られていた。ちょっとざまぁと思った。


「すずな!あんたいま、ざまぁ~って思ったでしょう?分かるんだからね!」


「ごめん、ごめん。カウンター空いてる?」


「はいはい、空けるわよ。どうせ今日もグズグズとぼやきにきたんでしょ?お店が暗くなっちゃうわ。もぅ!」


とママは怒りながらもすずながいつも座っている特等席を用意してくれた。


「どうせ、仕事帰りに何も食べずに来たんでしょ。私のハニーの手作りのご飯でも食べなよ」

とママが言ったタイミングで奥から綺麗な女の人が美味しそうなワンプレートを持ってきてくれた。

「はい、すずなちゃんこれどうぞ」


「ランさんありがとうございます!」


「いいのよ~。すずなちゃんはもう少し食べないと駄目よ~。あの子はああ見えてすごくすずなちゃんの事心配しているからね」


とランさんはママの方に少しだけ視線を寄こした後、バックヤードに戻っていった。

一品ものの仕込みの続きをするみたいだった。


「もう!ランったらすぐにしゃべっちゃうんだから!後でお仕置きしないとだわ!」

と少し嬉しそうにニヤリと笑いながらすずなの所に戻ってきた。


「でも、ランの言う通り、すずな、あんたもう少し食べなよ!美容師って立ちっぱなしなんでしょ?」


ママが私の腕をそっと掴んで腕周りを確認した。


「ありがとー。でも、今って座りながらカットするから意外と大丈夫なんだよ~。でも、いただきます。」


私は小さく手を合わせてからスプーンで食べ始めた。

一人暮らしをしていると時々食べることが面倒になるのでそのまま寝たりするのは少し控えようかなと思った。


「で、今日はどうしたのよ。イヴでしょ?こんな所でグダグダしている場合じゃないんじゃないの?」


ママは私が話し出すのを待つことができずに質問してきた。


「ん~。そうなんだけど、この前ちょっと失敗しちゃって・・・」


私は、ご飯を食べつつ前回瑠香が家にお泊りに来た時の話をした。

ママは少し眉間に皺を寄せて


「そうね・・・。ちょっと焦っちゃったのね。すずらしくない。どうしたの?」


と苦笑いをしながらママが私に話しの続きを促した。


「あ~。ん~。」私はそのときの気持ちをなんて説明していいのか分からなかった。


 すると、その時お店の子達がスマホを見ながらワイワイと盛り上がっていた。

それを見ながらママは苦笑いをした。


「もう!営業前は自由にしていいって言ってるけど少し騒ぎすぎよね。なんかあの子達動画サイトのVTuberにハマっているらしくて、今も配信してるのかな?

「ほら!もうすぐ営業開始するからスマホ片づけなさいよ~」


とママが手を叩きながら女の子たちに注意すると


「は~い」と声を揃えてキャイキャイ言いながらそれぞれの仕事に付こうとしていた。

そのうちの一人の可愛らしい女の子がこちらにやってくる。


「あっつ、ママとすずなさんってなんか素敵なカプですよね~」

と頬を染めながら話しかけてきた。


私は内心ゲッと思いながらも愛想笑いをしていると


「ちょっと~、アマミは想像力豊か過ぎよ!私達のどこがお似合いカプなのよ~。どう見ても反発しかないわ!ねぇ!すずな」


私は添え物のパスタを口に加えていたのでうんうんと頷く事しかできなかった。


「そうそう!ちょっと見てくださいよ!今私達の間で少しバズってるVTuberがいて、今日は恋バナ雑談だったんですよ!」


と言いながら私とママに見せられたのは、今瑠香も推しているあのVTuberだった。

私は無意識に口元を引きつらせながらパスタを飲み込むと、近くにあった水でごくりと流し込んだ。


それを近くで見ていたママが「えっ」という表情をした後


「すずな、そんな食べ方したら喉に詰まるわよ?もっとゆっくり食べな。もう営業始まるけど追い出さないわよ」と私の背中をやさしくトントンと叩きながら声を掛けてくれた。


 実は、少しだけ急に流し込んだので涙目になっていたままママに向かって「ありがと」と伝えると、アマミは「グフッ。尊い」と呟いていた。


「ママミも営業の準備を始める!ほらほら!」


とママに言われたので「は~い」と渋々返事をしながら持ち場に向かった。

アマミが遠ざかったのを見た後、ママが小さく溜息をついた。


「あの子達があまりにも盛り上がってるから一度その恋バナ雑談ってやつのアーカイヴをみたんだけど・・・。ねぇ~。恋愛の種類によって名前がついてるのはちょっとしんどいわよね」


と困った表情をしながらグラスを並べていた。


「まあ、異性から見ると私達の恋愛事情は異色だという事は理解できるんだけどね。逆のパターンもあることだしね」


ママの言葉を聞きながらすずなも確かにそうだなと思った。女性が男性同士の恋愛に名前をつけて特別な雰囲気を出してしまっているということだもんな。


「まあ、いつかそういう枠に囚われない時代がくることを願って今日も楽しくお仕事しようかしらね」


すずなはママの言葉を聞きながらぼんやりと瑠香の事を思い出していた。

あのVTuberのせいで強制的に思い出したので。ちょっとイラついた。


「ママ、実はね。あの子もそのVTuberにハマっているのよ」


すずなはいつも飲んでいる梅酒を飲みながら呟いた。


「えっそうなの?それはまた偶然ねぇ。こんな事言うのは失礼だけどあまり人気な子じゃないわよね?」


動画サイトを見ているとある程度の有名なVTuberは誰でも目にすることがあるが、瑠香の推しの子はまだまだ駆け出し中というところだった。


「でも、このVTuberって同性の恋愛をよくトークテーマにしているみたいだけど、すずなの()()()()()()()()も少しは興味があるってこと?」


ママがニヤニヤしながらすずなを半分からかってきたのですずなは半目になりながら梅酒を一口飲むと


「ママ、その片思いの子にかかっている枕詞なんとかしてくんない?」


「だって、もう何年片思いを患ってんのよ・・・。」


「はぁ~、何年だろ。数えたくない」


すずなはそう言うとカウンターに伏せた。ヒンヤリとするカウンターが頬に当たって気持ちがよかった。


「辛い・・・。苦しいよぉ~」カウンターの冷たさがそのまま自分の心まで冷やしていく感覚だった。


ママも切ない表情をしながらそっとすずなの頭を撫でた。


「すずなは良い子なんだけどね~。難しい問題だねぇ~」


「はぁ~。クリスマスかぁ~」


ママのお店の内装もクリスマス一色に飾られていた。


「まぁね~。この時期は儲かるから~」とカウンターとラブラブしているすずなの前に人差し指と親指で輪っかを作り、ウフフと笑った。


「ですよね~。」 すずなは起き上がり客が入り始めた店をぐるりと見渡した。


「まあ、ゆっくりしていきなさい!私もお仕事してくるわ!」と言ってママは他の客の相手をしにいった。


 ママも忙しいときに私に付き合ってくれて本当に感謝しかないよね~。と思いながらポケットに入れていたスマホを取り出した。


「あっ、誰だろ?」


スマホの上部にはSNSの通知が付いていた。

すずはな何も考えずにそのアプリを開くと


《ルカ》

   { すずな元気? 明日開いてる? ご飯食べに行かない?)



すずなは思わず立ち上がり、スマホを凝視すると奥の方で他の客の相手をしているママに向かって大声で


「ママ!私帰るね!ご飯ご馳走様でした!」

というとお金を置いて風の様に帰っていった。


ママは一瞬固まった後、今まで話していた相手に苦笑いをしながら


「ごめんね。あの子何か良い事はあったみたいなんだけど・・・。お騒がせしちゃったね。これは私の驕りよ!」


と言いながら可愛いチョコが入ったカクテルグラスをスッと差し出した。


「クリスマス・イヴはこれからなんだからいっぱい楽しんでいってね」


とママの楽しそうな声が店の中に響いた。


 すずなは、家に戻るともう一度そのSNSの内容を確認した。

前回の事があったから避けられるかもしれないと自分からは連絡するのをためらっていた。

さっきまで、ママのお店で恋愛しんどいぃ~と言っていたのに瑠香のメッセージで天に昇るように気持ちが高鳴った。


 明日は体調を準備万端にしたいのですぐにシャワーに入りスキンケアをバッチリした後、ベッドにもぐった。寝る前に少しだけ動画を見ようとスマホを触っていると・・・。



「そうだよね~。あっ、初見さん、いらっしゃ~い!ミツメ耀(てる)だよぉ~。ボクは狐の可愛い男の子♩ご挨拶は《こんツメテル!》さよならの時は《テルサラバ!》もし良かったら使ってみてね♪

ん?根詰めてる?大丈夫?あんまり無理しちゃだめだよ?今日はね・・・。」


すずなは、そっとアプリを閉じた。

そして、目も閉じた。

何も考えない。明日は、瑠香とクリスマスデートだ!

「瑠香! あれの(ミツメ耀)どこがいいのぉ!!!!」

すずなはベッドの中で叫んでしまった。



最後までお読みいただきありがとうございました。

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