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君に百合の花束を!  作者: 鈴木 澪人
見つけた編

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清水 すずな

基本的に題名の人の視点となっております。

 すずなは仕事で使用したハサミの手入れを終えるとタイムカードを押して店を出た。

オーナーに「お疲れ様!」と声を掛けられたので「お疲れさまでした」と返事をした。


職場からあまり遠くない場所にあるマンションに戻ると、鍵を玄関に置きすぐにシャワーを浴びた。

お腹は空いているけど今日は何となくさきに汗を流したかった。


シャワーを浴びながら手首のタトゥーに視線をやる。思い付きで彫ったが案外気に入っていた。

シャワーを終えると髪を軽く整えてキッチンに向かう。

残っていたチューハイを開けながら冷蔵庫の残り物を確認するが面倒なのでレトルトのパスタを温めた。


アチチとひとり呟きながらテレビのある部屋に夕食を持っていきお気に入りのクッションを置くとソファーではなくフロアに腰を下ろした。

サブスクのドラマを見ようと思い探すがいまいち見たい気分のドラマがないので古い海外のドラマを見ることにした。


 すずなは意外と一昔前の海外ドラマが好きだった。主婦たちが集まるものや医療ドラマや弁護士ドラマなども好んで見た。


今の日本のドラマはなんというかドロドロしているものが多いような気がした。見ている方は楽しいとは思うけど、どうしても感情移入しやすりすずなは気持ちが辛くなることがあった。

いやいや、気分転換に見たいのにテンション下げてどうするよ!と心の中でツッコんだことが何回かある。


 海外ドラマは1シーズンが長いのでキリのいいところで見るのを辞めた。

後は、歯を磨いてベッドの中で動画でもみようかな、明日も仕事だしな。

と食べた食器と飲み切ったチューハイの缶を洗って歯も磨いた。


 ベッドに入って気になる人の動画やショートをチェックした。

すずなはコスメ系の動画を好んで見ていた。気になった物はついつい買ってしまったりする。


 ショート動画を次から次へとスワイプしていくと見たことのあるVtuberのショートに当たった。



『今日は、皆に謝らないといけない事があるんだ…。実はね…。』

のところでショートは途切れ詳しくは本編で!と書かれていた。

すずなは少しイラっとしながらついついその動画の本編へ飛んでしまう。


 その動画のVtuberは少し悲しそうな?(実際はイラスト風なので細かい表情までは表現できていない)雰囲気を醸し出しながら


『前回のライブ配信で 『野郎の恋愛はちょっと遠慮したいかな』って発言、あんまり良くなかったかなって思って…。すっごく反省したんだ。女の子も男の子も恋愛って大事だよねっ!そ』


すずなはあまりに内容のない動画に呆れながら最後まで見ずに閉じた。

そして、どっと疲れた…。あのVtuberを見るとこの前の瑠香とのやり取りを思い出す。


「はぁ~」

声に出るぐらいの溜息をつきながら腕で自分の目元を隠した。


あの日は少し強引に瑠香に気持ちを伝えたが、このVtuberのせいでうやむやになってしまった。でも、自分の事を意識してくれるようになったとは思った。


全く何事もなかったように…。とはいかなかったが、瑠香のおっとりとした性格に救われた。


 すずなの瑠香への片思い歴は意外と長い。

同じ高校に入学した二人だったが始めは全然接点がなかった。

すずなはどちらかというと一人でいたいタイプだったのでスマホで気に入ったファッション雑誌をぼーっと見ていたりした。


瑠香は友達とワイワイするのが好きなタイプだったみたいだ。すずなから見るとあんなにいつも誰かが近くにいるとしんどくないのかな?人間関係が面倒そうと思いながら時々眺めているぐらいだ。


 すずなはたまに隣になった席の子と軽く会話はする。でも、自分と話すとたいてい顔を赤くしたり、頷いてくれるが返事をしてくれなかったりした。


なんでかな~。と疑問に思ったのでバイト先の先輩に尋ねてみると、その先輩が笑いながら言った。


「えっすず分かんないの?すずってめっちゃ美人なんだよ?」


すずなは持っていた皿を落としそうになった。こっちこそえっ?なにそれ状態だ。

そんなことないッスけどね~。と言葉を濁しながら皿を元に戻していくと、そのままホールの手伝いに向かう。


「ほんと無自覚なんだな…。」

その先輩は料理をさばきながら呟いた。


そのバイトの帰りにさっきの先輩と同じ時間に上がったので二人で最寄り駅まで歩いて帰っていると


「さっきの話の続きなんだけどさ、すずが良かったら俺と付き合ってくんね?」


すずなは突然の告白に驚く。そして、先輩を見ると表情は普段と変わらないように装っているが耳が真っ赤になっていた。それを見つけたすずは思わず「コイツかわいいな」と思い勢いで


「いいですよ。私、先輩嫌いじゃないし」


と答えると先輩は「えっ」「えっ?マジ」っと言った後


「ウッシ!やった~。マジ嬉しい!!」

と言いながらすずなの両手をぎゅっと握った。


その時、すずなはゾクッと感じた。不快感ではないが、なんというか違和感?

でも、先輩の喜び方が半端なかったので一緒に笑ってしまった。


 どうやら先輩は近くの高校に通っているようだった。

意外とバイト先の人の事って知らないんだなと思いながらスマホで今日もすずなの事を好き好きと送ってくる先輩を思い出した。


でも、学校であまり浮かれているのもどうかと思いいつもチェックしている雑誌に好きなブランドの特集があったので今月号は紙媒体を購入していた。

それを休み時間にパラパラとめくっていると


「あっ、清水さん、それ今月号の○○ですよね?少しだけ見させてもらってもいい?」


「えっと…。」

すずなが名前を思い出せなくて困っていると


「あっ、私は山本瑠香だよ。一応同じクラスかな?」


すずなはいつもの癖で瑠香をチェックする。

すごく賑やかなグループにいるのにシックにまとめているんだなと思っていると


「その…。今月号に私がファンのバンドの特集があったんだけどどこも売り切れで…。ネットで買おうか悩んでいるんだけどプレミア価格がついちゃって」

とすずなが返事をしないので瑠香が一生懸命その雑誌を見たい理由を説明していた。


「あ、ごめん。いいよ。私もうこの雑誌みたから、えっと山本さんにあげるよ?」


「ギャ~。そんな神みたいなこと言っちゃうんだ!じゃあ、定価で購入させてください

!神様ぁ~」


瑠香は女子高校生特有のテンションの高さで喜びを表現していた。

瑠香の後ろで仲良しのグループが「良かったじゃん。清水さんって優しいんだね~」「美人で性格いいってもう、神じゃない?」と同じように誉めていた。


すずなは恥ずかしくなって

「イヤ、ホントウニ、ダイジョウブ、ですから」


そっと、瑠香にその雑誌を押し付けようとグイグイと瑠香にめり込ませた。

瑠香はそれを大切そうに胸の所でギュッと抱きしめると自分の席に雑誌を置いた後


「ありがとうね~。清水さぁ~ん」と急に抱きしめた。


周囲にいた男子がざわついた。「羨ましいぁ~」「俺もどさくさにまぎれて…。」

「おい!捕まるぞ!」とクラス中がガヤガヤと楽しい雰囲気になった。


すると、休憩の終了のベルがなっていたのか担任が教室に入ってきた。


「お~い。山本達席に戻れ~。ってどうしたんだ?なんか教室の雰囲気が変じゃないか?」


担任が笑いながら教卓の前に着くと


「先生!清水さんが神様だってことが発覚しました!」

瑠香が楽しそうに報告すると、教室に爆笑が起こった。


「そっか~。でも、このままだと隣のクラスの担任が山本に向かって説教があるかも知れないから気を付けろよ~」


隣のクラスの担任はどうやら瑠香の顧問らしい


「げっ、赤ティーうるさいからいやだ!」


瑠香の発言にすずなはギョッとしたが


「山本、赤城先生だ!きちんと呼びなさいっ」

と担任が苦笑いをしながら注意をした。


「はぁ〜。赤ティーに怒られないように気を付けます」


その日の放課後、帰宅部のすずなが学校の正門を出ようとした時、泣き言を言いながら校庭を走っている瑠香を見つけた。


「山本さん、どうしたの?」


すずなは半泣きになっている瑠香に思わず声をかけると


「あの担任、赤ティーにチクったぁ〜。私だけ別メニューだって…。ヒィ〜。まだ残り五週残ってるぅ~。」


「そっそっか、なんかがんばってね。山本さん」


瑠香はハァハァと息を切らせながら


「私、瑠香だから瑠香って呼んで。私もすずちゃんって呼ぶから」


「じゃあ、残りを若さと気合で走ってくる!じゃあね。また明日~」


と瑠香は叫びながら再び周回を始めた。


「山本ぉ〜。おしゃべりできる余裕あるんだなぁ〜。筋トレ追加しとくかぁ~」


その声の方を見ると職員室の窓から叫んでいる隣のクラスの担任と横にいて苦笑いをしている自分達の担任が立っていた。


「もう駄目です!これ弱い者いじめかもしれないです!」


瑠香も必死に返事をしていた。


そんな二人のやり取りをすずなは見ながらクスリと笑った後学校を出た。


 

 今日の出来事をバイトの帰りに彼氏になった先輩に話していると


「その子って一体何部に入っているんだ?」


と普通に聞いてきたので「知らないかも…。」

と答えると


「そういうところ、なんかすずなっぽくていいな」


と言いながら抱きしめられた。

きっと先輩はドキドキしていると思う。聞こえてこないけど。


でも、すずなはドキドキしなかった。ドキドキしなかった事にドキドキする。


どうしてだろう。先輩に抱きしめられている今より、あの子にギュッとされたときの方が心が揺れてしまった。


どうしてだろう…。



最後までお読みいただきありがとうございました。

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