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君に百合の花束を!  作者: 鈴木 澪人
見つけた編

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2/4

佐伯 翼

 最初から最後まで胸糞仕様となっております。ご了承ください。

そんな気分じゃないなとか、地雷が~と思われた方はそっと閉じてください。

 「ねぇ、翼。私、このドレスが着たい〜。似合うでしょ~」


ウエディングドレスをずっと試着している女にうんうん、似合うと適当に相づちを送る。


「本当に、奥様は何を着ても似合いますね」


担当の女が営業スマイルで声を掛けている。


「えぇ〜そうかなぁ〜。でも、少しサイズを気にしなくちゃいけなくてぇ~」


「そうですね。でも、このドレスは綺麗なラインが出せますよ」

「うわぁ〜。本当だぁ〜。翼ぁ〜。これも試着していい?」


「ああ、ミリナの好きに決めるといいよ。ゴメン、ちょっと仕事のメール来たから席外すわ」


俺は妻になる予定のミリナをその場に残し店を出た。

仕事のメールは半分本当で半分嘘だ。永遠に終わらない結婚式の衣装決めに付き合うのがしんどくなった。


店を出るときに軽くミリナの様子を確認したが営業の女性と楽しそうに話しているので少し時間をかけても大丈夫だろうと思いながら職場で渡されているスマホを確認する。


一応仕事の内容なので周囲に人がいないことを確認したあと、壁にもたれて後輩に簡単な指示とそれに伴う上司への報告をした。今の上司は少し俺に当たりがキツイ時がある。まあ、理由は分からんでもない。


 本来ミリナがやっている花嫁衣裳を選ぶ作業は瑠香、俺の元カノの山本瑠香が行うはずだったからだ。


 ミリナに注意されて家では吸っていない電子タバコを吸うために店内に戻り喫煙場所を聞くとさすがに結婚式場のこのビルにはなく提携している隣のビルを紹介してもらったのでそこにお邪魔した。ちょうど一人だったので気が楽だった。


 深く吸い込み肺に送り込んだ後、深く吐いた。まるで重いため息だ。

こんなものをわざわざ吸うために隣のビルまで移動するなんて可笑しいなと思いながら椅子とも言えないただの棒みたいなところに浅く腰掛けた。


 片手に電子タバコを持ちながら空いている手でスマホの操作をする。

みんな休日なのに返信が早い。後輩は早くて当たり前だが。

そして、何も考えずに他部署の瑠香の名前を探す。

瑠香の部署は休日出勤があるほど忙しい場所ではない。俺自身瑠香と同じプロジェクトを組んだことはない。少しでも絡みがあると会いやすいんだけどな。


 瑠香との出会いは、少し大き目のプロジェクトが無事に終わった時に合同のお疲れ会をした時だった。彼女の第一印象は特に美人でもない普通の女性だった。

ただ、彼女の性格のせいかふんわりとした雰囲気で周囲は楽しそうに飲んでいた。


俺は無意識に瑠香を見ていたのだろうか、隣で飲んでいた同僚が「見る目あるじゃん」と言いながら瑠香の事を色々と教えてくれた。どうやら見た目通りでおっとりしているからか一部の男性社員から好意的に見られていたらしい。


教えてくれたその同僚も瑠香を狙っているらしい。

「やっぱ、家庭をもつなら山本さんみたいなタイプがいいよな。こう、癒されそうじゃん?」


と言いながらビールを飲んだあと、「しらんけど」と言っていた。

「そんなもんなのかね」と俺もビールをぐっと飲んだ。大きな仕事終わりはいつもより美味しいと感じる。

「まあまあ、女性に困っていない佐伯には関係のない世界だよ。っていうかもう一度違う世界へ飛んでしまえ!」


「おいおい、俺はそんなにもてないよ。困ったこともないけど」


と八つ当たりをする同僚を返り討ちにした。ざまあ。


「翼君のばぁかぁ~」と言いながら同僚は別の席へと逃げていった。


一人になった俺はそのまま瑠香を観察していた。

瑠香の隣には、さわやかイケメンと呼ばれている奴がスッと隣に座っていた。

そして、一生懸命話しかけている。瑠香は普通に返事をしているみたいだ。何か共通の趣味が見つかったのか急に表情を輝かせながらそのさわやかイケメンの方を向いて話始める。

さわやかイケメンも何度も頷いていた。


「あ~、それ、俺も知ってますよ。今度映画化されますよね?」


俺は気が付けば瑠香とさわやかイケメンが座る対面に座って二人の会話に入り込んでいた。

すると、隣にいたさわやかイケメンが先輩っぽい奴に呼ばれこの場を離れなければいけなくなったらしい、瑠香の隣からの移動が嫌らしく言い訳をしようとしているから



「あ~、あのリーダーは今行っておいた方がいいですよ。面倒になりますよ」


()()()()()()()()してあげた。

さわやかイケメンは俺を一瞬睨んだ後


「同じ部署だし今度ゆっくり話そうよ」といいながらイケメンは瑠香と連絡先を交換してから俺に軽く会釈しながら「失礼します」と言ってその場を離れた。俺の方が先輩って知っていたみたいだ。

俺は、さわやかイケメンの背中を見送りながらお前に次なんてねぇ~よ。と心の中で毒づいた。


「初めましてかな?俺は今回の合同プロジェクトに参加したもう一つの部署の佐伯翼です。君は?」


「あっ、はい。私は後方支援の山本瑠香です。よろしくおねがいします」


癖なのか一瞬立ち上がろうとしたが低いテーブルに太ももを打ち付けたらしく低い声で「うっ」と唸っていた。面白い子だな瑠香ちゃん。


 俺は、今繋がっている子達(彼女達)距離を置く(別れる)段取りを考えながらその日は瑠香とたくさん話した。


 あっと言う間に俺と瑠香は恋人関係になった。

もちろん俺は身辺整理を綺麗にしてから瑠香に告白した。

家庭を持つのに余計な物は要らないしなと無意識にその時から考えていた。


  「そっか…。俺はもう初めから瑠香とそういう想定をしていたんだな」


俺は思わず独り言を声に出したので慌てて喫煙所を見渡したが誰もいなかった。

良かった。少し焦った。


 結婚自体はいつかできればいいなぐらいの感覚だった。別にできなくてもいいなとも思っていた。

瑠香は、美人ではないがいつも傍にいるのが当たり前になっていた。

俺の少し下ぐらいの位置から色々話してくれる。きちんと聞いている時もあれば聞き流している時もあった。この恋は激しくは無かったが今思えば満たされている感じだった。


 そろそろプロポーズでもしようかと考えていた時に、例のモテない同僚から新しく入った新人たちが一緒に飲みたいと言っているから俺も付き合えと言われ仕方なく同席することにした。


「今年の新人がさぁ~結構レベル高いんだよね!」


同僚は嬉しそうに今日のメンバーを俺に説明してくれる。俺、一応恋人いるんだが?


「まあまあ、あんまり知られてないみたいだからもう終わるのかと思ってたわ」


確かに、恋人としてはそろそろ潮時だとは思っている。がこんなスピーカーな同僚に言えるわけもなく。聞き流していた。


 始めは普通の飲み会だった。しかし、飲み進めていくうちに少し悪酔いしたらしくトイレに行って一息ついて会場に戻ろうとした時に


「佐伯先輩ですよね?」


と似たようなタイミングでトイレから出てきた女性がいた。


「私、二年目なんですが同じ課の新人ちゃんにどうしても一緒に来て欲しいって言われてきちゃったんです」


と少しモジモジしながら話しかけてきた。


「ああ、そうなの?じゃあ、その新人を大切にしてあげてね」


と言った後戻ろうと背中を向けたが手首をギュッと掴まれ立ち止まることになった。


「どうしたの?気分悪いなら誰か女性を…。」呼ぼうか?と最後まで言えなかった。

その女にキスをされていたからだ。


「ごめんなさい。ちょっと口寂しくて」

と上目遣いで俺を見つめてきた。俺も昔の悪いクセが出て


「それはいけないな」と言いながらこちらからキスを返した。


そして、そのまま同僚に適当な言い訳をしながら二人でその飲み会を抜け出した。

大丈夫、瑠香には今日連絡できないと伝えているから、彼女から連絡は来ないはずだ。


    少しぐらいならバレないか…。


瑠香を大切にしつつも、その女性ミリナとも時々遊んだ。

そんな日が続いていたが


「ねぇ、翼。私できちゃったみたいなの」


2人の時間を過ごした後、俺は服を着てその部屋を出るタイミングで電子タバコを吸おうとした時にふいに言われた。


「今日、産婦人科に行って確認もしたの…。」


「そっか…。」


 ミリナは嬉しそうに俺に抱きつきながら見上げて言った。


「だから、早く()()()()()()()()()()。私、心広いから許してあげる」


その時のミリナを見ていた俺は一体どんな表情をしていたのか、それを知っているのはミリナだけだろうな。


俺は、瑠香と距離を取る段取りを無意識にし始めていた。



 同僚の言っていた通り俺と瑠香が付き合っていることを知っている社員は多くはなかった。だから、ミリナと授かり婚を上司に伝えた時は「奥さんを大切にするように」とだけ伝えられた。もちろん、瑠香の事を知っている一部の社員からは冷たい視線をもらったが俺はそれを受け止めることしかできなかった。


 同僚たちが独身最後の飲み会を開催してくれた。例のアイツも来ていた。


「瑠香ちゃん、良かったのか?」

二人になったタイミングで言われたが俺に何と答えろというのだろうか。

何も答えずに残っていたビールを一気に飲んだ。


翌日、用事があり久しぶりに瑠香のいる部署に立ち寄ると無意識に瑠香を探している自分がいた。


ディスプレイを真剣に見つめる瑠香に見とれているとトンッと後ろから軽く何かにぶつかった。


「すみません...。...。」


さわやかイケメンが書類を確認しながらの前方不注意で俺にぶつかったようだった。


「...。ああ、大丈夫だ」

俺はぶつかった事に対して答えたつもりだったが。


「...。アンタが大丈夫でも...。」

さわやかイケメンがふと瑠香の方を見た後、俺を睨むと


「この部署にアンタが歓迎されると思うなよ」


と言いながら、俺の前を去っていった。

そして、瑠香の所に行くとさっき読んでいた書類を渡しながら何か所か指でさしながら何かを話し合っていた。瑠香が何かに答えようとする時にさわやかイケメンがぐっと距離を詰め、瑠香の頬とさわやかイケメンの頬が触れそうだった。


 俺は自分の事を差し置いて胸の中がどす黒くなる思いだった。

すると、さわやかイケメンがこちらを見てニヤっと笑った後、瑠香の前髪にそっと触れた。


 俺は無意識にそちらに行こうとした時


「佐伯君、お待たせしたね。こちらの会議室で打ち合わせをしようか」と小林チーフがフロア全体に聞こえるように俺に話しかけた。


その声をきっかけに一斉にそのフロアの社員がこちらを見た。もちろん瑠香も。

このフロアは比較的俺と瑠香の事を知っている社員が多い。大人の態度として何もならないが一瞬場が凍り付いた。


「ふむ。いい緊張感だね。作業効率を落とさないように」と小林チーフは声を掛けた後、二人でその場を移動した。

その時、さわやかイケメンが瑠香の肩にそっと手を添えて耳元で何かを言っているのを見てしまった。瑠香は耳元を赤くしながら首を振っていた...ところまでしか見れなかった。


二人で小さなスペースに腰を掛けると俺は思わず小さく溜息を着きながら


「こんなはずじゃなかったのに...。」


と呟くと。


「それ、君が言っちゃうの?」と小林チーフに言われた。


「すみません」


俺の謝罪には何も反応せずにそのまま打ち合わせが始まった...。







 俺はそろそろミリナのいるところに戻らなければと思い喫煙所を離れた。

喫煙所に対する嫌味なのか、小型家電回収ボックス(電子タバコ可)と書かれていた。

手に持っている電子タバコを見つめた後、それをそっとその回収ボックスに入れた。


少しだけ軽くなった気持ちでミリナの場所に戻った。


 佐伯はきっとすぐに電子タバコを再度購入するでしょう。


【補足】

 20 歳未満の者の喫煙は禁じられています。


最後までお読みいただきありがとうございました。

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