襲い来る脅威!
ファランクスは止まらず、次々と荷電粒子砲を放つ。
ドゥン! ドゥン!
二発目、三発目がザラタンの頭部と側面を直撃。
レールガンが破壊され、機銃が火花を散らしながら沈黙する。
ブリッジのモニターに亀裂が走り、指揮官は蒼白になりながら叫んだ。
「全機、撤退! 撤――」
その言葉を最後まで発する前に、青い光の奔流がザラタンのリアクターを貫く。
───ズドォオン!
凄まじい爆発が砂漠を揺らし、機動要塞の巨体は炎と黒煙に包まれた。
轟音とともに、残骸が砂の上に崩れ落ちる。
戦場に静寂が訪れ、ファランクスたちは、白い装甲を陽光に輝かせながら佇む。
「これほど、か……」
マティアスは、コマンドロボの映像を通じてザラタンの轟沈を捉えていた。
モニターに映るファランクスの姿に、鈍色の視線が一層鋭くなる。
『隊長、機動要塞が……一瞬でやられちまった! 勝ち目あるのか!?』
『今ならまだ逃げられるかも! ファランクスがこっちに来る前に!』
だが、マティアスは首を振る。
『逃げても追いつかれる。敵は既にこちらを認識している。戦うしかない』
『……了解。隊長の言う通りだ。俺たちはプラズマリアクターを守るためにいる。やるしかねぇ!』
マティアスはスナイパーライフルを構え、ファランクスの動きを分析する。
ザラタンとの戦闘で消耗や負傷は……していないようだ。
ストラウスのセンサーが計測する数値は、その性能がイノセントを上回ることを告げていた。
だが───とりつく隙が無いわけではない!
『敵の荷電粒子砲は高出力だが、連射性能は高くない。シールドの展開にもタイムラグがある。全機、敵の動きを牽制しつつ、私の狙撃で一機ずつ仕留める。準備しろ』
『『『了解!』』』
イノセント三機がE粒子ライフルを構え、輸送車両を中心に陣形を整える。
砂漠の陽光が蒼と白の装甲を照らし、戦場の緊張が再び高まる。
と、ファランクスがゆっくりとこちらを向くと、白い装甲が不気味に輝いた。
『戦闘開始だ。敵の動きを読み切れ』
砂漠の陽炎が揺らめく中、マティアスの愛機、『ストラウス・ザ・ホークアイ』は岩陰に潜み、ファランクス三機の動きを冷徹に捉えていた。
その隣、岩山の陰では、輸送車両と三機の『イノセント』が陣形を整え、蒼と白の装甲が陽光に輝いている。
対峙するのは
遠くではザラタンの残骸が黒煙を上げ、戦場の空気は熱と緊張で張り詰めていた。
マティアスは通信を開き、冷静な声で作戦を伝える。
『イノセント各機は、シールドにE粒子を重点的に回し、防衛を優先しろ。輸送車両を死守しつつ、敵を引きつける。私はストラウスで狙撃を担当する。敵のシールド展開の隙を突く』
イノセントのパイロットたちは小さく頷く。
『了解。だがよ、あの火力だと、長くはもたねぇぞ』
『明らかに火力高いッスからねぇ。なんスかアレ、ウチにも欲しいッスよ!』
『隊長はベテランです。勝てるというなら、信じましょう』
マティアスは目を凝らし、ストラウスのライフルを構える。
高威力のE粒子スナイパーライフルといえど、さすがにファランクスのシールドは突破できまい。
狙うは、シールドの隙間……!
ファランクスの白い装甲が砂塵の彼方で輝き、徐々にこちらへ接近してきていた。
危機が迫る。
そんな中、マティアスの頭脳は戦況を分析しながら、敵の正体を推理する。
あのファランクスは何者だ? 荷電粒子砲を撃っている以上、プラズマリアクターを搭載している可能性がある。
だが、護衛なしで三機のみの行動は不自然だ。プラズマリアクター搭載なら、もっと大規模な部隊を編成するはず。
では、ノヴァがプラズマリアクターの製造コストを劇的に下げたのか? それも考えにくい。
コストが下がれば、三機と言わず、十機、二十機と投入してくるだろう。
となると、ファランクスは粒子タンクで動く護衛部隊。
おそらく、どこかにイノセント・オリジンが潜んでいる。
そこから粒子供給を受けており、オリジンへの脅威を排除するために送り込まれたのだ。
「……」
マティアスの視線が鋭さを増す。
敵の供給源を特定できれば、戦況を覆せる。
だが、今は目の前のファランクスを相手にするしかない。
ストラウスのセンサーが敵の熱量と粒子放出を計測し、狙撃のタイミングを計算する。
『敵接近。───来るぞ!』
その瞬間、ファランクス三機が一斉に加速し、砂塵を蹴り上げながら突進してきた。
巨大な砲口が向けられ、荷電粒子砲が青白い光を放つ。
キュオオーン……ドゥン!
光の濁流がイノセントのシールドに直撃! 衝撃波が機体を揺らす。
『ぐうッ!? すげぇ火力!』
『E粒子全部回してもシールドが砕開けそうだ!』
イノセント三機はシールドを構え、輸送車両を囲むように防御陣形を維持。
E粒子タンクから供給される粒子でシールドを強化し、ファランクスの猛攻を辛うじて凌ぐ。
ケイン機がE粒子ライフルで反撃。だが、ファランクスのシールドは粒子弾を軽々と弾き返す。
『ちっ、ライフルが効かねぇ! シールド固すぎるぞ!』
『隊長、早く! このままじゃシールドが持たない!』
ミラが歯噛みしながらライフルを連射。
マティアスはスナイパーライフルを構え、ファランクスの動きを追う。
敵のシールド展開には一瞬のタイムラグがある。そこを狙えば、貫ける。
だが、ファランクスの連携は隙が少なく、最新鋭の機体性能はイノセントを圧倒していた。
『各機、牽制射撃を続けろ。敵の動きを制限する。敵も万能ではない、いずれ隙を見せるはずだ』
ドゥン!
ストラウスの粒子弾が放たれ、ファランクスのシールドを掠めた。
だが、敵は即座にシールドを再展開。反撃の荷電粒子砲を放つ。
ズドォオン!
ガルド機はシールドで受けるが、衝撃がすごい。イノセントは大きく後退する。
『ぐっ、衝撃が強すぎる!』
『こっちの粒子残量、少ないです!」
ファランクスは容赦なく攻撃を続け、荷電粒子砲の青白い光が降り注ぐ。
イノセントはシールドで耐えつつ、E粒子ライフルで反撃するが……火力の差は歴然。
なれば───
マティアスはモニターを凝視し、ファランクスを分析していた。
と、巨大なバックパックに視線が固定される。
武器でも推進機関でもなく、異様に大きな構造───おそらく、大型の粒子タンク!
鹵獲したイノセント・オリジンから粒子供給を受け、荷電粒子砲を運用可能なファランクス。
その火力と防御力を維持するには大量のE粒子が必要。
おそらく、背中のタンクに粒子を貯蔵しているのだ!
「……つまり、そこが急所だ」
ストラウスはスナイパーライフルを構え、ファランクスに合わせてかすかに頭を動かす。
狙うはシールド展開後の再チャージの瞬間。
イノセント三機がE粒子ライフルで牽制射撃を続け、敵の注意を分散させる。
『隊長、シールドが限界だ! 早くぶち抜いてくれ!』
ドゴォオン!
ファランクスの荷電粒子砲がイノセントのシールドに直撃。
衝撃波が機体を揺らし、ケインが歯噛みする。
『くそっ、火力が違いすぎる! シールド、粒子残量20%!』
マティアスは冷静に照準を合わせ、ファランクス一機のシールドが揺らいだ瞬間を捉える。
圧縮粒子が臨界点になった瞬間、その指がトリガーを引いた。
ズドォオン!
青白い光の矢が砂漠を貫き、ファランクス一機の左腕を正確に撃ち抜く。
直撃! 装甲が砕け、火花が散る。
だが、ファランクスは即座に反撃。
残る二機が荷電粒子砲を一斉に放ち、青白い奔流がイノセントを襲う。
ドゥン!
光がミラのイノセントに直撃。
ミラ機の右半身が肩からちぎれ飛び、胴の装甲が溶け崩れる。
イノセントは耐えきれずに膝をついた。
『右腕、破損! 動けません!』
『お、おい、ミラ、大丈夫か!?』
直後、ケインのイノセントに荷電粒子砲が命中!
咄嗟に輸送車両を庇ったケイン機の左足が吹き飛び、機体が大きく傾く。
通信越しに叫び声が響いてきた。
『隊長、これ以上は無理っす! 車両がやられる!』
『ちくしょう、強すぎる! どうする隊長!?』
『そうだな───』
マティアスは瞬時に判断を下す。
防戦では勝機はない。ならば、敵の懐に飛び込み、接近戦で仕留めるべし!
スナイパーライフルとシールドを構え、ストラウスを一気に前進させる。
『全機、車両を死守しろ。敵を仕留めてくる』




