レトルト温めれば立派な料理
※本作は、『俺たちは、壊れた世界の余白を埋めている。』の非公式短編集です。
本編において非BLで描かれている、鷹宮ルカと芹原ナオの関係性を、“感情の供養”という形で綴っています。
恋愛描写はありませんが、衝突・依存・距離の歪みなど、人によっては特別な温度に感じられる場合があります。
ご理解のうえ、解釈は各自にお任せいたします。
「なぁ、ナオ。今日、晩メシなに?」
「知らん。自分で考えろ」
「えー……昨日俺が作ったじゃん」
「レトルト温めただけだろ」
「…うわ辛辣。今日の俺、めちゃくちゃ繊細なんだけど。慰めてもらえる可能性とか、ねぇの?」
「あると思ったのか?」
「膝枕で寝たい……」
「しんどいなら寝室行け」
「人肌、ってとこが大事なんだけどなぁ」
ルカは床にごろんと寝転んで、ナオの足に頭を預ける。
ナオはため息をひとつだけついて、無言で足をずらさない。
その代わりに、軽くルカの額をトンと指先で叩いた。
「……なにそれ、ツンデレ?」
「うるさい。寝ろ」
「分かったよ……ナオ、ありがとな」
「聞こえない」
「じゃあもう一回言う、ナオ、──」
「寝ろ」
寝たふりをするルカの呼吸が、ふっと静かになって、
ナオはそのまま足を動かさなかった。